7/13、札幌・シアターキノで行われた
函館ロケ「オーバー・フェンス」の先行上映会。

山下敦弘監督の舞台挨拶レポートをお届けします。
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中島洋・シアターキノ代表(以下、中島):今回、山下監督に(佐藤泰志の原作)函館三部作目を引き受けていただいて嬉しいです。その経緯は。
山下敦弘監督(以下、監督):「海炭市叙景」(※佐藤泰志の原作函館三部作の第1弾)からのプロデューサー・星野秀樹さんから、「三部作の最終章を作りたい。ぜひ山下さんに」とお話をいただきました。僕としては、(「海炭市叙景」監督)熊切和嘉さんは(大阪芸術大学の)先輩で、(第2弾「そこのみにて光輝く」監督)呉美保さんは同期。なおかつ、評価の高い2作品だったので、相当プレッシャーを感じながら引き受けました。

中島:3部作ともに素晴らしい出来ですが、どれも(原作者)佐藤さんの影が色んな形で出ている気がします。原作(「オーバー・フェンス」)を読んでいかがでしたか。
監督:「海炭市叙景」と「そこのみ~」を観てから読みました。映画では、悲しくて、何か重くて、けれどどこかロマンチスト・・・という印象があったんですが、この「オーバー・フェンス」は逆に〝光〟があるというか前向きというか、勢いのある作品で、2作品のイメージとは違う印象を受けました。
中島:そのあたりも楽しみですね。キャスティングはどのように。

監督:プロデューサーの星野さんたちと決めていきました。普段なら豪華すぎるんじゃないか・・・という気がしたし、自分も初めてで「どうなんだろう」と思ったけれど、結果的に生かされたと思います。
中島:映画の世界にマッチングしていました。監督は初期から地方ロケが比較的多いですが、地方ロケのこだわりは。
監督:入口としては、僕が愛知県出身で、中途半端な地方都市で生活していたという視点があると思います。でも、プロとしてやっていく中で、「映画に没頭できる」ことが挙げられます。東京を出て、スタッフやキャストが全員、同じ空気を吸うので、すごく集中できる。この前、大阪で「美園ユニバース」(2015年)という映画を作ったんですが、その時も大阪に泊まったテンションで撮りました。街から影響を受けることも多いですね。そういえば、「リアリズムの宿」(2003年)なんか、ロケ地・鳥取の空気にやられちゃった、呑み込まれた映画でした。

中島:その意味では、今回の函館ロケはいかがでしたか。
監督:率直な印象でいうと、函館という街は、「品」があり、なおかつ「悲しさ」があって、「歴史」も感じる。意識的に函館を切り取ろうとはしていませんが、そういうものが映り込んだ気がします。撮影の近藤龍人くんも「海炭市叙景」から関わっていますが、僕の印象では今回、「今の函館」をフラットに撮ったという気がします。
中島:今後北海道で撮りたいというお気持ちは。

監督:もちろん撮りたいです。季節によって見え方も変わると思うので、また機会があれば。何と言っても、北海道の良さは、完全に東京や自分の生活と切り離して映画を作れる土地であるということ。今回のロケでそれをすごく感じました。
中島:ありがとうございます。(観客に向かって)監督は地方の撮り方が見事な方なので、これを機会にこれまでの作品も観直していただければと思います。監督のこれからの作品にも期待したいですが、まずは「オーバー・フェンス」ですね(笑)。9/17(土)から公開です! 函館の皆さんも含めて、メッセージを一言。

監督:メッセージやテーマは今言うのも野暮なので、映画を観た皆さんが感じてもらえれば。笑えたり、怖かったり、衝撃作など色々な映画がある中で、監督としては「いい映画」ができたと思います。図々しいようですが(笑)、ぜひ楽しんでほしいです。
中島:ありがとうございました。

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いかがでしたか? 公開が待ち遠しいですね!
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