4/30にスガイディノス札幌劇場にで
道内公開される夕張&上海ロケ
「スイート・ハート・チョコレート」。
公開を記念し、プレス用にいただいた
ミッシェル・ミー(米子)プロデューサーの
インタビューをご紹介します。
※写真は2012年記者会見時のもの
——本作を企画したきっかけを教えてください。
私は日本文化が好きで日本映画もたくさん観てきましたが、日中合作映画を企画したのは、2006年にゆうばり国際ファンタスティック映画祭に参加したことがきっかけです。夕張市民の映画に対する情熱に心を打たれました。この短いたった4日間の映画祭が、市民にとってとても大切な祝祭であると感じたのです。さらに私が一番好きな山田洋次監督の作品『幸せの黄色いハンカチ』もこの地で撮られたと知り、とても親近感を覚えました。中国に戻ってからもずっと、映画の雰囲気が漂う夕張の町が恋しくてたまりませんでした。
翌年、2007年の映画祭に関する話が聞きたくて(前年お世話になった)通訳の女性に電話しました。その時、夕張市の財政破綻により映画祭が取りやめになったことを聞かされたのです。ショックで涙が出て、その日は全く仕事が手につかず、夕張のことで頭が一杯でした。あれほど映画を愛し、映画祭を楽しみにしている夕張市民がどれほど心を痛めているかを考えると私はいてもたってもいられなくなりました。
それで思いついたのが、夕張を主な物語の舞台にして映画を撮ってしまおう、ということだったんです。映画になればもっと沢山の人に夕張を知ってもらい、注目してもらえる。それが自分が映画人として夕張のために出来得る唯一無二の方法だと感じました。東京にいる友人で映画録音技師の山方浩さんに電話で話したところ、すぐに賛同してくれて、全面的にサポートするので必ず完成させようとまで言ってくれました。
——脚本はどのように構想されたのですか。
2007年から2011年まで、チームを引き連れて何度も上海と夕張を往復しました。四季の変化を実地調査し、夕張の最も美しい時期を発見していく中で、私は「愛」と「守ること」をテーマにしたラブストーリーを撮ろうと決心しました。思えば私が『幸福の黄色いハンカチ』の何に惹きつけられたかといえば、素朴な愛だったのです。では、どのような愛情の表現が日中合作映画において相応しいのか。それを考え続けました。夕張を知れば知るほど、物語はどんどんクリアなものになっていきました。
雪と氷に覆われた北国・夕張で芽生えた異国の恋が、10年の長きにわたって見守られ続ける。 物語の主人公は、上海から北海道に留学した林月、夕張スキー場の救助隊長・木場総一郎、救助隊員・星野守。彼らの美しく運命的な出会いは、同時に美しくも物悲しいラブストーリーの誕生でもあった——。こんな物語を友人らに話したところ、皆の共感を得ることができました。2007年に正式に脚本の制作を開始し、17回もの改稿を経て、最終的に完成したのは2011年の6月。修正や変更が多く、とても苦労しましたが、愛というテーマがぶれることは決してありませんでした。愛に国境はなく、どんな人にも受け入れられ理解されるものだと信じています。
——映画では夕張と上海のどのような側面を見せたいと思いましたか。
夕張に関しては自然の美しさです。夕張の四季は、春の桜、夏はメロン、秋には楓、そして冬のピュアスノーといずれも特徴的な美しさがあります。物語の始まりを真冬に設定したのは、氷雪に覆われた夕張がまるで童話の世界に出てくる雪国のようで、一点の曇りもないほど美しいから。そんな静寂無音かつ神秘的な場所でロマンチックなラブストーリーが展開し、その温もりが氷雪を融かし、心に安らぎを与えてくれます。
一方、上海は国際的な大都市です。東京のようににぎやかで騒がしく、新しいものであふれていて忙しない! 冬に雪が降ることは滅多になく、人々は自然に憧れ大自然を求めて一家で旅行に出かけます。このような両極端に違う場所の設定は、映画に更なる深みをもたらしてくれます。
——篠原監督と組むことになった経緯は?
物語の始まりは夕張、撮影の大半も夕張なので、制作の初期から日本の監督で行くべきだと考えていました。篠原監督の作品は以前から『天国の本屋〜恋火』、『山桜』、『はつ恋』などを観ていて、愛が緩やかに温かく表現されていることが印象に残っていました。それはまさに『スィートハート・チョコレート』が必要とする感性だったのです。初めてお会いしたのは、東京・赤坂の東急ホテルの喫茶店でしたが、監督の温かい笑顔が私を終始リラックスさせてくれて、何かご縁のようなものを感じました。ほどなく2011年12月31日、東京のリッツカールトンホテルで篠原監督とリン・チーリンの席を設けたところ、とても打ち解けていい雰囲気だったので、監督との合作への気持ちが一層高まりました。1年あまりご一緒して、とても楽しかったです。 監督がさまざまな困難を解決してくださったおかげで、映画を完成することができました。
——登場人物の3人と、それぞれのキャスティングについて教えてください。
スイートハートは伴侶という意味で、チョコレートは愛情を伝えるための物です。主人公のリンユエには甘くて優しいイメージの女性が不可欠でしたが、リン・チーリンさんは誰もが納得する配役でした。日本と上海の両方で仕事をした経験があり、言葉が話せて、両方の文化を熟知しているという面でも適任でした。
リンユエが惹かれる2人の男性は、それぞれ違う魅力を持っています。池内博之さんのしっかりとした大人のイメージ、そして男気にあふれているところが、リンユエに安心感を与える木場総一郎役にぴったりでした。一方、福地祐介さんの明るい性格は、善良で陽気な星野守のイメージにぴったりで、福地さんが演じる守に出会うことでリンユエはとてもハッピーになります。この3人のキャスティングは、本当に大成功でした。
——本作の製作過程において、どのようなところが合作ならではの難しさ、醍醐味でしたか。
合作を撮るということのすべてが私にとって勉強になりました。日本のチームのワークスタイルは非常に厳格で、すべての仕事を一定の段取りに従って進めていきます。また、日本のクリエーターからは映画への情熱や作品に対する誇りが感じられました。細かい部分にまで担当が割り振られ、一人ひとりがきちんと責任を果たします。
一方、中国チームのワークスタイルは、リラックスしていて詰めが甘く、突発的な事件が発生しては計画通りに執行できないことが度々ありました。もちろん最終的には完成するのですが、日本のチームワークを大切にする姿勢は、特に中国側が学ばなければならない点だと思います。
合作を成功させるには、万全の準備とコミュニケーションが不可欠です。今回は準備の段階が慌しく、時にコミュニケーション不足を招いてしまいました。また、文化や生活習慣の違いも互いの理解や同意を得る上での大きな壁となることがありました。今後の合作映画ではこれらの問題が克服できると信じています。
——日本の観客へのメッセージをお願いします。
やっと本作を日本で上映することができて、非常に嬉しくとても楽しみにしています。日本の皆さんが、この映画を、そして夕張を好きになってくれることを心より願っています。本作は単なる一本の映画にとどまらず、日中の映画人たちの映画への敬意と夕張への思いがこめられた作品であり、チーム力と愛の結晶です。
ここに至るまで、サポートしてくださった方々に感謝の気持ちでいっぱいです。特に12年来のよきパートナーであり、兄のように慕っていた山方浩さんには並々ならぬ尽力をいただきました。誰よりも日本での公開を待ち望んでいた山方さんに感謝の意を捧げます。「遠く天国にいる山方兄さん、ご安心ください。どうか微笑んで、『スイートハート・チョコレート』の日本公開を祝福してください!」
★プロデューサー・共同脚本:ミッシェル・ミー(米子)Mi Zi
テレビのプロデューサーを経て上海映画製作所に10年間勤務した後、2009年にMZ PICTURESを設立。主なプロデュース作品に、長編劇映画『陶器人形』(06/チャン・ジャーベイ監督)、『さくらんぼ 母ときた道』(08/チャン・ジャーベイ監督)、『嫁装』(09/ハオ・ラン監督/日本未公開)、米HBOとの合作ドキュメンタリー『劫后天府泪縦横(China’s Unnatural Disaster; The Tears of Sichuan Province)』(09/ジョン・アルパート、マシュー・オニール監督)、米アカデミー賞短編ドキュメンタリー賞受賞作『中国 エイズ孤児の村』(06/ルビー・ヤン監督)などがある。