「へのじぐち」などで知られる函館出身の吉雄孝紀監督。
13年ぶりとなる新作「視る姉」の上映会が、
1/7(土)、札幌で開催されました。
「自主映画の楽しみ」と題したトークの模様をレポートします。

トークには、「視る姉」に出演した
寺西冴子さん、鈴枝房子さん、アレッサンドロ・マヴェリオさんが登場。

ミュージアムのスタッフでもある寺西さんは、
この日上映された吉雄監督の過去2作品
1994年の「食器を洗う男」、97年の「押し入れの女」にも出演。
20代、30代、そして今回は40代の彼女が登場しています。

まさに吉雄作品の〝女神(ミューズ)〟ともいえる存在ですが、
驚くことにプロの役者さんではありません。
吉雄監督「サエちゃん(注:寺西さんのこと)、映画で押し倒されたり、オッパイ見せたり、踊らされたり…えらいなーと思いました(笑)。なぜ出てくれるんですか?」
寺西さん「最初は映画に関われるのが楽しくて…でも今回は緊張しました。13年もブランクがあったので。しかも、私が歳を重ねるほどに機材が良くなってしまって、見せたくないものまで見えてしまって(笑)。一般人なのに、こんなチャンスを若い頃から何度もいただき、とても感謝しています」
吉雄監督の「では死ぬまで!」という言葉に、笑いつつも「はい」としっかり答える彼女の様子が印象的でした。

一方、スクリーンに映る自分を「泉ピン子さんみたい」と話す鈴枝さん。

約20年ぶりに吉雄監督と再会し、初めて吉雄作品に出演した彼女はプロの俳優さんです。
「昔から、吉雄さんを信頼して映画を作っている雰囲気は知っていて、外から見てちょっと不思議でした(笑)。今回、プロと学生が一緒の現場を関わらせていただいて、学生がどんどん成長していく、まるでドキュメンタリーを見ているような感じ。そこで何も変わらない吉雄監督(笑)。むしろ、学生のほうに入っちゃうのめり込み方をして、それを周囲がカバーしているのを見ると、あぁ~と納得した思いがあります」
「プロと学生が一緒の現場」というのは、実は「視る姉」は、北海道教育大学岩見沢キャンパスの非常勤講師を務める吉雄監督が、映像を学ぶ学生と一緒に作った作品なのです。

「学生の熱意もプラスに働きました。もちろん技術は必要だし、もどかしく思うこともあるかもしれないけれど、若い人のピュアな感性と組み合わさって、より面白くなったと思う。僕も腰が重くて十何年映画を作れませんでしたが、背中を押してくれた大学に感謝しています」と吉雄監督。

そして、日本映画の研究者で、小津安二郎が大好き&原節子のセリフで日本語を覚えたというマヴェリオさん。

「『食器を洗う男』は、ドイツ映画のようで、なぜか見た瞬間にヨーロッパを感じました。『押し入れの女』は80年代を感じる作品。新作もポケモンGOを取り入れていたり、時代を盛り込んでいますが、それらは、いま上映しても感動しません。その先に意味がある。だから、続けることに意味があります。ぜひ、吉雄監督には作り続けてほしいです」

最後に、〝自主映画の楽しみ〟について、吉雄監督は
「自主映画って、貧乏くさくて稚拙で、若いときのハシカみたいなものと思われているし、実際、僕もそういう面があったと思います。でも、50になった今も続けて、こうして3本並べてみると、『有名監督になる』『金儲けしたい』みたな上昇志向とは違う価値があると思いました。特に、『食器を洗う男』に出てくる携帯のない世界の恋愛や札幌の街角って、あまり記録が残っていない。自主映画なので、偶然を含めて〝映ってしまうもの〟があり、監督としてセレクトしたものよりも、意外と豊かなものが入っている気がします」と話していました。

以上です。
自主映画への熱い思いが伝わってきて、意義深いひとときでした。
吉雄監督、ありがとうございました。 そして寺西さん、お疲れさまでした!