日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞、主演男優賞に小樽ロケ「きみはいい子」の高良健吾さん

年末が迫り、今年一年を締めくくる

各映画賞が発表となっています。

第28回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞では、

高良健吾さんが初の主演男優賞に。

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小樽ロケ「きみはいい子」と「悼む人」の2作品で、

抑えた中にも感情が伝わる演技力を発揮したことが評価されました。

「きみはいい子」は、ミュージアムもちょっぴり協力した作品。

なおさら、嬉しいですね。おめでとうございます!

また、遠別出身の映画評論家、故・品田雄吉さんには

特別功労賞が贈られることが、満場一致で決定。

実兄の映画コレクションを収蔵するミュージアムの、

名誉顧問を務めてくださった品田さん。

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今頃は、天国で大好きな映画を楽しんでおられるでしょうか。

ありがとうございました。

「映画撮影」最新号に品田雄吉さんの追悼文が掲載されました。前号では「愛を積むひと」の撮影報告も

5月15日発行の季刊「映画撮影」205号に、北の映像ミュージアムにも多大なお力添えをいただき、昨年亡くなられた映画評論家、品田雄吉さん(留萌管内遠別町出身)の追悼文が掲載されました。

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筆者は映画評論家仲間の佐藤忠男さん。ほぼ同年生まれという佐藤さんと品田さんは、1950年代初めに競って「キネマ旬報」の読者投稿欄に投稿するライバルだったそうです。品田さんは「キネマ旬報」、佐藤さんは「映画評論」編集部に入って若手評論家同士として交際が始まった、と振り返っています。

追悼文で佐藤さんは「品田さんは人柄も温厚だが、作品の評価でも実に公正だった。作品の客観的な評価と位置づけという点では、彼の評価が一番頼りになった。キネマ旬報同人の流れをくむ映画批評の正統として、絶対に必要な存在」と書いています。その上で「だれもが納得できるような意見を言うこと。これが実は難しい。そんなことは私にはできない。しかし彼はやった。そして本当に権威になった」と結んでいます。多くの映画評論家たちの座標軸でありつづけた品田さんの存在の大きさをあらためて感じさせられます。

この「映画撮影」は日本映画撮影監督協会(JSC)の機関誌で、各カメラマンによるさまざまな作品の撮影報告などが掲載されていて、大変興味深い内容が詰まっています。2月15日発行の204号では、昨年、上川管内美瑛町でロケが行われ、6月20日に公開予定の「愛を積むひと」(朝原雄三監督)について、上野彰吾カメラマンが撮影報告を寄せています。この号の表紙は「愛を積むひと」の撮影風景です。

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上野カメラマンは篠原哲雄監督や橋口亮輔監督の作品などを多く手がけてきたベテランです。道内ロケ作品だけでも「オー・ド・ヴィ」(篠原監督、2003年、函館)、「星に願いを。」(冨樫森監督、2003年、函館)、「天国の本屋~恋火」(篠原監督、2004年、小樽など)、「ミラーを拭く男」(梶田征則監督、2004年、室蘭など)、「ぐるりのこと」(橋口監督、2008年、ワンシーンだけ札幌)、「つむじ風食堂の夜」(篠原監督、2009年、函館)、「スノーフレーク」(谷口正晃監督、2011年、函館)、「スイートハート・チョコレート」(篠原監督、2013年、夕張、札幌)と、おなじみの映画が並んでいます。

報告の中で上野カメラマンは、舞台の小林家として、借りた町有地に70平方メートルの家を建てたことや、石塀の材料に50トンもの石灰岩を愛知県から運んだことなどを紹介しています。順撮りではないため、一度完成させた石塀を場面の時系列に合わせて途中まで戻すという作業も行ったそうです。また、カメラマンの立場からは、長期の地方ロケであることからデジタル撮影を選択したことや、「北海道の大自然の中で人の人生をダイナミックに捉えたかったので画面サイズはシネマスコープを選択した」ことなどを記していて、何気なく見ている画面が、実はさまざまなことを考え抜いてつくられていることを教えてくれます。

さらに、デジタル撮影によって、データのコピーを東京の現像所に送ると中1日くらいでタブレット端末に映像が送信され、仕上がりに近い画質でラッシュを確認することができたと振り返り、「以前のフィルム撮りだと、地方ロケでは地元の映画館を借りて上映してもらうか、16ミリの縮小プリントを旅館のロビーで映写したものである。つくづく進化を感じる」と映画撮影の変化の大きさについて述懐しています。

JSCの機関誌とあって、十勝岳に登る主人公の姿を撮影するのに、メーンカメラ以外に、コンパクトながら大画面に耐えられる画質を備えたカメラで手持ち撮影を行ったことや、主人公の妻が病に倒れるシーンには、蛇腹の操作ピントをぼかすことができるレンズを使い、意識が遠のいていく感覚を映像化したことなどを紹介しています。こうした撮影技法の紹介はカメラマンならではのもので、一般に多い、監督やキャストに対する演出や演技の狙いなどについてのインタビュー取材とはまた異なった映画づくりの面白さ、奥深さが伝わってきます。

ロケは昨年6月から7月まで30日あまりと、紅葉の美しさを狙った10月の10日間、12月に実景撮影と3度にわたって行われたそうです。ソニーのデジタルビデオで4K撮影が行われたとのことで、北海道を知り尽くした上野カメラマンがどんな画面をみせてくれるのか、とても楽しみです。
なお、この号では、公開中の札幌ロケ作品「鏡の中の笑顔たち」の高間賢治カメラマンが、キヤノンのデジタルシネマカメラEOS C100を使った撮影についても短い報告を寄せています。
(理事・加藤敦)