山田勇男監督インタビュー

先日ミュージアムにお越しいただいた山田勇男監督。

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インタビュー記事を、シアターキノHPにアップ致しました。(記事はコチラ

北海道でロケされた「アンモナイトのささやきを聞いた」についても

少しお話いただいています。

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(C)ユーロスペース

ミュージアムとのコラボ連載企画「応援!北の映像作家たち」です。

どうぞご拝読ください!

芦別ロケ「野のなななのか」、道内5か所で凱旋上映!

大林宣彦監督がメガホンを取った

芦別ロケ「野のなななのか」。

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©2014 芦別映画製作委員会/PSC
配給/PSC TMエンタテインメント

東京・多摩市で11月に開催される

「第6回TAMA映画賞」の最優秀作品賞にも選ばれました!

おめでとうございます!

現在も全国各地で上映される中、道内5か所での凱旋上映が決定!

●10月25日(土) 滝川市
13時、17時半/ホテル三浦華園(滝川市花月町1丁目)

●26日(日) 愛別町&赤平市
10時/愛別町総合センター(愛別町字本町)
18時/赤平中央会館(赤平市本町1丁目)

●27日(月)  旭川市
15時半/大休寺ホール(旭川市5条通5丁目)

●28日(火) 芦別市
13時、17時半/芦別市民会館(芦別市北1条東2丁目)

※各会場とも開演の30分前に開場。滝川・芦別は各2回上映。

映画の上映に加え、大林監督による舞台あいさつもあり!

野のなななのか

見逃した方、もう一度観たい方、この機会にぜひどうぞ。

入場料は1000円(当日券は1300円)。

「野のなななのか」製作委員会事務局(電話・FAX0124-23-1001)

で受け付けるほか、26日の愛別町上映分は

愛別町政策企画室(01658-6-5111)でも受け付けます。

お問い合わせは、事務局へ。

あす、札幌ロケ「この砂赤い赤い」上映!

札幌市資料館などでロケされた短編映画「この砂赤い赤い」が、

あす11日(土)午前10時から、札幌プラザ2・5で上映されます。

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現在開催中の札幌国際短編映画祭のプログラムとして、

札幌ロケ「命の樹」「茜色クラリネット」(予告)と共に上映されるそう。

当日は早川渉監督のほか、中高大生のキャスト・スタッフも登壇。

札幌国際芸術祭の一環として「都市と自然」をテーマとし、

知里幸恵さん編訳の「アイヌ神謡集」の一編を題材に作成。

アイヌの少年と悪魔の少女の出会いと対決が描かれるそう。

教育フォーラムとして入場無料なのも嬉しい点!

ぜひ会場へ足をお運びください。

詳細はコチラ

呉美保監督インタビュー!

第38回モントリオール世界映画祭で最優秀監督賞を受賞した、

函館が舞台の「そこのみにて光輝く」(呉美保監督)。

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(C)2014佐藤泰志/「そこのみにて光輝く」製作委員会

第87回アカデミー賞の外国語映画賞部門出品も決まり、

ますます注目が集まっています。

その呉監督の次回作は、小樽ロケの「きみはいい子」!

今夏、撮影を終えたばかりの監督に、

ミュージアムの高村賢治理事が突撃インタビューさせていただきました!

* * *

高村理事(以下、高村)/北海道を舞台にした作品は、今年6本、アニメも2本ありまして、そのうちの一作が、函館で撮影された監督の「そこのみにて光輝く」です。映画の作り手として、ロケ地・北海道は特別魅力的に感じるのでしょうか。

呉監督(以下、監督)/個人的に北海道は大好きですけれど、映画を作ることに関して、とりたてて〝贔屓〟しているわけではありません。「そこのみにて光輝く」の場合、原作者の佐藤泰志さんが函館出身で、小説も函館をモデルに書かれたものですから、撮影場所も函館以外ではありえなかった、ということです。 今回の「きみはいい子」は、原作の舞台が「坂のある街」。そこに、おばあちゃんが住んでいたり、子供たちが住んでいたり、新しい家、古い家が混在していて、大きなマンションや埋め立てられた場所がある、という設定です。そういう、ある種「どこにでもある街」の、普遍的な部分の表現が必要だと思いました。 「どこにでもある街」がテーマではありますが、映画ならではの印象的な「画」にしなければいけません。そこで、全国各地の「坂のある街」をリサーチする中、小樽を選ばせていただいたというわけです。

高村/具体的に小樽のどんな点が良かったのでしょう。

監督/新旧の市街地の中に、ほどよく坂道がある雰囲気。昔からいろんなものを寄せ集めて、ペタペタと貼り尽くした街としての風情が気に入りました。さらに、マンション群がある場所にもう動かない観覧車があって、それも決め手になりましたね。

高村/「そこのみにて光輝く」を観たとき、非常にフランス映画のタッチに近いな、と感じました。フランソワ・トリュフォーの「柔らかい肌」やレオス・カラックスの「ポンヌフの恋人」などを、もしかしてお好きなのでしょうか。

監督/そんなに思慮深くないです(笑)。けれども、もちろん作品も見ていますし、大好きですよ。今回の場合、スタッフたちと(主演の)綾野剛さんのどこか浮世離れしたような、人を惹きつけるような魅力を引き出そうとしました。その結果のカメラワークやライティングが、そういう世界を創り出したんだと思います。たとえば、トップカットで綾野さんに寄ったのは、観客をグッと掴むため。言わば、綾野ファンへのサービスショットと言えるかもしれません(笑)。

高村/なるほど。あと、サウンドも素晴らしかったです。たとえば海の音だけ聴こえる中、会話があるかないか・・・というような浜辺のシーン。あの辺は、フランソワ・トリュフォーの「大人は判ってくれない」のラストシーンにも通じる気がします。

監督/言われてみれば、という感じですね。特定の映画を意識はせず、感覚的に「このシーンはこういう気持ちをこう撮りたい」と伝えています。ただ、あのヒロインが住む海辺は、ヨーロッパの鄙びた雰囲気だな、と感じました。対する主人公の男が住む繁華街は、アジアの香りがして、そういう差はつけられるんじゃないかという話はしました。

高村/そうですか。また、面白いなと思ったのは、食べ物のシーンです。「そこのみにて光輝く」の場合は、チャーハンに始まり、焼肉などが出てきて、「食」が「人と人を結びつけるポイント」のように描かれています。今回の「きみはいい子」も、原作ではホットケーキなどの食べ物が出てきますね。

監督/確かに、それは意図しています。下手なセリフよりも食べ方や食べ物を撮る方が、キャラクターを描けることがあるんですよね。私自身、食べ物が映画で出てくると、観ていて楽しいんです。お腹が空くということは、生きているということですから。 今回(「きみはいい子」)なら、学校の給食とか孤独な老人が食べるご飯、家で作るホットケーキ・・・そういうものがまさに、人の育ちを表すことになると思います。様々な立場の人が登場するので、その多面さは食べ物で表現できる面もあると思います。

高村/今回は、家庭崩壊や友達関係、家庭内暴力などたくさんのテーマが散りばめられていますが、それをどのように訴えるのでしょうか。

監督/確かにこの作品は、虐待、ネグレクト、学級崩壊、認知症、自閉症などの社会問題を扱っていて、すごくヘビーなことに私自身挑戦しようとしていると思います。けれど、それらを仰々しく問題提示するとか、警告するようなつもりはありません。その原因を問い詰めたり、悟ったように解決策を説明しても、観客の心には響かないと思うんですね。ただ、そういうことを考える中で、ひとつのヒントが、原作には詰まっていると思うんです。それは、「人は、人で救われる」ということ。本当に辛くてしんどい時、人は、誰かの言葉だったり、誰かとの関わりの中で救われることがきっとある。ささやかなことですが、そうなれたらいいな、というところまで、映画で表現できたらいいなと思っています。

高村/ありがとうございます。余談ですが、戦前から現在まで、北海道で映画を撮った女性監督は呉監督で9人目なんです。第一人者は「乳房よ永遠なれ」の田中絹代さん、次は「遠い一本の道」の左幸子さん。最近は「ハルフウェイ」の北川悦吏子さんなどがいます。中でも、北海道ロケを2本撮ったのは、「しあわせのパン」「ぶどうのなみだ」の三島有紀子さんに次ぎ、2人目なんです。ということで、最新作「きみはいい子」、楽しみにしています。

監督/ありがとうございます。小樽は、消火栓や煙突など、見る人が見れば「北の街の風情だな」とわかるくらいに登場します。それが「北の街」であろうが南だろうが、誰にでも起こり得る普遍的な感情の揺らぎを描くつもりです。

監督スチール

「シネマの風景 特別上映会」レポート④~小檜山博さんトーク

北の映像ミュージアム開館3周年記念

「シネマの風景 特別上映会」(9月13日)。

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映画「大地の侍」上映前には、

ミュージアム館長で作家の小檜山博氏が

「本庄陸男と日本文学」と題してトークを行いました。

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内容を要約してご紹介しましょう!

* * *

「大地の侍」の原作は「石狩川」、本庄陸男という作家が書きました。なぜ僕がここに立っているかと申しますと、僕は滝上町に生まれ育ち、そこの炭焼き小屋、貧農の息子。裸足で小学校に通った開拓農家の息子でございます。一方、本庄は滝上の隣町、4km離れた上渚滑に育ち、父親が開拓農家となり、彼も8歳から15歳まで8年間、農家の手伝いをしています。僕も14歳まで農作業をしました。

本庄も僕も、評論家からは「頭で書くんじゃなくて、体で書く小説家が現れた」という評価をされています。なぜかというと、僕等は農作業の経験から「土」というものを知っている。つまり、「土を書ける」という共通点があるのです。

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原作「石狩川」は、非常に暗い書き出しで始まります。徳川幕府から明治政府に変わり、政府軍に負けた武士団が食べるために北海道に来る、その伊達藩のひとつが石狩当別に入る風景の書き出しであります。

その暗さについて、「小檜山さんの『出刃』と同じだ」と言う人がいました。そのはずです。僕が「出刃」を書く前に読んだのは「石狩川」でありました。 「石狩川」は開拓の物語ですが、「出刃」は離農の話です。あれだけ希望を持って武士たちが北海道を開拓したものを、40年後には(実際は100年以上ありますけれど)、土地を捨てて離農し、都会に流民になって出て行かなければならない小説を書かざるを得なかったのです。その理由を、「石狩川」は暗示しているところがあります。

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大地の侍(C)1956 東映

まずは本庄の生涯を振り返りましょう。 彼は上渚滑の小学校を出た後、紋別の尋常高等小学校を出て、14歳で卒業。上渚滑の小学校の代用教員になりますが、まもなく辞め、上渚滑村役場の臨時職員になります。しかし、「何としても金を貯めて東京に出たい」と樺太にわたります。1年弱働き、17歳で上京。青山師範学校を卒業し、東京の小学校の教員になります。その後、勤めながら小説を書いていきました。

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大地の侍(C)1956 東映

23歳の時、年下の女性と結婚しますが、彼が31歳のときに盲腸の手術に失敗して亡くなります。彼女はまだ29歳でした。そうして、今度は亡くなった奥さんの妹と結婚し、彼女に看取られて35歳で死んでいくわけです。 再婚した頃、本庄は肺結核になっていました。「石狩川」を34歳で書き上げ、2か月後には結核で亡くなります。 本庄のお墓は、本人の意志により上渚滑にあります。それは、8~15歳まで農作業に従事した、彼の精神風土がそこで育ったことを証明しているんだろうと思います。

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ここで本庄が当時、日本文学のどういう位置にいたのかということをお話しましょう。

彼は「文学界」など色々な雑誌に書いていますが、当時の仲間を見ると亀井勝一郎、小熊秀雄、伊藤整、田宮虎彦、川畑康成、山本雄三、谷崎純一郎、太宰治、林芙美子…などなど。「石狩川」の帯を書いているのは、「機械」などで有名なあの横光利一です。そういうことを考えても、彼がいかに凄かったかがわかります。本庄がこのレベルにいたことを、残念ながら北海道の人は知りません。

現在、日本から文学は消滅しました。僕の言っている文学は純文学の形をとるわけですけれど。今あるのは、通俗小説であり、大衆小説であり、サスペンスであり、推理であり、人殺しだけです。

それでは、日本に文学の復活の可能性はないのか。あるんです。それも、3つだけであります。ひとつ目は、「沖縄」、ふたつ目は「関西の差別」。

そして、3つ目は、「北海道開拓の問題」なのです。それは、アイヌ民族の問題、開拓者の子孫である我々の問題を含めて、北海道はどうあるべきかが解決されていない、という背景があるからです。我々の中にある自立心のなさ、このことを我々は自分自身に向かって問いかけなきゃいけないと思っています。

そして、この「北海道開拓の問題」を最初に描いたのが、本庄の「石狩川」なのです。 たとえばその後、開高健も「ロビンソンの末裔」で、有島武郎も「カインの末裔」で北海道について書いていますが、「石狩川」を超えてはいないと思います。なぜなら、百姓じゃないからです。彼らは頭で書いているんです。おそらく今までで10万を超える北海道の小説で、「石狩川」を超える作品は一本もないと、私は断言できます。日本文学においても、この小説はやっぱり頂点に立っている気がするのです。

ですから、〝日本文学の最高峰〟といえる「石狩川」を映画化した「大地の侍」をぜひご覧になっていただきたい。我々の先人、本州から来た人が血と汗とで開墾した土地を、なぜ50年、100年で捨てなきゃならなかったのか。食べ物を作っている農民が食べられなくて離農せねばならなくなったのか。これが、本庄が投げかけたテーマなのです。それを皆さんで汲み取っていただければと思います。

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大地の侍(C)1956 東映

NHK朝ドラ「マッサン」エキストラ募集!8日必着

ウイスキーに生涯を捧げたニッカウヰスキー

創業者・竹鶴政孝さんと妻・リタさんがモデルの

NHKの連続ドラマ小説「マッサン」。

地元余市町では応援活動が活発化しているようですね!

そこで楽しい話題を。

今月20~22日、余市と札幌でロケが行われるそう!

エキストラを募集しています。

具体的には、20日(午前7時ごろ~夕方)は余市での撮影で、

男性20~50代、女性20、30代が対象。

21、22日(午前5時ごろ~夕方)は

札幌市内の「北海道開拓の村」で、男女ともに20代以上が対象。

エキストラは登録制でNHKが選考、登録者に直接連絡するそう。

希望者は、余市町HPから申込書をダウンロードし、8日必着で

〒046・8546
余市町朝日町26 余市町役場商工観光課内 「マッサン」応援推進協議会事務局

へ郵送もしくは、直接持ち込むこと。

問い合わせは事務局(0135・21・2125)へ。

北海道ロケ映画の最新資料いろいろ!

雨が降るたび、どんどん秋が深まる札幌です。

さて、ミュージアムでは過去の資料だけでなく、

新しい映画情報も収集しております。

チラシやポスターも随時更新中。

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特にリーフレットコーナーは、

学生スタッフがきれいに整頓してくれています。

どうもありがとう!!

札幌の映画イベントから上映チラシまで、

新しい情報をこちらでゲットしてください。

もちろん、「これを置いてください!」にも対応しております。

北海道ロケに関する映画情報は、ぜひミュージアムへ。

釧路が舞台!桜木紫乃さんの「起終点駅(ターミナル)」映画化

北の映像ミュージアム開館3周年記念

「シネマの風景 特別上映会」のゲスト

直木賞作家・桜木紫乃さんのトークにもあったように、

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釧路が舞台の彼女の小説「起終点駅(ターミナル)」が

映画化されることになりました!

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すでにロケは釧路市や白糠町などで行われているそう。

監督は、篠原哲雄さん。

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函館や夕張の映画祭に参加しており、

小樽・石狩ロケ「天国の本屋~恋火」(2004年)

函館ロケ「つむじ風食堂の夜」(09年)

札幌・夕張ロケ「スイートハート チョコレート」(12年)など、

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北海道ロケも多い方です。

主演は佐藤浩市さん。

尾野真千子さん、本田翼さんが共演し、

来秋、公開されるとのこと。

北海道ロケの話題が尽きませんね。

ミュージアムとしても、こうした新作をチェックしていきます!

「シネマの風景 特別上映会」レポート③~桜木紫乃さんトーク(2)

北の映像ミュージアム開館3周年記念

「シネマの風景 特別上映会」(9月13日)。

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直木賞作家の桜木紫乃さん×道新記者・寺町志保さんによる

「挽歌」にまつわるトークの続きです。 (以下、敬称略)

* * *

寺町/初めての小説体験を詳しく教えていただけますか。

桜木/14歳のころ、実家の1階は床屋と住居。2階がアパートだったんですが、就職で出て行った大学生の部屋を掃除に入ったんです。段ボール箱が置いてあり、少し離れたところに一冊だけ「挽歌」の文庫本がありました。ちょっと読んだら、なんと、自分の生まれ育った町が舞台ではないですか! 掃除もせず、夢中になって読みました。すると次の日から、不思議なことに、今まで何気なく目にしていた町の景色が違って見えたんです。あぁ、これが小説なんだ、と思いました。これが、私の小説体験です。遅かろうが早かろうが、始まりは「挽歌」なんです。

寺町/「違って見えた」というのは、物語のヒロインたちが一緒に歩いているような感じですか。

桜木/ちょっといい雰囲気の大人の女性は「兵藤怜子のモデルかも…」、格好いい男性は「桂木さんかも…」と(笑)。そんな妄想が高じると、こうなっちゃうという悪い見本ですね(笑)。小説は、読んだ後に景色を変える。だから私も、「何かが変わればいいな」と思いながら書いています。

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寺町/私、釧路の帰りに帯広の屋台村で飲んでいたら、釧路から来たという方が、桜木さんの作品について全く同じことを言っていましたよ!

桜木/そうですか! ひとマスひとマス埋めたものを、そうして読んで下さるのはとてもありがたいです。

寺町/それにしても、14歳の女子中学生の目に、〝小悪魔〟怜子ちゃんと、煮え切っているのか煮え切らないのかわからない…既に私の価値判断が入ってますけれど(笑)桂木さん、そして桂木夫人の関係は、どう映ったのでしょう?

桜木/さっぱり分からなかったです(笑)。だって、景色を読んでいたんですもの。それが童話なら童話の方面に進んだかもしれませんが、原体験が「挽歌」なもんだから男と女を書くことになってしまい…いえ、別に原田さんのせいではありませんが(笑)。なんでしょうね、「男と女ってこうなんだ」という〝刷り込み〟ですね。

寺町/14歳の時点で?

桜木/ええ。「男と女は悲しいんだ」ということ。今なら言語化できるんですが、当時は何となく「ハッピーなことばかりではないんだな」という感覚でした。

寺町/怜子ちゃんのように男性を振り回してみたい、とは?(笑)

桜木/なかったですね(笑)。だって私、その後ホテル屋の娘になっちゃったもんですから。まるで恋愛小説を後ろから呼んだようなもので。ロマンチックな大人の男と若い女の心の揺れ動きから、一気に「あ、こんな匂いするんだ…」というところに行ってしまって、〝中間〟がなかったんですね。現場を見たことなくても、男女が汚した跡を見て、まるで〝踏んだ後のタンポポ〟ばかり見てきた、みたいな…。

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寺町/確かに、初めて読んだ恋愛小説は、その後の恋愛観に影響を与えますよね。

桜木/年下に惚れたことがありません(笑)。

寺町/それを〝挽歌後遺症〟とするならば、好きになった人に子供や奥さんがいたら、どうしましょう?

桜木/好きになった責任を取りますね。好きになることにも責任があると思います…あ、会場がシーンとしちゃった(笑)。

寺町/「挽歌」には色々な形の恋愛が描かれています。冷めてしまった夫婦の愛、若い男と美しい熟女の恋、初々しい若者の恋の真似事もあれば、ヒロインの若い女性と中年男性の愛も。果ては、若い娘から、今でいう〝美魔女〟に対する恋も描かれていますね。

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桜木/そうですね。女性同士の間にどんな感情が芽生えるか、ということも、問うていると思います。怜子は桂木夫人に対し、「ママン」という呼び方をします。あれは、原田さん特有の「ママン」。怜子は桂木夫婦の中をかき乱す、〝台風の目〟のような存在になるわけです。

寺町/私が読んだ時は、そのママンに対する恋というのが、何となくピンとこなかったんですけれど…。

桜木/色々な感情を「複雑」と言ってしまえば簡単ですが、私は「好奇心」という言葉を当てたいです。その「好奇心」が何歳まで許されるのか、という問いかけもしていると思います。だからこそ物語の終盤、ヒロインの怜子が修学旅行生をK温泉で見たとき、「少女たち」という言葉を使い、「自分はもう少女ではないのだ」という〝気づき〟を表現しています。原稿700枚を使って、少女から女になり、〝気づき〟まで書く、ということが、変わらぬ小説の仕事なんだと思います。

寺町/今読み直しても、全く古びないですね。

桜木/男と女のことって、時代が変わってもそんなに変わらない、と50歳を前にして思いますが、会場の皆様どうでしょうか…。あ、頷いてらっしゃる方がいる(笑)。寺町さんは今回、原作を初めて読んで、八木義徳さんの解説に「(怜子の愛は)不倫の果てに終わったのである」とあることにショックを受けたとか。なぜ?

寺町/そうはいっても、続編があれば、あの二人は続いているのでは…と思っている自分にショックを受けたんです。

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桜木/ピュアだな~! この景色の中で育った私は「終わりだろう」と思いました。だって北海道の女の場合、向こうも傷を持ってるし、こっちも傷持ってるし…めんどうくさいし、やってられない(笑)。

寺町/それ、北海道に風呂敷広げてよかったですか?(笑)

桜木/ごめん、道東です(笑)。理由は、流れ者が多いから。だって、漁業に炭鉱にパルプだもの! 流れる流れる(笑)。しかも男は、小金が中金になったら商売始めるでしょう。あるときぶち切れて、守りに入らない。そんな男たちを見ていると、期待しなくなるんですね(笑)。

寺町/桜木さんは以前、道新の旭川版で映画評を書いてらっしゃったほどの映画好き。普段はどんな風にご覧になっているのですか?

桜木/著作権のある身になったので、DVDは必ず買って観ることにしています。それも、一本書き上げた〝ご褒美〟にこれを一日中これを見るぞ!という感じ。次に進むためのステップですね。

寺町/ちなみに今、楽しみにしているのは?

桜木/「仁義なき戦い」! 最近DVD化された「離婚しない女」も待機中です。好きな映画は何度も見ます。

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寺町/そんな映画好きな桜木さんの、釧路を舞台にした作品「起終点駅(ターミナル)」が映画化されることになり、今まさに釧路で撮影されています。ロケをご覧になったそうですね。

桜木/佐藤浩市さん、本当に色っぽい、いい男でした!

寺町/佐藤さんは、最果ての地で、すべてを断ち切って孤独に生きる元弁護士の役ですね。

桜木/あのうらぶれた感が、私にとっての「桂木」の行く末なんだなぁ…。

寺町/小説になることで町の見え方が変わるというお話でしたが、映画になるとまた一段変わりますね。

桜木/新しいものになると思います。書き手の〝終点駅〟が、映画人の〝起点駅〟なんですよね。そうやって、物語は育っていくんだろうと思います。きっと「挽歌」が映画になったとき、原田さんも「育ててもらってる」という感覚があったんじゃないかな…今ようやくそこに立つことができました。ありがたいことです。

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寺町/映画に出ませんか、というお誘いもあったとか。

桜木/あったんですが、断りました(笑)。だって、ハラハラしたくない(笑)。いい映画は、最初から最後まで客席で楽しみたいんです。これは新しい「起終点駅(ターミナル)」。長谷川康夫さんが担当された脚本も、当然私の小説と違います。映画人の仕事って素晴らしいですね。本を読んでも、映画を観ても、楽しめる作品になると思います。

寺町/監督は「真夏のオリオン」の篠原哲雄さん。来年の秋、公開ですね!

桜木/すごく熱の入った現場でした。主人公の事務所のセットを見せてもらったんですが、「うわーすごい!」と思ったら、後ろは青ビニール(笑)。映画って、嘘つきだなぁと思いました。嘘と言う点では、小説も同じですが。あと、ストリッパーもそう(笑)。

寺町/「挽歌」の小説から58年、映画化から51年。釧路を舞台にした桜木さんの作品が新たに映画になることで、北海道・釧路の町の見え方がどう変わるのか。楽しみにしています!

(トークおわり)