昨年公開の北海道ロケ作品の秀作「そこのみにて光輝く」(呉美保監督)「私の男」(熊切和嘉監督)を手がけた、近藤龍人(りゅうと)カメラマンの特集 オールナイトが4月11日、東京のテアトル新宿で開かれました。

オールナイトでのトークショー。左から近藤カメラマン、山下監督、松江監督、藤井照明技師、小川プロデューサー
近藤カメラマンは1976年、愛知県生まれ。山下敦弘監督と大阪芸術大の同級生で、ともに熊切監督の「鬼畜大宴会」の制作に参加しました。上記2作のほか、「海炭市叙景」「ウルトラミラクルラブストーリー」「マイ・バック・ペー ジ」「桐島、部活やめるってよ」「横道世之介」「バンクーバー の朝日」などを手がけ、現在の日本映画を引っ張る若手監督たちから大きな信頼を得ています。
オールナイトで上映されたのは山下監督の「天然コケッコー」、熊切監督の「ノ ン子36歳(家事手伝い)」、松江哲明監督の「ライブテープ」と山下監督の短編「腐る女」。合間には近藤カメラマン、山下監督、松江監督、「私の男」「そこのみ」などでも組んでいる照明技師の藤井勇さん、元アスミックの小川真司プロデューサーという、卒倒しそうな豪華メンバーによるトークも行われました。
トークでは「近藤君は断らない」という松江監督に、近藤カメラマンは控えめな様子ながら「カタチにするのが撮影だから断れない」。80分ワンカットの「ライブテープ」について近藤カメラマンは「撮るだけならできるが、それが作品としてどうなるか。松江監督を信じないとできないが、二人でロケ地の吉祥寺を歩いたとき、松江監督が演出を説明しながら歩いてくれ、これはできると思った」と秘話を披露しました。
「天然コケッコーでは、キラキラした部分を撮ってくれて、自分の作品じゃないみたい」と話した山下監督は、小川プロデューサーの「天然コケッコーのラストカットは相談して決めたのか」(長回しのワンカットで、中学の制服姿の夏帆が同じカットの中で時間をおいて高校の制服姿で現れる)という質問に「どうやってつくろうか、とみんなで考え、あれで一気に動き出した」と振り返りました。
終了後、近藤カメラマンに「北海道の暑さ、寒さの温度感を表現するのにどんな工夫をしていますか」と尋ねると、「風景が素晴らしいので、それをそのまま撮るようにしています」と控えめに話してくれました。また、照明の藤井さんは「海炭市」「そこのみ」「私の男」に加えて、小樽ロケの呉監督 「きみはいい子」でも照明を担当しています。「作品はまだ内緒ですが、今年の夏も北海道にお邪魔します」と教えてくれました。ホントに楽しみです。
オールナイトはいつも睡魔に負けてしまいがちですが、ウルトラ豪華なゲストによる興味が尽きないトークと、満員の会場の熱気に興奮して、この日は 一睡もできませんでした。
また、オールナイト前のレイトショーでは、阪本順治監督の助監督だった、杉田真一(まさかず)監督の「人の望みの喜びよ」が上映され、阪本監督と杉田監督のトークが行われました。中学生で阪神大震災を経験した杉田監督が初の長篇の題材に選んだのは、震災で両親を失った幼い姉弟の物語です。 少ないせりふで子どもたちの心情をすくい上げ、心に残りました。東京以外では名古屋、京阪神での公開が決まっています。道内でもぜひ見ていただきたい作品です。(理事・加藤敦)