北海道 ロケ地の風景

物置小屋に使われていた札幌市内の古いマンションから、内田吐夢監督「森と湖のまつり」(1958年、東映)のロケ当時の様子を撮った写真が20枚ほど見つかりました。P1040010

映画は雄阿寒岳から阿寒湖を望むパノラマを映し、釧路管内標茶町の塘路湖畔や同町荻野の原野で2か月かけてロケ撮影されました。高倉健、香川京子、三国連太郎が出演。これらのスターたちを捉えたスナップ写真、キャスト、スタッフらの記念撮影写真も残っています。

写真のなかには、塘路駅待合室で香川京子に演技を付けたり、原野に組まれた櫓の上で、カメラの傍に立つ吐夢監督の姿があります。当時の映画ロケの様子を伝える貴重なものです。

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また、吐夢さんの著作「映画監督五十年」も一緒に保存されていました。これらを出来るだけ早く整理して「ロケ地の風景」としてミュージアムで公開しようかと思っています。今日ミュージアムに運び込んで、床に並べ、作戦を練っています。(この項文責・喜多義憲)

「想像の扉を開こう」崔洋一監督が北海学園大で講演

「月はどっちに出ている」、「血と骨」などで知られる崔洋一監督が28日、「映画と地域づくり」と題して北海学園大(札幌市豊平区)で特別講演しました。

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崔監督は10年以上前から、胆振管内穂別町(現むかわ町)で高齢者映画作りを指導しています。講演では穂別の人たちとの出会いから、映画づくり支援に至るプロセスを語りました。

崔監督は旧穂別町からマザーフォレスト大賞を受け、その懇親会で「おらたちにも映画創れるべか」と聞かれ、「ああ、つくれるとも、やってみなさいよ」といったやり取りから始まった高齢者の映画製作。戦前・戦後を通じ穂別町で生きる夫婦の姿を描いた第1作第1作「田んぼ de ミュージカル」(2003年)が完成する過程で、お年寄りたちは「想像の扉」をひらき、自己を確立し、どんどんと元気になり、変化していったといいます。

また、映画作りのプロセスを楽しむだけでなく、あくまで優れた作品に仕上げるよう励ましたといいます。そして、映画を作っている途中では死なないーこの二つの目標を一言で表わして「棺桶よりカンヌ(映画祭のこと)」を合言葉にしたといいます。

穂別の高齢者たちは崔監督とかかわったこの11年間ですでに4作のミュージカル映画を生み出し、いま5作目に取り組んでいます。崔監督は日本の動脈や静脈を支える、こうした地方の個性豊かな、細胞や毛細血管のような活動を大切にしなければいけないと提言しました。

北海学園大学開発研究所・同大経済学会の主催。キャンパス内の5号館教室で開かれた講演会には学生のほか映画愛好家らが熱心に聴講しました。

崔洋一監督は日本映画監督協会理事長。長野県佐久市出身、64歳。

(この項、文責喜多義憲)

米国からきた若い2人

北の映像ミュージアムのキタです。1週間ほどイギリスに行っていて昨日帰札、久しぶりに当番をしてます。午後1時過ぎ、アメリカ人男性の若い2人連れが来館しました。ルイジアナのクリスとフロリダのピーター。軍人で千歳の自衛隊基地で打ち合わせがあって5日前に来道、あと20日間ほど滞在するとのこと。特別展示「シネマの風景 北の歴史編 炭鉱と鉄道」に関心をしめし、視聴覚コーナーでDVD「昭和のSL映像館 北海道編」などを見ていました。

IMG_5878SLのDVDを見るクリス(右)とピーター(真ん中) IMG_5881フロリダ・タンパ出身というピーターに、「タンパはプロ野球のスプリングキャンプ地として有名ですね」と水を向けると、「そう、主にニューヨーク・ヤンキースね。でもぼく、ヤンキースは好きじゃない」。クリスは「ルイジアナにはプロ野球チームはないけどテキサス・レンジャーズの本拠地が近い。みんなダルビッシュが大好きだよ」と教えてくれました。

帰り際、日本語で書かれた「募金箱」を目ざとく見つけ、協力してくれました。この種の施設はどの国でも来場者の浄財に頼るところが大きいことをちゃあんと知っているのは、西洋文化なのか、と感心しました。

IMG_5882北の映像ミュージアムに置かれた募金箱。来場者のおキモチが嬉しい

 

映画館に蛍が飛んでいたーウラ・ワダとーくに爆笑

きょう16日の昼下がり、北の映像ミュージアムで月例の北のシネマ塾が開かれました。「8ミリと映画館グラフィティー2」と題し、8ミリ映画「忠臣蔵」などを見た後、街並み画家浦田久さんとエッセイスト和田由美さんの映画&映画館トークを楽しんでいただきました。

DSC_0137 ▲熱心にトークに耳を傾ける映画ファンたち

 

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8ミリの「忠臣蔵」を皮切りに、古きよき時代の映画&映画館を語り合うウラ・ワダコンビ、浦田久さん(右)と和田由美さん

予定では「忠臣蔵」(1958年、大映作品)を30分の8ミリ映画にまとめたものを上映するはずでしたが、事前にテスト映写すると、最初の10分ほどの映像状態が悪く、松の廊下刃傷の場までをカットし浅野内匠頭切腹の場から討ち入りまでを上映。その代わり無声映画チャップリンの誘拐船」(1915年作品=約15分)を追加上映しました。

忠臣蔵は途中からみても、ちゃんとストーリーが分かりました。いかに日本人の心に沁みついているかをあらためて実感しました。

きょうはハプニングで邦画の後に洋画を見ていただきましたが、浦田さんによると、昔は一つの映画館で洋画と邦画を2本立てにすることがざらにあったといいます。これは驚きです。

トークの中で、浦田さんは「昔、映画館にはホタルがとんでいましたねえ」。「ええっ、そんな風流なことがあったのか」と思わせたあと、「いまのような入れ替え制でなく、いつでも自由に入ったり、出たりできたから、真っ暗の中に入ってきた観客を懐中電灯で席に誘導する案内嬢がいたんですよ」と種明かし。フロアから「なるほど」と爆笑が起きました。

和田さんは「子供のころ、映画館の中でお菓子を買ってもらうのが楽しみだったが、大人が美味しそうに食べているホタテの干物は決して買ってもらえなかったのを今も思い出します」と振り返る。「食い物の恨みはおそろしい」と落ちをつける浦田さん。

2人の絶妙の掛け合いの原動力は、共に映画がなによりも好きという共通点であることがよくわかります。事実、浦田さんは打ち合わせの時、「和田さんとトークをしていると、次々と昔のことが思い出される。ほんとに聞き上手です」とおっしゃっていました。

トークで浦田さんは映画づくりに苦言も。「昔の作品は1時間の枠内で起承転結、無駄なくきちっとまとまっていたが、今の映画は総じて2時間以上。だらだらと長すぎるものも多い」。私(喜多)もそう思います。

8ミリ上映のあとに続くこのシネマ・トーク、勝手にウラ・ワダ(裏技ではありません)とーくと名付けてみました。来年も「北のシネマ塾」のシリーズの一つとして続けていただく予定です。お楽しみに。

なお次の「北のシネマ塾」は12月21日午後2時から、高村賢治さん(当NPO理事で、稀代の映画通)のトーク「アフリカの光」です。これもお楽しみに。(この項、文責・喜多義憲)

 

16日午後2時、8ミリで忠臣蔵を

毎月第3土曜午後2時から開いている北のシネマ塾。今週土曜16日は、「8ミリと映画館グラフィティー2」その② を開催します。会員、一般市民のご来場をお待ちしています。 トークは街並み画家の浦田久さんと、エッセイストで北の映像ミュージアム事務局長理事の和田由美。トークの前には8ミリ作品「忠臣蔵」(大映)の一部を見ていただきます。映画フリークを自他ともに認める2人、日本人なら、この吉良、浅野の確執、討ち入りを見ずして年の瀬を迎えられないという銀幕黄金時代を振り返ってどんなトークを展開してくれますか。北のシネマ塾で上映する8ミリ映写機は浦田さんの寄贈によるものです。入場無料。

忠臣蔵のキャストは大石内蔵助に長谷川一夫、浅野内匠頭に市川雷蔵、ほかに鶴田浩二、勝新太郎、女優陣に京マチ子、山本富士子、小暮実千代、淡島千景、若尾文子。吉良上野介には後年、NHKテレビの大河ドラマ「赤穂浪士」でも長谷川・内蔵助と吉良役で共演する名優滝沢修。1958年作品

 

ロシア娘がやってきた

きょうは中身の濃い来館が相次ぎました。中身の濃いって?  こちらが「こんにちわ」と声をかけても目を合わさず、答えもなし、館内をチラ見してすぐ立ち去る人。この逆の人を「中身の濃い」とわたしは心の中で定義付けしています。川北歩こう会、横田昌樹さんについで、午後にはロシア・シベリアのノボシベリスク市から札幌に滞在中というエレーナ嬢(大学院生)が来てくれました。

DSC_0120          ▲シベリア・ノボシベリスクからのお客さんエレーナ(左)と案内人キタ。ツーショットは役得です

剣道、柔道など武道の研修で2週間、札幌に滞在。あす帰国する前に、映像ミュージアムがホテルの近くにあるのを知ってやってきたといいます。

英語がまあわたしくらいの力なので、会話が成立しました。聞くとロシア語字幕で小津安二郎監督の「東京の女」(彼女この部分は日本語で「トーキョーノオンナ」といいました)、黒澤明の「七人の侍」「羅生門」(これはなんとかゲートと言ったのでわたしはははん、と理解)を見たというから相当な日本映画フリークといえましょう。

文学では三島由紀夫のゴールデンテンプル(金閣寺でしょう)と「なんとかwave」(潮騒のことではないか)をロシア語訳で読んだ。村上春樹も知っている、などなど。

わたしはまず、この映像ミュージアムの誕生した由来と背景を説明。ついで館内に映画「白痴」に絡む黒澤明の直筆の手紙が展示されているのを見せ、「白痴」というタイトルを英語で説明しようとしてはたと困ってしまいました。「Foolishness」などと、でたらめな単語をいうと、理解したらしくドストエフスキーの原題(ロシア語)を言ってくれました。「イディオット」と彼女は言ったので、あとでインターネットで調べるとたしかに白痴Идиотとありました。

1時間ほど滞在したあと、「ミュージアムがなかなか見つからなかったが、来てよかったアリガト」と言って帰って行きました。

彼女にとって外国に出るのはこれが初めて、来年も札幌に来る予定があるので、また来ます、と言っていました。

この日のわたしの当番は午後2時で終わり。あとを引き継いでくれた学生ボランティアの加藤君によると、最近札幌でロシアの学生を対象にしたスポーツの研修がよくあるそう。加藤君自身テコンドーをするという。

わが北の映像ミュージアムもロシアからの来訪を視野にいれた対応も必要かもしれません。

白石区川北歩こう会のみなさん来館

きょう11月10日、札幌白石区の川北歩こう会(鈴木認代表)の久保田隼斗さんら一行7人が来館。特別展示のシネマの風景 北の歴史編「炭鉱と鉄道」や、常設の道内ロケ地マップなどを見ていただきました。

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川北歩こう会のみなさん

 

7人は、館内を熱心に見て回ったあと、ドキュメント「北海道100年記念式典(1968年、HBC)などDVDを鑑賞しました。

ブラジル映画祭の人気3作品を上映@東京・虎ノ門

期間限定アウトドアパーク「トラヨン(MORI TRUST GARDEN TORA4)」内のGarden Theater in 虎ノ門四丁目(日本初の移動型映画館MoMO[Movin’ on Movie Oasis])で、11月15日から3日間、ブラジル映画祭2013の人気3作品を上映します。
詳細は
 上映作品と、上映開始日時は下記の通り。チケットは当日券のみ。1000円(チケットに関する問い合わせ:電話 03-3431-6777)。
15日(金) 13時~『ぼくらは“テルマ&ルイーズ”』
16日(土) 15時~『サントス~美しきブラジリアン・サッカー~』
17日(日) 15時~『ゴンザーガ ~父から子へ~』
  ※強風・大雨の場合は、気象庁の勧告により上映中止になる場合あり。
17日の『ゴンザーガ』の上映では、音楽ライターで演奏家ケペル木村さんによる作品解説トークショーがあります。

「先祖になる」池谷監督からのメールです。

ドキュメンタリー映画「先祖になる」の池谷薫監督からのメールです。「転送大歓迎」とありますから、当北の映像ミュージアム」のスタッフブログに転載させていただきます。これを御覧になった方々もどうぞ、拡散してください。「先祖になる」北海道での劇場上映はまだ苫小牧だけ。せめて自主上映の鎖を広げていってほしいと願わずにはおれません。いい作品です。(この項、文責・喜多義憲)

以下、池谷監督のメールです。

初の地元開催となった大船渡リアスホールでの上映(11/4)には600人もの方々が詰めかけてくださいました。 上映中の雰囲気もこれまでで最高で、お客さんの心の動きがあのように素直に伝わる上映会は初めての経験でした。 スクリーンに映し出される直志さんの一挙手一動に客席から囁き声がもれ、ユーモアあふれるシーンには爆笑の渦が。 そして、けんか七夕の若者の絶叫には会場のあちらこちらからすすり泣く声が聞こえました。

お客さんの中には今も仮設住宅での暮らしを余儀なくされている方も多くいらっしゃったのですが、 上映後、皆さんから「元気をもらった」と言っていただき、この映画をつくってよかったと心の底から思うことができました。

これも上映を支えてくれたすべての皆さんのおかげです。この場を借りて厚く御礼申しあげます。 『先祖になる』が被災地の皆さんを少しでも元気づけることができるなら、それがこの映画の使命だと思っています。 震災を風化させないためにも全国で上映活動をつづけてまいりたいと思います。

感謝を込めて 池谷 薫

『先祖になる』公式サイト http://senzoninaru.com/

きょう4日(月)は開館しています。

きょうは3連休最終日。月曜ですが、開館、明日振り替え休館します。まずまずの天気で、豊平右岸の自宅から自転車で出発、テレビ塔の下から道新の前を通って北1条通りに出、西へまっしぐら。20分足らずで映像ミュージアムに着いてしまいました。

明日5日午後6時半から、ホテルオークラ札幌で発売したばかりの拙著「アジア群島人、生きる」(亜璃西社刊)の出版祝賀会を映像ミュージアム仲間の和田由美さんらの手で開いていただくことになっています。北は稚内から南は岐阜まで友人、知人127人が出席してくれる、夢のような宴になりそうです。

このところ、その準備に気を取られ、このスタッフブログもなかなか更新できません。

ひとつ残念なことがあります。静かすぎる映像ミュージアムに品のよいスクリーンミュージックを掛けて入館者をおもてなししようと、7月頃か、自宅から古い(1998年にシンガポールで購入)tannoyのブックシェルフ型のスピーカー、DENNONのCDデッキ、YAMAHAのAVアンプをもち込みました。

ところが、最近当番日に来てCDを掛けると、向って左のスピーカーの音が割れる。グリルを外してコーンに手を当ててみると、音の割れが軽減される。それでは、とコーンにセロテープを貼ってみると応急手当しないよりはまし。でもいつまでもこのままにしておくことはできません。スピーカーを奮発するかなあ。いま、クロード・ルルーシュ監督の「男と女」を聴いています。(この項、喜多)