「北のシネマ塾」後期4回目が終了

ミュージアムを会場に、北海道ロケの作品を紹介する

恒例イベント「北のシネマ塾」。

後期第4回のテーマは、えりも町ロケの

「その人は昔」(67年、松山善三監督)。

常連さんから貴重な資料データをご提供いただくほど、

(ありがとうございます!)隠れファンの多い作品です。

トークは、理事で映画研究家の高村賢治さん。

高村さんはまず、作品のテーマについて、

「地方から見た都市文化を、痛烈に批判した

メッセージ性のあるラブストーリー」と説明。

都市の冷たさ、非情さ、孤独感、人間の恐怖感を

松山監督がどう表現したかに注目し、

「前半の北海道ロケは自然光でナチュラルな一方、

後半の都会のシーンは、ネオンや仮面、ダンス、

屈折した映像手法でその不気味さを表しています」。

続いて、田舎から夢を抱いた若者が

上京するというシチュエーションが、

60年代のアメリカ映画「哀愁の花びら」や

「真夜中のカウボーイ」と類似していると指摘し、

「松山監督は、音楽や色彩の捉え方で

どう表現できるか挑戦したのでは」と持論を展開。

また、映画のロケ地となった

静内町の稗田牧場(当時)に取材に訪れた思い出を話し、

「幻想的なメルヘン映画のロケ地として最適だったのでは」と解説。

珍しい同じロケ地作品として

「網走番外地 嵐呼ぶ知床岬」(71年、降旗康男監督)を紹介しました。

特にトークに力が入ったのは、ラストシーンについて語るとき。

「列車と馬を見事にフレームに入れた、素晴らしく計算された構図。

よく撮った!と敬意を表し、1人だといつも号泣してしまいます」と

思い入れの深さを語っていました。

このほかにも、松山監督フィルモグラフィーや

「コンブ採り」というモチーフについて語られ、

高村さんの映画愛が満載のトークとなりました。

次回は・・・

11月17日(土)午後2時~

テーマは「大草原の渡り鳥」。

トークは、北海学園大の大石和久教授です。

お楽しみに!

最新会報を発行!

今日は「北のシネマ塾」後期4回目の日。

どんなトークになるか、楽しみです。

さて、最新の会報が完成いたしました!

今回は「開館1周年特集」と題し、

記念イベントのこと、1万人達成のこと、

小檜山館長のサイン会のことなどを

ギュッと詰め込みました。

会員の方には、まもなく届くはず。

ご興味ある方は、ぜひミュージアムでお読みください。

あすは「北のシネマ塾」です

ミュージアムで行われる

映画ファンが集まる恒例イベント「北のシネマ塾」。

あす20日(土)のテーマは「その人は昔」!

トークは、理事で映画研究家の高村賢治さんです。

どうぞお楽しみに!

わっかない映画祭レポート④~阪本監督×品田さん対談(2)

稚内でも撮影され、11月3日に公開される

吉永小百合さん主演の最新作「北のカナリアたち」。


(C)2012「北のカナリアたち」製作委員会

公開記念の「わっかない映画祭」(10月6~8日)

レポート最終回第2弾。

「北のカナリアたち」阪本順治監督と

映画評論家・品田雄吉さんの対談は

ますます盛り上がります。

(以下、敬称略)

* * *

阪本/今度は僕がお聞きしたいんですけれど、黄金スターだった方たちっていろいろ苦労しつつ、今でも現役の方がたくさんいらっしゃいますよね。その中で、吉永さんだけ立ち位置が同じで、ずっと主演できている。

品田/そう、それがすごい。

阪本/品田さん的には、何がどうほかの方と違って、主演一本の道を歩いているのでしょうか。

品田/私は逆に、「それでいいのかな」という気もするんですよ。人間は、成長したり、衰えたり、変わるもの。その中で、なぜ彼女は変わらないんだろう、と。でも、すごいことだとは思います。


(C)2012「北のカナリアたち」製作委員会

吉永小百合を吉永小百合たらしめているのは一体何か。それは謎なんです。本人に聞いても答えはくれないと思います。今度の映画でも、一層感じました。「やっぱりこれは吉永小百合だ」というね。結局、強いのではないかと思います。今度の映画ではキスシーンもありますよね。

阪本/はい。

品田/そういうことがいわゆるサユリスト、ファンにとっては一種のショックになるかもしれないけれど、「これはこれでいい」・・・という言い方はおかしいかな。それでも吉永小百合なんです。その辺がちょっとすごいなと思います。で、いつまでそれをやるかを見届けたい。見届けるまでは、死ねないかな(笑)。

さて、阪本監督の話に戻りますと、前作の「大鹿村騒動記」は、わりと世界が見えているような原作ではないかと思います。今度は、ある種「冒険」「勝負」の要素が強かったのではないでしょうか?

阪本/「大鹿村騒動記」は、「村」というくらいですから、間口は狭い話でした。人口も1000人ちょっとの山間の小さな村を舞台に、そこで行われる歌舞伎を中心にした内容。予算的な規模も大きくなく、日数も二週間しかありませんでした。ですから、小さな村の小さな話だけれど、奥行きをなんとかとろう。それに、原田芳雄さん以下、芸達者な役者さんたちが必要だということでした。しかし、今回は間口も広いし、奥行きも求められている。

品田/年代的にも。

阪本/はい。取り組み方は自分なりに同じですけれど、風景・ロケ地の広大さという間口の広さ、20年間の空白を含めた奥行きの違い、それに「東映60周年」という・・・ね、です(笑)。

だから、「そもそもなぜ僕に、この企画がきたんだろう」というところに戻るんです。それこそ、野郎ばかり撮ってきた僕が、いきなり後ろから膝をカックンってやられた感じでした(笑)。

品田/でも、それは面白いチャレンジだと思われたんじゃないですか。

阪本/そうですね。不思議な感覚でした。実は、僕の生まれたところは、東映の映画館の真正面の場所。小さい頃、映画看板の前で撮った写真がたくさんあるんです。その僕が、東映の60周年をやるというのは・・・。

品田/不思議な巡り合わせですね。

阪本/はい、感慨深いものがあります。

品田/今度の映画で面白かったのは、子供たちが成長したとき、女たちが非常にしっかりしている点です。男たちが脆いというか・・・。

阪本/(笑)。

品田/その辺は、阪本監督が考えていることの表れなんでしょうかね。


(C)2012「北のカナリアたち」製作委員会

阪本/それは、役柄の担当もそうなっていたかもしれないですし、女性の方が強烈なものを見ている、傷が深いということもありました。また、それぞれが、吉永さんを前に芝居するということに緊張と、どこか喜びを感じていて、同性の方があれだったんですかね、芝居を交わす時に・・・。

品田/勝負!みたいな感じがあった気がします。それに比べて男たちは、森山未來ほか今売れ線の俳優さんをそろえているわりに、なにか力弱いというか・・・。

阪本/それは、品田さんの見方ということにしていただけると(笑)。役どころも、救われる役だったり、慰める役だったりしましたし。

品田/ええ、女たちの方が強い印象を受けました。これは、私の個人的な感想ですけれど(笑)。最初言ったことに戻りますけれど、そういう意味で、非常にこの映画は女性の力が潜在的にみなぎっているのかな、と感じます。その頂点と言ったらおかしいですけれど、そこに吉永小百合さんがいる。そういう映画になったのかなと思います。

阪本/「魂萌え!」を撮る時に、原作の桐野夏生さんから「男の理想で女を描かないでくれ」と言われました。「あとは原作をいくら直してもいい。男の理想で女を描くな」と。それがずーっと頭にありまして、今回も「これ、オレの理想じゃないよな」なんて考えながらやっていました。

品田/桐野さんのことは私も存じ上げていますけれど、好きな方です。「週刊文春」で映画の星とりとコメントを一緒にやった時期もあって、一種の親しみを込めてみています。あの人の書くものも素晴らしいですよね。そういうところが、どこか「北のカナリアたち」の女性たちにもつながるかな、というのはありますね。面白い話を聞きました。

司会/お話は尽きませんが、私から一つ質問を。今回、初めて開催した「わっかない映画祭」。これから続けていきたいと思っています。監督から見た映画祭、今後の可能性をお話していただけますか。

阪本/地方の映画祭はほとんど行っていると思います。その中で、なくなった映画祭もいくつかあります。結局、地域振興と映画振興のバランスが合わないところがなくなっていくんです。地域振興の意志が強すぎても駄目だし、映画マニアだけが自腹でやっても続かない。大変だと思いますけれど、うまくいっているところはそのバランスがいいんだなと思います。

それと、僕たち作り手がゲストで行くと、地元の方との関係が非常にフェアな映画祭は愛されて続いています。ぜひ、続けてほしいですし、僕たちも何かご協力できればと思います。僕の映画をかけてさえくだされば(笑)。

司会/ありがとうございます。品田先生には、映画祭はこうあるべきだいうものだということをご示唆してくだされば。

品田/それは一番難しいことで、簡単には言えないですね。でもね、映画祭というのは、続かないと意味がないんです。続けるのはしんどいことですけれど。その土地柄に根差したテーマを一つ絞って、それを芯にして辛抱強く続ける。単純ですがこれが一番難しい。思いつきでおやりになっても絶対続きません。根性を叩き込んで、「我々はこういう考えでやるんだ」と決めるといいと思います。

それは、稚内をどう結び付けるかでもいいし、たとえば、今回は吉永小百合さん中心ですけれど、女優を中心とした映画祭、みたいなことでもいいと思います。定評ができるまでは辛抱ですね。すぐに一般受けするという幻想は持たないほうがいいかな、と思います。頑張ってください。

司会/ありがとうございました。僕たちも辛抱して、小さく作って、大きく育てていく気持ちでやりたいと思います。(観客拍手)

* * *

吉永小百合さんと

ロケ地・北宗谷の魅力を語る対談。

いかがだったでしょうか。

稚内に行き、実行委員の方々と出会って感じたことは

「映画文化を絶やしたくない」という危機感と映画愛でした。

今後、利尻・礼文も含めたロケ地ツアーや

映画を軸にした地域振興の取り組みを計画中だそう。

今回の「北のカナリアたち」を追い風に、

過去の作品を含めて、稚内と映画の関係を

もっともっと深めていってほしいと願っています。

わっかない映画祭レポート③~阪本監督×品田さん対談(1)

稚内でも撮影され、11月3日に公開される

吉永小百合さん主演の最新作「北のカナリアたち」。


(C)2012「北のカナリアたち」製作委員会

公開記念に初めて行われた

「わっかない映画祭」(10月6~8日)。

レポート最終回は、

「北のカナリアたち」阪本順治監督と

映画評論家・品田雄吉さんの対談です!

テーマは、「映画『北のカナリアたち』と

ロケ地『北宗谷・小百合さん』を語る」。

非常に興味深い、

濃い内容だったので、2回に分けました。

お二人が語る、小百合さん&ロケ地の魅力。

たっぷりお楽しみください。

(以下、敬称略)

* * *

品田/阪本監督は「どついたるねん」という映画でデビューされて、わりとハードな作品を作る方。とりわけ初期のころはそうだったと思いますけれど、途中から何でもやる監督になりまして、「魂萌え!」なんて映画もありましたね。

阪本/はい。

品田/あれなんか非常に良かったと思うのですけれど、今度は「北のカナリアたち」。これが、一番手間も時間もかかったのではと思いますが、いかがですか。

阪本/準備期間、撮影日数、すべての行程が経験したことのないスケールでした。「亡国のイージス」という映画もありましたけれど、あれよりひと月ほど長いロケだったので、僕にとっては初めてのことがたくさんありました。

品田/しかも、これやっぱり女性が中心の映画ですよね。違いますか?

阪本/吉永さんを主演にしていますから・・・。

品田/それから、スタッフ・キャストをみると原案が女性、とか。音楽が女性とかね。

阪本/脚本もそうですね。

品田/そう考えると、女性の力、想いが強く出ている作品で、それを阪本監督が非常にうまくまとめられているのではないかと思うのですけれど・・・こう言ってしまうと、返事のしようがないですかね(笑)。

阪本/(笑)。でも、原案の湊(かなえ)さん、脚本の那須(真知子)さん、音楽の川井(郁子)さん、主演の吉永さんを含めて、皆さん勇ましいです。

品田/へぇ!そうですか。

阪本/はい、あの変な言い方ですけれど、男前な女性陣ですね。

品田/それは面白い見方ですね。すると、そうした女性たちを前に、監督もやりがいがあったのでは?

阪本/そうですね。振り返ると、(撮影の)木村(大作)さんと僕が少数派のような気もします。

品田/でも、阪本監督も木村さんも強い方ですし、頑張って対抗したんですよね(笑)。

阪本/大作さんは、誰が相手でも変わらないと思うんですけれど(笑)。僕は、企画を読んだ時は気付かなかったですけど、現場で吉永さんが、あまり言葉を尽くさない「・・・」の中に、そういう女性の方々の世界観が込められているのかなと思ったりしました。

品田/私は、これは女性映画だなと思って観ました。それともうひとつ、女性映画というとあたりが柔らかい感じがしますけれど、舞台になっている「北宗谷」という土地柄が、非常に美しく、自然が厳しい。そういうところが、女性映画との組み合わせとして面白く観ました。


(C)2012「北のカナリアたち」製作委員会

阪本/大作さんがいつもおっしゃる「厳しさの中にこそ美しさがある」「そこに佇める女優さんはそういない」という言葉を思い出します。僕たちも、自然に拮抗することはできませんけれど、自然を相手にある種闘わないと映画は撮れませんでした。それが美しさを呼んだということなんだと思います。

品田/撮影は長期間にわたったと思いますが、「北宗谷」の風土感はいかがでしたか。

阪本/雪が降る場所でのロケだと、山形県の庄内地方でも雪のシーンを撮ったことがあるんです。だから、似たような格闘はありましたけれど、今回は海端のロケが多かったこともあって・・・。

品田/こちらは、雪が横に降るような?

阪本/横もありましたし、下からもありました。氷柱が横にできているのを見て、僕たちはびっくり。同じ雪国に暮らすと言っても、北陸地方とは全く違うな、と感じました。その中に人々の営みがあって、たぶん気質も違うんだろうな、とも。みなさん優しくて協力的ではあるんですけれど、何か、「風に吹かれないようにする」という「芯」みたいなものは、他の雪国と違うのかなと思いました。

品田/なるほど。北宗谷は、利尻、礼文、サロベツでもお撮りに?

阪本/はい、豊富町で。

品田/私はこの辺の遠別で生まれ育っているので、映画を観て、なんだか懐かしかったんです。だから、ほかの方の感想とはちょっと違うかもしれません。「俺が生まれたところとすごく似ている」と、そこで感情移入しちゃった感じもあったんです。でも、撮影は大変だったんじゃないでしょうか。

阪本/覚悟はしてきたんです。みんな防寒着に金をかけて(笑)。僕は、初めて「目だし帽」を被りました。

品田/犯罪者が被るような(笑)。

阪本/ええ。それにゴーグルも。で、みんながその恰好なので、誰が誰か分からなくなりました(笑)。地元のお母さんはヤッケ一枚で、「今日は風がなくてよかったね」なんて言うんですけれど(笑)。でも、「いいもの撮れてるな」という実感はありましたね。

品田/そうですか。


(C)2012「北のカナリアたち」製作委員会

阪本/吹雪が通り過ぎるのを、あるいは、吹雪が向こうから来るのを待ちながら、「これはどこの地方に行っても撮れないものを撮って帰れるな」と。当然、そこに俳優さんがいて、ということですけれど。俳優さんも、暖かい環境でセリフを言うのと、凍えるような中でセリフを言うのでは、絶対にリズムが違う。なにか、予期せぬ生理が出てきたんだと思います。なかなか映画では、「暑さ・寒さ」って表現できないんですけれど、俳優さんには確実に影響を与えていました。

品田/おっしゃる通り、一種の「生きていくことの強さ」みたいなものが、演技で表現されていたような気がしました。そういう点で、まぎれもない北海道の、しかも、北の方を舞台にした映画なんだな、ということが実感できて、その辺出身の者としては大変嬉しかったんです。撮影時間はどれくらいかかったんですか?

阪本/実数はともかく、冬は2か月。フェリーの移動があり、欠航する可能性もあるので、撮影の3日位前には入って1~2日は準備に回しました。それと、夏は7月ひと月、ロケしました。

品田/夏の風景も良かったですね。

阪本/かなり絶景の場所を選びましたから。


(C)2012「北のカナリアたち」製作委員会

品田/私は、この辺出身のくせに、実は利尻・礼文に行ったことがないんです。だから、この映画を観ることで行かせてもらえた気がして、非常にありがたかった。それにしても、礼文島から見える利尻富士、すごくきれいですね。それがすごい発見でした。

私はサロベツより少し南で生まれたので、天気のいい日に浜へ出ると、斜め右の方に利尻富士がきれいに見えるんです。ただ、礼文は見えない、陰になるんです。それでも、利尻富士が美しいことは子供心に感じました。そういうところで育まれた感性みたいなものと、この映画の風景が一致して、「あ、これは俺のふるさとだ」という個人的な感想を持ちました。そういう意味でも、これを企画した東映に感謝すべきか、作った阪本監督に感謝すべきか分かりませんが(笑)、非常に嬉しい気持ちがあります。あ、質問しなければいけないんですね、阪本さんに。

阪本/いえいえ、別にいいです(笑)。

品田/わりと阪本監督は男っぽい作品を作ってきたような傾向がありますけれど、フィルモグラフィーだと、私は「魂萌え!」が好きなんです。この作品は、女性が重要な役割を果たしています。半端な女性ではない、強い女が出てきます。それが「阪本流」だと面白く観ました。なんというか、弱虫は出てこないですよね、阪本さんの映画には。

阪本/以前、「どついたるねん」で相楽晴子さんにやってもらった役とかは、女性から観ると「男のしもべみたいで許せない」みたいな見方がありましたけれど。ただ、今回の吉永さんの役も、「魂萌え!」のときもそうですけれど、映画作りにおいて、男優さんは幾つになっても役割があるじゃないですか。一人の人間であるという役割が。でも、女優さんはある年齢を超えると、誰かのお母さんとか、誰かの妻とか、そういう役割になってしまって、ちょっと存在のエリアが狭いんです。

「魂萌え!」は、妻でも母でもあるんですけれど、一人の人として何かを考え、行動に移す、という役でした。今回の(吉永さん演じる)はる先生も、子供はいない設定ですけれど、誰かの妻、誰かの娘、に加えて、一人の人として、発見があったり、行動に走ってしまったり、という役どころ。そういうところまでないと、僕はなかなかやる気がしないんですね。家族が家族のまま、母が母のまま、妻は妻のまま、というのはどうも。

品田/ひとつの人格を主張しないといけないわけですね。

阪本/僕は男の映画が多いですけれど、主役が男優さんの場合、「あこがれ」として見るんです。「こんな傍若無人でも愛されればいいな」とか。ま、赤井英和さんですけどね。でも、女優さんの方は「もし俺だったら・・・」と置き換えられるんです。なぜかわからないですけれど。今回のはる先生にしても、僕と何の重なり合いもありませんけれど、「もし俺がはるだったら」とアプローチできるんですね。それが正しいかどうかは別にして。

品田/それは面白いですね。うん、でもそれでいいんじゃないですかね。つまり、それは人格を主張しているということだと思うので、女か男かは関係ない。たまたまそれが女性だったということではないかなと思いますけれど。吉永小百合さんはどうでしたか。

阪本/「清楚で品があって、少女のようなところもある」というイメージ通りだったのに加えて、「勇ましい」というか、男前的な面を感じました。一本の映画に立ち向かうときの、あの方の強固な意志というか。それは、吹雪の中でも決して座らず、ずっと立っている姿もそうでしたし、一つ一つのシーンについてちょっとした迷いがあれば、必ず僕に「こうしたい」「これでいいのだろうか」と相談する姿もそうでした。何も諦めず、何かのノリで話すのではなく、「ちゃんと自分の中で決めておきたい」という彼女の姿勢には、座長の意識を感じました。


(C)2012「北のカナリアたち」製作委員会

品田/なるほど、座長ね。やっぱり、一本の映画を背負っているんですね、あの人はね。一見よわよわしそうな感じがしますけれど、強靭な方なんですね。

阪本/それは、もちろん長い俳優人生の中で培ったというのもあるでしょうけれど、「キューポラのある街」とかを見直すと、「もうこの時からあるな」とも思います。チンピラの中に飛び込んでいく姿、弟を励ましたりする芯の強そうな眼差しって、演技なんでしょうけど、十幾つの時からあったんだな、と。

品田/子どもの時から変わっていないということですね。私より若い世代だと、「サユリスト」「コマキスト」とかいう好みもありましたけど、私はそれに与せず、両方いい派(笑)。吉永小百合さんは一見、「まぶしそう・ひよわそう」みたいな感じがあるけれど、実は非常に強い女、強い人間なんだと思っていました。それが、女優としての年輪をどんどん積み重ねて今日に至り、今度の映画を観ても、やっぱりそう痛感しました。

若いころ、吉永さんのお父様と一席ご一緒させてもらったこともあり、私は吉永さんに特別な想いを持ってずっと見てきました。ときどきコメントを求められると、ちょっと厳しいことも言ったりして・・・。たとえば、「吉永小百合はいつまでも吉永小百合を演じちゃいけない」とか。そのせいか東映の社長は「品田は吉永小百合を一度も褒めてないんじゃないか」なんて言ってますけれど(笑)、そんなことはないんです。密かな味方なんです。でも本当に頑張ってますね、あの女優さんは。えらいと思います。

(つづく)

品田コレクション整理を始めました

9月のミュージアム開館一周年記念イベントに

ゲストでお越しいただいた映画評論家・品田雄吉さん。

実は、雄吉さんが映画好きになるきっかけを作ったのが、

この実兄、故・品田平吉さんとのこと。

その平吉さんの遺した大量の映画コレクションを

ミュージアムでは保存しています。

先日、その品田コレクションの整理を始めました。

この日参加してくれたのは、北海学園大の学生さん3人。

最初の作業は、書籍の分類です。

図書分類法に基づいて分類し、シールを貼った後、

パソコンにデータを打ち込みます。

こうしておけば、検索する時に便利な上、

いつか図書機能を増やす時に活用できるのです。

実は、ミュージアムに置いてある

「シネマの本棚」の約300冊も、

「キネマ旬報」などの雑誌も、すべて分類済み。

竹岡さんのご自宅に所蔵している

大量のコレクションも、すでにその作業を終えています。

いつか、この数えきれない映画の〝宝物〟が

共有財産として公開・活用できる日を夢見て。

品田コレクションの整理に励もうと思います。

警友会滝川支部ご一行がご来館!

風も冷たく、秋めいてきた札幌です。

さて、今月は団体見学が相次いでいます。

14日(日)には、

「警友会滝川支部」の方々がご来館くださいました。

佐々木純副理事長がご案内。

代表の方によると、新聞でミュージアムのことを知り、

ネットで調べたところ、ホームページを発見。

その内容(ブログもチェックいただいたとのこと!)から

意気込みを感じ、訪問を決めたとか。

熱心にご覧いただき、ありがたいですね。

「北海道に関するこういった施設は残していくべきですね。

もっと多くの方に知ってほしい。また来ます」と、

嬉しい感想もいただきました。

佐々木副理事長ら理事たちが

10年以上続けたミュージアムの活動が、

拠点ができたことで、より多くの方へ届くようになりました。

こうした輪の広がりが、ミュージアムの意義を深めるのだと実感します。

わっかない映画祭レポート②

稚内でも撮影され、11月3日に公開される

吉永小百合さん主演の最新作「北のカナリアたち」。


(C)2012「北のカナリアたち」製作委員会

公開記念に初めて行われた

「わっかない映画祭」(10月6~8日)レポートのつづきをどうぞ。

* * *

時刻は午前7時を過ぎ、次の作品は

「長崎ぶらぶら節」(2000年、深町幸男監督)。

長崎・丸山を舞台に、無償の愛に生きた

芸者の人生を描く文芸ロマン(個人的に気に入りました!)です。

そして6本目は、「夢千代日記」(85年、浦山桐郎監督)。

奇しくも連続して、芸者姿の吉永さんを見ることになりました。

上映する6作品を見終え、休憩がてら外へ。

せっかくなので、稚内ロケのゆかりの地に向かうことに。

稚内ロケといえば・・・

「樺太1945年夏 氷雪の門」(74年、村山三男監督)

「南極物語」(83年、蔵原惟繕監督)でしょう。

映画祭実行委員の方からいただいた

「フットパス」を手に、目指すは稚内公園です。

稚内公園へは、映画館から歩いて約30分。

商工会議所を曲がり、神社の境内を通ります。

この日は秋晴れとなりましたが、さすが稚内。

海風が冷たく、防寒具がないとちょっとつらい寒さです。

標識に沿って、石畳の階段を上ります。

途中、稚内港が一望できるスポットもありました。

到着すると、目の前にそびえたつのがこの像です。

稚内のシンボル的存在、「氷雪の門」。

日本領だった樺太で亡くなった人たちのための慰霊碑で、

宗谷海峡の先のサハリンを向いて建っています。

傍らには、「九人の乙女の碑」も。

こちらは、終戦時、樺太の真岡郵便局で

通信業務を死守しようとした9人の女性の慰霊碑。

このエピソードを映画化したのが、「樺太1945年夏 氷雪の門」です。

園内には、こんな碑も。

「南極観測樺太犬訓練記念碑」。

台座には、南極で採取した白い石が埋め込まれているとか。

こちらは、犬ぞりの訓練所跡地を記念した

「樺太犬供養塔」です。

第一次南極観測時、悪天候のため

やむなく基地に置き去りになり、

一年間を生き抜いた樺太犬・タロとジロ。

この実話を、高倉健さん主演で映画化したのが

「南極物語」でした。

※ちなみに、「日本最北端の地」がある宗谷岬は

大島渚監督の「少年」(69年)のロケ地にもなりました。

そんなゆかりの碑を見て回り、次に向かうのは・・・

「北のカナリアたち」のロケ地です!


(C)2012「北のカナリアたち」製作委員会

映画祭実行委員の方に聞いたところ、

稚内ロケは多くないものの、

ある場所で、吉永さんのシーンが撮影されたとのこと。

稚内公園から駅に戻り、国道を歩くこと約15分。

目的地「副港(ふっこう)市場」に到着。

ここは、市場や天然温泉、食事処などが集まった複合施設。

国道の反対側は海に面しており、

その辺りが、ロケ地に使われたそう。

(もしかしたら、このシーンかもしれません ↓ )


(C)2012「北のカナリアたち」製作委員会

そんなこんなで陽も暮れて、お待ちかねの

「北のカナリアたち」阪本順治監督と

映画評論家・品田雄吉さんの対談の時間に!

対談の詳細は次回にご紹介します。

(つづく)