「心に吹く風」の撮影秘話を、高間賢治カメラマンが語りました

美瑛などで撮影されたユン・ソクホ監督の「心に吹く風」が東京でも公開され、1日には、高間賢治撮影監督のトークが新宿武蔵野館で行われました。「心に吹く風」のホームページはこちら

高間撮影監督は、三谷幸喜監督の「ラヂオの時間」「みんなのいえ」、中江裕司監督の「ナビィの恋」「ホテル・ハイビスカス」をはじめ、2008年の日本映画ベスト1(個人の感想です)の金子修介監督「プライド」、増毛ロケの小林政広監督「春との旅」、札幌ロケの喜多一郎監督「鏡の中の笑顔たち」などを手がけたベテランです。

高間撮影監督は「映画のテーマは『偶然』、画面の中で風をどう表現するかがポイントでした」と述べ、撮影中は毎日、ユン・ソクホ監督が風の様子を見ながら撮影スケジュールをどんどん変えていったというエピソードを紹介し、「スケジュールを立てる助監督は大変だったと思うけど、僕らはいい条件で撮影したいので、監督に代わりに言ってもらえてありがたかった」。

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トークショーで「心に吹く風」の撮影秘話を披露する、高間賢治カメラマン

ユン監督の映像へのこだわりぶりも紹介し、一例として、さびたトタンがさまざまな色に変わった倉庫の壁に雨粒が落ちてくる印象的な場面を、「あれはユン監督が自分で撮影した映像があって、それをもとに同様のイメージで作ったもの」と明かしました。また、ユン監督はロケ地周辺をとても詳しく調べていて、「ロケハンに行くと、監督が道順を指示し、僕らが教えられていたくらい」。さらに、出演者の一人とさえ言える米国製のピックアップトラックのフロントガラスの映り込みにも、ユン監督はこだわりを見せ、「ガラスがきれいだと映り込みは出ないので、撮影後の処理でよく出るようにしました」と苦心の一端を紹介してくれました。

美瑛町や富良野市、東神楽町での撮影は3週間ほど行われ、監督やキャストはホテルに泊まり、スタッフは日帰り温泉施設の休憩室を借りて寝泊まりしたそうです。「撮影中は毎日朝からふろに入ってました。やっぱり温泉はいいですね」。

高間撮影監督は「映画の撮影はこうでなければならない、というカメラマンもいるけれど、僕はCMはドキュメンタリーもやってきたし、三谷幸喜さんや椎名誠さんといった異業種の監督との仕事も多いので柔軟に考えることができる方です。今回も監督のイメージした絵が撮れていれば満足です」と話し、職人としての一端を見せてくれました。北海道の美しい風景がとらえられた映画も、こうしたスタッフのすぐれた仕事があればこそ、と言えます。(理事。加藤敦)

6/10北海道先行公開!北海道ロケ「心に吹く風」のユン・ソクホ監督&主演の真田麻垂美さんインタビュー(後編)

6/10(土)に北海道で先行公開される
映画「心に吹く風」(ユン・ソクホ監督)。

(C)松竹ブロードキャスティング

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監督と、主演の真田麻垂美さんへの
インタビューの続きをどうぞ。

* * *

Q.北海道での撮影はいかがでしたか?

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真田麻垂美さん:私も北海道は大好きで、函館や札幌を訪れていました。撮影初日、大雨の東京から飛行機で旭川に着くと、真っ青な空と美しい新緑のグリーン、牧場の牛! 「ここで撮影できるんだ」と、気持ちがワクワクしたのを覚えています。撮影の合間にいただいたアスパラガスやジャガイモがとても美味しくて、幸せな時間でした。

Q.監督は2012年に人気俳優チャン・グンソク出演のドラマ「ラブレイン」で、旭川・富良野・美瑛で撮影されました。その時からこの映画の構想があったのでしょうか。

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監督:いいえ、その時は映画のお話はありませんでした。最初は3年前、映画撮影の提案をいただき、どんな作品にするか考えるため、大好きな北海道で構想を練ったんです。その時、自然の偶然的要素からイメージがどんどん湧き、さらに、劇中に登場する古い倉庫や青い池などを見つけ、インスピレーションを受けてシナリオに落とし込みました。

Q.真田さんは、海外監督とのお仕事は初めてですね。演出の違いや苦労があれば。

真田さん:演じるとき、私は自分を軸に、どこまで役の感情と寄り添えるか、共通点を探していきます。今回はその期間が半年間ほどあり、監督とコミュニケーションを取りながら深めていけました。肉体的にも10キロ太ることで春香という女性に近づきましたし、順撮りだったこともあり、難しいという感覚はありませんでした。

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ひとつ発見だったのは、「自然」も俳優と同じ立ち位置にあるという監督のスタンスです。当たり前のようですが、実際、自然と私達の演技が合う瞬間は、運とタイミング。監督の求める天気を待って1週間トライし続けたこともありましたが、最終的には美しい自然と、リョウスケ、春香が合致した瞬間が撮れました。きっとこの映画に神様が味方してくれたのかな、と思います。

Q.最後に、北海道のファン、観客へメッセージを。

監督:大好きな北海道で、初めて映画を撮りました。ここに住んでいる北海道の皆さんとお会いできることが嬉しいです。この映画には、風を通したメタファーや風の風景がたくさん出てきます。リョウスケと春香に吹いたような、爽やかな、ときめく風を感じていただけたらと思います。ぜひ、劇場でご覧ください。

真田さん:大自然の中では嘘がつけません(笑)。心震える、真実の大人のラブストーリーです。皆さまに、ご覧いただけたら幸いです。

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映画「心に吹く風」 公式サイト →こちら

6/10北海道先行公開!北海道ロケ「心に吹く風」のユン・ソクホ監督&主演の真田麻垂美さんインタビュー(前編)

春の北海道、美瑛~富良野を舞台にした
映画「心に吹く風」が6/10(土)に北海道で先行公開されます。

(C)松竹ブロードキャスティング

(C)松竹ブロードキャスティング

大ヒット韓国ドラマ「冬のソナタ」のユン・ソクホ監督の
記念すべき劇場用映画第一作!
キャンペーンで来札した監督と、
眞島秀和さんとともに主演した
女優・真田麻垂美さんへのインタビューを、
2回に分けてたっぷりご紹介します。

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Q.まずは監督へ、ロケ地に北海道を選んだ理由は?

ユン・ソクホ監督(以下、監督):北海道はもともと好きで、よく来ていました。自然がワイドで、視覚的な美しい要素がたくさんあります。ただ、今回はそれだけではなく、この映画で追及しているテーマをよく表している場所だと思ったんです。それは、〝偶然と時間〟です。

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「人が生きる」ということは、偶然的な要素の連続だと思いますが、よくみると自然の中にもそういう偶然の要素がたくさんあります。たとえば、風で揺れる木の葉や、太陽の日差しを受けて動く雲の影、刻々と変化する雲や影の姿。そうした大自然の中にある偶然の要素や美しさと、人間の世界で起こる偶然の物語をつなげて表現したいと思ったんです。北海道は、そのテーマにとてもマッチした場所だと感じました。

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Q.特に、白樺の美しさが印象的でした。

監督:白樺は、白い背景に木の皮がまるで人の目や顔のように見え、その多様性が興味深い。それも偶然的要素だと思いますが、そうしたパターンの自由さが、私が好きな理由かもしれません。この映画のカラーは〝白と緑〟なのですが、それにもマッチしています。ちなみに、人の表情に見える白樺の模様もたくさん撮ったのですが、結局カットにしました。

Q.真田さんは16年ぶりの映画復帰となりました。そのきっかけは?

真田麻垂美さん:〝偶然と時間〟をテーマとしたこの映画のように、私自身もこの映画との出会いは偶然なんです。松竹ブロードキャスティングの深田誠剛プロデューサーとたまたま食事会でご一緒する機会があり、映画のワークショップ式オーディションにお誘いいただいたのがきっかけなんです。

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その時は長く現場を離れていたので、「ご迷惑になるのでは」とお答えしたのですが、「主婦の話なので、実生活で主婦を体験した真田さんにぜひ」と言われ、迷いながらも参加することにしました。が、部屋に入った瞬間、監督の優しい空気感に包まれ、それまで緊張していた自分が嘘のように解放されたんです。不思議でしたけれど、とても居心地が良くて、自由に表現させてもらいました。すべてがそこに到達するようにつながっていたのかなと、今は思います。

(つづく)

(C)松竹ブロードキャスティング

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映画「心に吹く風」公式サイト →こちら