1950年代と21世紀に入ってから道内でロケされた代表的な作品3本の特集上映が8月22日、シアターキノ(中央区南3西6)で始まりました。初日の22日は上映作品「許されざる者」(2013年)の李相日(リ・サンイル)監督のトークも行われました。上映作品と日程は記事末尾に。
「許されざる者」はクリント・イーストウッド監督・主演の同名作品のリメイクで、明治初めの北海道が舞台です。新政府軍の追手から逃れてひっそり暮らす凄腕の男(渡辺謙)が昔の仲間(柄本明)に誘われて賞金稼ぎの旅に出るものの、権力を振りかざす警察署長(佐藤浩市)に仲間を殺され…というドラマです。大雪山系をバックにした上川町に大きなオープンセットがつくられたのをはじめ、根室や知床、阿寒でも3か月にわたって撮影されました。
トークで李監督は、ロケハンについて「手塚治虫さんの『シュマリ』や池澤夏樹さんの『静かな大地』の影響があって、写真や映像よりも漫画や文字でイメージしたものを探した」と話し、聞き手の中島洋・シアターキノ代表が、それぞれのワンショットの力強さの理由を尋ねると、「特に時代劇は、人物、衣装、小道具すべてゼロから作り上げるもの。この映画でもアイヌのマキリは彫り物の名人に作ってもらった。映るもの、映る人にかける労力がたくさんあって、それが画面に映り込んでいるのでは」と話してくれました。
中島洋さんの質問に答える李相日監督(左)
上映には、開拓地の娼妓を演じた、山本菜穂さんら札幌の女優さんたちも駆けつけ、トーク終了後には監督と旧交を温めました。娼妓のうち小池栄子さん、忽那汐里さん以外の4人は札幌でのオーディションで選んだということです。李監督は「地方で活動している俳優さんも東京に出ると東京の顔になってしまう。地元の空気を吸って地元の空気をまとった人がほしかった」と理由を話してくれました。久しぶりに北海道を訪れた李監督は「(ロケ地の)知床や阿寒にも行きたいけれど、今の(コロナ禍の)状況では難しいですね」とちょっと残念そうでした。
李相日監督と話す、「許されざる者」出演者のおふたり
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北海道ロケ作品の上映作品と日程は以下のとおり。問い合わせはシアターキノ(011・231・9355)へ。ホームページは、
https://www.theaterkino.net/?news=news-5718
「許されざる者」(李相日監督、2013年)=8月22日〜27日
「白痴」(黒澤明監督、1951年)=8月29日〜31日
「喜びも悲しみも幾年月」(木下恵介監督、1957年)=9月1日〜3日