さっぽろ市民シネマ上映会「阿莉芙」トークレポート後編

9/23(日)、札幌プラザ2・5で開催された
「さっぽろ市民シネマ上映会」。

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台湾映画「阿莉芙【アリフ、ザ・プリン(セ)ス】」
の王育麟(ワン・ユーリン)監督と、
「さっぽろレインボープライド実行委員会」委員長の
柳谷由美さんとアンジーさんによるトークの続きをどうぞ。

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* * *

司会(満島てる子さん、以下司会)/映画「阿莉芙」は、台湾の先住民族、LGBT、それもさまざまなセクシャリティの当事者、しかも最後までそのセクシャリティ、ゲイだったのか劇中では明かされないアンジーの旦那など多彩なキャラクターが登場します。キャスティングに苦労されたのではと思うんですけれど、その決め手、重要視された点などを教えていただければ。

王育麟監督(以下、監督)/(※通訳の方の言葉をそのまま記載しています)さっきてる子さんがご紹介くださった前作「父の初七日」、あれにも(シェリーが思いを寄せる男性役)ウーさんが出ています。彼はあの作品で演技が認められて、今回も絶対彼を出したいというのがありました。また、このウーさんは台湾語、いま私たちが話しているのは北京語という大陸でも通じる標準語なんですけれど、台湾には台湾語があって、ウーさんはそれがすごく上手な方なんです。なので、相手役のシェリーを決めるとき、まず台湾語を流暢にできる人が第一条件でした。そして、演技のできる、舞台経験がある人。また、トランスジェンダーとして男から女になる役なので、女装したときにセクシーに見える人。ということで、ネットで探しました。

司会/ネット!?(会場驚き&笑い)

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監督/「舞台」「役者」みたいな検索をして、写真をばーっと出して…

司会/すごいですねぇ。インタビューしてみるもんねぇ。(通訳さん通じて直接監督と会話しつつ)…そんなに長く探してない。直感で決めた!? …はぁーそうなんですねぇ。まさかこういう展開になると思っていなかったので言葉が見つからないのですけれど(会場笑い)。シェリー役の俳優さんは、死に際に向かっていくと、どんどんセクシーになっていくところもいいキャスティングだな、と思いました。

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ここで、実行委員長の2人に「このキャラクター好き」というのを聞きたいと思います。私はやっぱりシェリーママと、クリスくん♡ すっごいセクシーじゃないですか、途中でシャワー浴びてるシーンなんか本当興奮しちゃって…。(監督の携帯画面を見て)…あぁ!! あ、ごめんなさいね。クリスくんの写真を見せてもらって(笑)。どうぞどうぞ。

アンジーさん(以下、アンジー)/私がまず気になったのは、アリフのお父さんなんですけれど。そうですね…セクシーなクリスくんは、誤解を解かずに家を出てってしまうんだなぁと思ったり。でもそこで、妻役の「アンジーさん」が、ケンカしたときに「何とか言って!」という姿は、本当に私と一緒でした(笑)。

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司会/楽屋でも、「あのケンカのシーンマジで自分だと思った」って、真剣に言ってましたよね。

アンジー/そう。(司会の)満島さん好きなシェリーママのアヒル鍋のシーン。あそこは、たぶん一緒に行きたいんだろうけど、行ったけど色々考え込んでいるから食欲がない、という。

司会/そうそう。体調悪いから帰れって言われたのに、シェリーママが「一緒にご飯行こうよ」ってデートに誘うシーン、すごい好き。

アンジー/心の落ち込みが食欲で表現されていて、食欲ないけど一緒に居たいんだな、って感じました。そのときの「ドーナツがドラ焼きになるよ」ってセリフが!

司会/あの、「ドーナツがドラ焼きに」ってセリフは、おしゃれでしたねぇ(笑)。

アンジー/私最初何かな?って思ったんですけれど。あ、あぁ~と思って。

司会/私腹抱えて笑いたかったんだけど、みんなすごい真剣に見てた(会場笑い)。

アンジー/これって、そういうことでいいんですよね、私たちが思っている。そういうことですよねぇ(笑)

司会/そう。性別適合手術を受けた方、特にMTFの方は、自分の作った性器が塞がらないように栓をしておく必要があるのは今でも変わらないんです。ですから、「ドーナツがドラ焼きに」は身に迫るものがあったわけでございますけれども。

アンジー/なんかそういうキャラクターの一面一面が好きなので、誰かっていうよりは…

司会/全体的にストーリーを楽しまれて…監督また笑っている(笑)

通訳の女性/私が見た時も、「ドーナツがドラ焼きに」のシーン、台湾の映画館ではどっかんどっかん笑ったんですよ。その話をしたらすごい喜んで、たぶん監督一番自信のあるシーン(司会&アンジーさん爆笑)

司会/こんなに笑顔が見れるなんて…。ゆみおさんは?

柳谷由美さん(以下、ゆみお)/私はもう、アリフですね。

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司会/ゆみおさん、もしかしてアリフ好みだったり…?

ゆみお/アリフ好みですね。私は女性が好きですけれど、わりとボーイッシュな女性がタイプです。アリフは後半髪が長くなって、その変化も素敵だなと思いました。個人的にはトランスジェンダーの方から好意を持たれた経験はないので、よく分からないんですけれども。

司会/民族衣装を着る姿、すごい格好良かったですもんねぇ。ありがとうございました。この映画はさまざまな場所で物語が展開しますが、私が珍しいなと思ったのは、ドラッグクイーンが出てくるシーン。実は札幌にもドラッグクイーンの店はあって、アンジーちゃんはそこで働いているんですが…

アンジー/はい。すすきのの、外れの

司会&アンジー/西7丁目。

アンジー/「7丁目のママ」というところにいます。

司会/はい、私がその2階の「7丁目のパウダールーム」というところにいるわけなんですけれど。「7丁目のママ」の店長は、ゲイなんです。日本では、ゲイの文化としてドラッグクイーンが存在すると考える人が多いんだけれど、そういう目線から見ると、店長がトランスジェンダーで、ドラッグクイーンが働いている場面設定が斬新に映りました。あれは実際は?

監督/結論から言うと、そういうのが台北に多いかは分かりません。でも、台北に西門町という〝台湾の原宿〟と言われているエリアがあって、そのすぐそばにゲイバーが集まるエリアがあって、オーナーがトランスジェンダーという店はあります。間違ってないと思います。

司会/なるほどね。台湾でも馴染みのシーンかもしれませんね。

監督/オーナーがゲイでもレズビアンでもトランスジェンダーでも、たぶんどうでもいいんです。あなたが男でも女でもどっちにしろあなたを愛している。これが、この映画で掲げているポリシー、スローガン。シェリーのバーを通じて、取り巻く人の人生が交差するのを描きたかったんです。

司会/なるほどですね。やっぱりまだまだ、日本だとゲイはゲイ。レズビアンはレズビアン。悪いわけではないんだけれども、住み分けがなされている場面があって、マイノリティの中でも協力できるかどうか、と考えたりもしました。

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台湾は、去年同性婚が認められ、来年には法制化するという国。LGBT活動として進んでいるように思えることから、今度は話を広げていきたいです。映画「阿莉芙」を見て衝撃だったのが、LGBTに理解がある、進んでいるといわれる台湾の実情です。アリフは都会に出て当事者として生きているけれど、田舎に戻ると自分のセクシャリティを打ち明けられない。日本からみてオープンに見える台湾のLGBT事情の、そうではない側面を描き出した映画でもあったわけです。実際、監督は台湾でのLGBTの扱いをどうお感じになっていますか?

監督/台湾のLGBTQ問題は、もう20年も30年もずっと戦い続いています。去年、私の大学時代のフランス語の先生が、ゲイの人でパートナーがいたんですけれど、そのパートナーが亡くなったんですね。すると彼には何の権利もなくって、パートナーの家族が財産とか全部持っていっちゃったということがあったんです。それで、何も無くしたフランス語の先生はその後自殺してしまいました。台湾でもまだすごく不公平なことがあって、そこは戦って勝ち取っていかなければならないなと感じています。日本でもそうだと思うんですけれど、法律には傲慢さとか差別があります。

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司会/台湾でも、当事者の方たちがさまざまなパレードをしたりして、監督のおっしゃったような権利を獲得することに意識高くされていると思います。札幌も同性パートナーシップ制度を結んでいるんだけれど、結局法的な権利がないのは同じです。ここで、パレードを開催する実行委員長に話を聞ききます。まず、映画「阿莉芙」で描かれる、台北を中心に、そこから田舎に帰っていくシーンは、北海道の有様に近いかなと思います。地理的にもよく似た札幌で、権利を獲得するためにパレードをすることについて、打ち出したいことがあれば。

ゆみお/台湾って、東京でいったら新宿2丁目みたいな(司会「すっごいわかる!」)、どこでも生きていけるイメージがあったんですけれど、監督のお話と映画から、実はそういうわけではないと感じました。もちろん賛成する人もいるけれど、反対する人もいて、札幌の境遇と似ています。

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「さっぽろレインボープライド」は、1996年から2013年まで続いたパレード「レインボーマーチ札幌」の後身団体として今年やらせていただくことになりました。調べてみると、台湾は2003年が初開催なんですね。札幌より後に台湾で始まったことを考えると、なんだか台湾はすごく早いスピードで進んでいるのかなと思います。もちろん背景には色々な事情があるんでしょうけれど。北海道全体、日本全体で考えると、差別や偏見はまだまだ根強くあると思うので、その解消のきっかけのひとつにパレードがなってほしいと思います。

司会/開催は10月7日(日)ですね。アンジーさんからは。

アンジー/北海道では、札幌や旭川、函館とか有名都市では発信されていると思うんです。でも、地方だとどうかと考えると、アリフはMTFですけれど、私の友達で「FTM」(注:Female to Male=女性から男性へ の略)の子がいて、地方だと「おとこおんな」といわれて辛い、みたいな話があります。パレードの目的のひとつには、地方に暮らす孤立した当事者にも情報を発信することもあるので、しっかり発信していきたいと思います。

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司会/そうですね。権利を主張する前に、つながりを作り集まる必要があるので、パレードはそういう場所としてひとつ機能しています。ここで残り5分になりました。…すごい。さっき爆笑していたのがもう1時間も前なのね(笑)。それでは最後に伝えたいことを。

監督/映画「阿莉芙」はシリアスな側面も、悲しい側面もあるんだけれど、ミックスした形で伝えたくて、笑える要素も入ってこういう映画になりました。いま話したようなことは、もしかしたら20年後には、考え方も進んで取るに足らないことになるんじゃないかな、と。そう願っています。

司会/この映画を、きっかけに考えが変わる方もいるでしょうし、きっかけのひとつになっているのではと思います。それではゆみおさん。

ゆみお/映画「阿莉芙」には後半葬儀のシーンが出てきて、この後上映される「ダイ・ビューティフル」も葬儀のシーンがありますけれど、私も歳をとってどういう風に死んでいくか考えるんです…

アンジー/そこまで考える!?

司会/分かります。すっごい考えます。

ゆみお/はい。私、クラブイベント葬みたいな感じで、明るく見送っていただきたいなと思っていますけれど。私からは「さっぽろレインボープライド」のことをご紹介したいです。当日まで関連イベントも色々あります(詳細は公式サイトをチェック)。年齢が制限されるものもありますけれど、盛りだくさんなのでぜひいらしてください。10月7日のメインイベントのパレードは大通西6丁目が会場です。当日は11時に開場し、午後2時に風船を持って、大通公園から札幌駅までを往復します。思い思いの格好で来てください。

司会/そうですね、過激過ぎない範囲なら大丈夫です(笑)。

ゆみお/例年たくさんの方に来ていただいています。ぜひお越しいただきたいです。

司会/すごく早い1時間でした。皆さんお付き合いいただき…(アンジーさんの存在に気付く)あ、アンジー忘れてたぁ。

アンジー/一番存在感あるよぉ!(会場笑い)…笑い過ぎじゃない、みんな。「さっぽろレインボープライド」の関連グッズも用意しています。パレードの募金になりますので、どうぞよろしくお願いします!

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司会/時間があれば質疑応答を設けたかったのですけれど、思いのほかアンジーで盛り上がっちゃって(笑)。あっという間の1時間でした。ご静聴いただきありがとうございます。

* * *

さて、お楽しみいただけましたか。最後に集合写真をパチリ!

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映画はもちろん、トークも濃く&楽しく、意義のあるひとときでした。
ちなみに、ご興味ある方は、ぜひさっぽろレインボープライドの
公式サイト(こちら)をチェックしてみて下さい!

さっぽろ市民シネマ上映会「阿莉芙」トークレポート前編

9/23(日)、札幌プラザ2・5で開催された
「さっぽろ市民シネマ上映会」。

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〝自分自身〟でありたいと願ったトランスジェンダーを主人公にした
台湾映画「阿莉芙【アリフ、ザ・プリン(セ)ス】」と、
フィリピン映画「ダイ・ビューティフル」を上映。

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また、上映の合間に、「阿莉芙」の王育麟(ワン・ユーリン)監督と、
イベントを共催するさっぽろレインボープライド実行委員会・委員長の
柳谷由美さんとアンジーさんによるトークが行われました。

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ポスターからも伝わるように、上映作品の力強さはハンパなく。
さらにトークでは、当事者による鋭い読み解きに頷くと共に、
すすきのの女装サロンBAR「7丁目のパウダールーム」の
満島てる子さんによる名司会ぶりもあり、
監督&会場が爆笑の渦に包まれた素敵な内容でした。
当日お手伝いスタッフをさせていただいた私・アラタメがレポートします。

* * *

司会(満島てる子さん、以下司会)/映画「阿莉芙」は、アリフという男性から女性になりたいトランスジェンダー「MTF」(注:Female To Male=女性から男性へ の略)の主人公を中心とした群像劇。台湾が舞台で、アリフは都会の台北でヘアメイクとして活躍つつ、アルバイトやバーでメイクアップアーティストとして働き、性別適合手術のためのお金を貯めています。出身が先住民族の出で、父親がその一族の長です。そんなある日、父親が突然、アリフに長を継がせたいと言い始めたり、バイト先のママであるシェリーさんが倒れたり、平穏な日常がどんどん崩れていく。恋があったり、別れがあったり、さまざまな人が色んな思いを抱えながら自分の問題と向き合っていく。そんな姿を描いた作品です。第20回台北電影獎発表受賞式で新人賞を獲得し、第30回東京国際映画祭にも出品されています。

アリフ、ザ・プリン(セ)ス

ゲストの王育麟(ワン・ユーリン)監督は1964年台北生まれ。ドキュメンタリーやドラマの製作をしつつ、父親の葬儀を巡るドタバタ劇を涙と笑いで描いた映画「父の初七日」が台湾でヒットし、日本でも一般公開されて話題になりました。新作「阿莉芙」も、家族をはじめとした人のつながり、男と女、故郷と都会、民族と個人といった、二つのものの狭間で揺れ動く人の生き様を細かく描いています。近年を代表するLGBT系映画の一つともいえると思います。

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実はわたくし、「7丁目のパウダールーム」というすすきのの外れにあるお店でひっそり働いている者なんでございますけれども、そういう飲み屋をやっているからか、途中に出てくるバーのママ・シェリーさんの生き様、恋の仕方に「あ~すごい分かる」と共感したり。実は出身が三重県、コンクリート会社の長男坊でございまして、アリフみたいにちょっと前まで「家を継げ」と言われていたんです。だから、この「家を継がなきゃいけないけれど、私って私だし…」という気持ち、すごい分かるなと思って観ていました。さっそくですが監督、(と、ここでおもむろに監督が上着を脱ぎ始める)…暑いのね(会場笑い)脱いでもいいのよ…OKね。話を元に戻しますと、この映画で何を一番伝えたかったか、ずばり教えていただけますか。

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王育麟監督(以下、監督)/(※注 通訳の方の言葉をそのまま記載しています)皆さんこんにちは。今てる子さんがお聞きになった質問ですが、この映画を撮る何年も前に、仏教のある経典を読む機会がありまして、その中にあったひとつの言葉にすごくショックを受けたんです。というのは、「姿形のあるものはすべて偽りである」というような意味。噛み砕いて言うと、「目に見えるものはすべて偽りである」。自分は異性愛者、いわゆるノンケですが、でありながら、共に芸術を学んだ人たちの中には同性愛者やLGBTQの人たちがいて、彼らの苦しい気持ちや辛い境遇を見て、そういうことが起きないようにしたい、という気持ちがありました。

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台湾には十数個の先住民族がいますが、そのうち3つがリーダーの地位を子どもに譲っていくという習慣があり、アリフの出身としたパイワン族という台湾原住民だけが、それが女であろうと男であろうと、一人目の子どもに譲ることができるという文化を持っていました。なので、アリフみたいに女性に性転換して、女性の姿で頭目のリーダーの地位を引き継ぐことができるストーリーは事実としてありえるのです。そこに、都会で生きる人の姿、アリフを取り巻く人の姿、辛さを同時に描きたいと思いました。きっと質問が沸いてくると思うので、まずはこれくらいにします。

司会/はい…えっと、まとめられちゃったわ、という感じなんですけれど(笑)。LGBTというのがマイノリティーだと思うんですけれども、先住民族も同じで、アリフは〝ダブルマイノリティー〟なわけですよね。出生を面白い描き方をされているな、と思いました。次は「さっぽろレインボープライド」の2人から、映画の感想や監督への質問を、自己紹介も兼ねつつ。まずは柳谷さんから。

柳谷由美さん(ですが、コメント内容より、以下「ゆみお」さんとします)/はい、皆さんこんにちは。私はさっぽろレインボープライドの実行委員長をさせていただいてます柳谷由美と申します。

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普段は「ゆみお」と呼ばれているので、今日もそれでお願いします。「さっぽろレインボープライド」については、皆さんに冊子をお渡ししており、後ほど告知をさせていただきたいと思います。

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今日の映画「阿莉芙」、都会と田舎、部族の問題だったり、レズビアンとMTF、トランスジェンダーの方が同居して最終的には恋、というストーリーが新鮮でした。私はレズビアンとして生活しているんですが、私にもすごく当てはまる、フィクションなんだけれど身近に感じられる内容でした。監督への質問は、レズビアンとトランスジェンダーが同居するといった状況は、台湾では一般的なんですか?

司会/札幌に住む我々からすると、すごい新鮮…!なんて思いますよね。

ゆみお/はい。別に仲が悪いわけではないんですけれど、住み分けられているイメージがあって。

司会/もし同居するとしても、やっぱりレズビアンはレズビアンだし、ゲイはゲイだし…という感じですよね。監督どうでしょう。

監督/映画を作るときに、大枠は私が作りましたが、シナリオを作る人が5人いて、その中にレズビアンやゲイの方がいました。ストーリーを作るうえで嘘は作らない、と考え、当事者がいたので、事実として絶対にあるかは分かりませんが、ありえるのだろうと思います。

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映画で、アリフとルームメイトのペイチェンが一緒に生活している。そうしなければいけなかったのは、親友でありながら、バイクでお父さんのいるところに行き、途中で泊まった旅館で特別な関係に発展することに重きを置いた、意図があったようです。

ゆみお/私もペイチェンと同じ立場だったら、もしかしたらアリフに恋をしていたかな、という気がしていて(司会者&アンジーさんが反応!)「好きになった人が男だろうと女だろうと関係ない」というセリフがあったんですけれど、すごくそれが響きました。

司会/そうですね。私もこんな感じで迫られたら落ちるかもしれない…と思って観ていました(笑)、格好良かったですよね。監督が意図しているか分かりませんけれど、ペイチェンがお風呂で裸を見せろ!とアリフに迫る場面で、アリフ目線のカットがあって、濡れているペイチェンの体の映し方が、何となく特別な感情を抱いているんじゃないかという感じがしました。すごく丁寧に描かれていて面白かったです。

ゆみお/そうですね。自分自身に重ね合わせて見るところが多かったです。

司会/どこに重ね合わせたかは後で聞かせていただきましょう(笑)。続きまして、アンジーさん。

アンジーさん(以下、アンジー)/はい。「さっぽろレインボープライド」という団体を、ゆみおと一緒に委員長をやらせていただいているアンジーです。よろしくお願いしまーす。

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皆さんお手元にある冊子の実行委員長挨拶で、私がすっぴん・本名で出ているので、ギャップに驚いていただければと思います(笑)。目の細さは切り傷並みです(笑)。で、私の感想ですね。えーっと、私はゲイであり、親にもカミングアウトしたんですけれども、アリフの場合はお父さんが来てしまってバレましたよね。その後、お父さんが草むらや空港などをゆったりゆったり歩くシーンが長かったと思うんです。当事者としてはカミングアウトする側にいる立場なので、カミングアウトされた側にあまり意識がいかないんですけれど。あのシーンは、カミングアウトされた側の気持ちを描くために歩き続けた、自分の子どもが当事者だったというのを飲み込むという気持ちの葛藤を、ああ演出したのかな、という…

司会/そうですね。ものすごく長い幅で、ひたすらオッサンが歩いていくという(笑)。私もカミングアウトは父親や母親に済んでいるんですが、(アンジーの発言を聞き、監督爆笑の姿を見て)…すごい笑ってるわ。けっこう親もショックだったみたいで、何となくこんな気持ちだったのかな、なんていう風に思いつつ、ね、ものすごく何かにツボッてる監督ですが…

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アンジー/ちゃんと訳してくださっているんでしょうかね、通訳の方は(笑)

司会/楽屋からずっと、アンジーちゃんを見ると爆笑するっていうか…

アンジー/そう! あの、映画に「アンジー」って女性が出てくるんですよね! 私呼ばれている、と思って。

司会/クリスの妻ね。

アンジー/それで、名前を調べたんです。そしたら意味が…「天使」でしたぁ!(会場笑い&拍手)

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司会/優しいわね、お客さん。

アンジー/良かったぁ。

司会/楽屋ではね、「天使なんだって」て言われて、「ふーん、そっかぁ」って反応だったんですけれど…監督ようやく笑いが収まったかな。長いカット、いかがでしょうか。…(通訳に耳打ちされ)あ、アンジーちゃんがどうしてこんなにかわいいのか、と聞いているそうです(笑)。

監督/(通訳の方)さっき、お父さんが帰っていくシーンが、長いなって思ったって感想を伝えたら、すっごいツボっちゃったんですけれど(笑)。たぶん、アンジーちゃんがカミングアウトした時、お父さんお母さんの帰る家は、そんなに遠くなかったんでしょう(アンジーさん爆笑)、でも、アリフのお父さんは台東というめっちゃ遠いところから台北まで来てたから…

アンジー/(笑)なるほどなるほど。じゃあ、私はシーンを深読みしたんですけれど、ただ家が遠かったというだけですか?

司会/すごいわねぇ(笑)

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アンジー/カミングアウトされて飲み込まれない親って少ないと知っていたので、私は真剣に「すごいな」と。そういう状況を調べてくださったのかと…(マイクが反響してキーンと鳴る)あら、黙れってこと?(会場笑い)。そう、私は素敵なシーンだなぁと思ってたんですけれど、まさかねぇ、家が遠いからとは…

司会/ねぇ、シンプルな理由でございました。でも、歩くシーンの後半で村の人が後ろから来て「頭目が歩く時代になったんですねぇ」なんて言うのを見ると、歩いているシーンも何か意図しているのかな…と思いますけれど、監督に言われると、ねぇ。

アンジー/本当、真実はいつもひとつですねぇ(笑)

司会/えー…監督はひたすら笑ってますけれど。アンジーちゃんありがとうございました。

* * *

(つづく)

9/23に札幌でさっぽろ市民シネマ上映会!「阿莉芙 ALIFU」&「ダイ・ビューティフル」

ブログ更新が滞ってしまいましたが(すみません)、

札幌では自主上映活動が活発に行われています!

本日は「さっぽろ市民シネマ」さんの上映会をご紹介。

「台湾、そしてフィリピン ― ただ自分自身でありたいと

願った二人のトランスジェンダーの物語」と題した上映会が、

9月23日(日・祝)、札幌プラザ2・5で行われます。

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上映作品は、

現代台湾を生きるLGBTを描いた傑作

「阿莉芙ALIFU, THE PRINCE/SS」(王育麟監督)と、

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切なくて、愛にあふれたキュートな

フィリピン映画「ダイ・ビューティフル」

(ジュン・ロブレス・ラナ監督)。

03

台湾から王育麟監督をお招きしたトークもあるそう!

公式Facebookを見ると、

なんだかすごーく面白そうな予感。

チケットは7月下旬から。

詳細やお問い合わせは公式FB(こちら)へ。

5/20(日)札幌で「愛と破壊のアニメーション上映会」

自主上映会のお知らせです!

5/20(日)午後3時から、札幌の「よりⓘどこオノベカ」

(札幌市中央区南11条西7丁目3-18)で

「愛と破壊のアニメーション上映会」が開催されます。

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チラシがこのたび届きました!

北海道で活動する大内りえ子、さとうゆかのほか、

鹿児島出身の前畑侑紀、武蔵野美術大学映像学科の

黒坂圭太教授ら4人のアニメーション作家の作品を紹介。

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参加料は1500円。

上映会後、作家トークを予定しています。

詳しくはEZOFILMのサイトへ(こちら

この上映会は6月、京都でも行われるそう。

アニメーションにかける現代作家の取り組み、

面白そうですねっ!応援しています。

5月、女優・香川京子さんが札幌に!溝口監督2本立て

往年の映画ファンにとって、嬉しいビッグニュース!

5月26日(土)、札幌プラザ2・5で

溝口健二監督「近松物語」「山椒大夫」が上映。

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さらに、女優・香川京子さんを招いた

シネマトークも開催されるそうです!

札幌映画サークル創立55周年記念上映会。

札幌映サさん、ありがとうございます!

スケジュールやチケットなどの詳細は公式サイト(こちら)へ。

本日3月1日から前売り券発売スタート!

ぜひこの機会に、名作&名女優のトークを楽しみましょう。

12/1~3、函館港イルミナシオン映画祭のパンフを配布!

今年もこの季節がやってきました。

「函館港イルミナシオン映画祭」!

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12/1~3、函館山ロープウェイ展望台など

函館市内3会場で開催されます。

上映作品やスケジュールをまとめた

パンフレットを、館内で配布中です!

気になる作品、ぜひチェックください。

映画祭の公式サイトはこちら

11月、札幌で「うまれる」自主上映会

「命」に向き合うドキュメンタリー映画

「うまれる」(豪田トモ監督)の

自主上映会が11月10~12日、札幌で開催されます。

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「子供は親を選んで生まれてくる」という胎内記憶をモチーフに、

命を見つめる4組の夫婦の物語を通し、

自分たちが生まれてきた意味や家族の絆、

命の大切さ、人との繋がりを考えるドキュメンタリーです。

上映日時と会場については、

主催団体の公式サイト(こちら)を。

※ママタイムや大人タイムなどあり。

また、会場がそれぞれ異なるのでご注意を!

11/2~5、新千歳空港アニメーション映画祭!

本日で札幌国際短編映画祭(こちら)が終了しますが、

今度は新千歳空港を舞台にしたあの映画祭が!

ザ・「新千歳空港アニメーション映画祭」

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今回で4回目を迎えます。

今年も、国内外の多彩&最新のアニメーション作品が

集まり、豊かなひとときが楽しめます!

奇才・湯浅政明監督の特集をはじめ、

ここならではのスペシャルな企画も盛りだくさん。

詳しくは、公式サイト(こちら)へ。

札幌出身・三宅唱監督が新作「密使と番人」について語りました

札幌出身の三宅唱監督の新作「密使と番人」が東京・渋谷のユーロスペースで公開されました。1日には監督が観客の質問に答えるトークが行われました。

「密使と番人」はCSの時代劇専門チャンネル、日本映画専門チャンネルの製作。三宅監督としては珍しい時代劇です。公式HPはこちら

時代劇ではありますが、中身はとてもユニークで、蘭学の資料と引き換えに日本地図を長崎のオランダ人に届けようとする密使(森岡龍)と、その追っ手(渋川清彦)たちの攻防を、全編60分にわたり、ほとんど説明なしに描いています。長いはずの物語のうち、ごく一部を切り取って映像にしたという印象です。その理由について三宅監督は「ひたすら歩く映画にしようと考えました。歩いたり追ったりする、人のドラマと関係なく周りには山があるし雨も降るし、人間がしでかしていることとその場所全体、空間、世界で起きていることの距離感を撮りたかった」と話しました。言葉での説明ではピンとこないかもしれませんが、見終わると確かにその通りの映画になっています。

「密使と番人」について観客の質問に答える三宅唱監督

「密使と番人」について観客の質問に答える三宅唱監督

ややネタばれですが、密使と戦う追っ手が不可解な斃れ方をすることや、攻防に遭遇した夫婦がその後、どこへともなく向かうことが不思議な印象を残します。夫婦の行く先について、三宅監督の中では設定があって「きっと北海道へ向かうと思います。僕は入植4代目ですが、ひいおじいちゃんは(この映画のロケ地である)長野の出身だったので」と、うれしい裏話を披露してくれました。さらに、地図がオランダ人に渡るまでの、この先の長い物語について「続編を作るならシーボルト役はトム・クルーズで」と、「野望」を語りました。

ところで、この夫婦の妻役の石橋静河さんは、佐藤泰志原作映画の第4作で、6月に函館で撮影が行われた三宅監督の「きみの鳥はうたえる」にも出演しています。三宅監督は現在、編集を進めているところといい、「いい役者、スタッフに恵まれたことが、この映画の力になってくれればと思います。今やれることは全てやったという気持ちです」と、3週間に渡って行われた撮影に手ごたえを感じている様子でした。「きみの鳥はうたえる」は来年秋公開の予定です。(理事・加藤敦)

6/4(日)札幌市資料館で「見つけるシネマ」!「さとにきたらええやん」「解放区」を上映

札幌の自主上映グループ・キノマドが主催する上映会

「見つけるシネマvol.6」が6/4(日)、

札幌市資料館で開催されます。

〝映画で知る・考える釜ヶ崎。〟ということで、

大阪市西成区釜ヶ崎にある「こどもの里」に集う人たちを追う

「さとにきたらええやん」(​重江良樹監督)と、

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日本最大のドヤ街、大阪市西成区に漂流する若者を描く

フェイクドキュメンタリー「解放区」(太田信吾監督)を上映。

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「解放区」は札幌初上映です!

同じ街を描きながらも、まったく対照的というこの2作品。

同日上映は、地元では開催不可能とか。

この機会にぜひ足をお運びください。

詳しくはキノマドのサイト(こちら)へ。