「何者」が公開中の、苫小牧出身の三浦大輔監督の「裏切りの街」が新宿武蔵野館で公開され、連日トークショーが行われました。23日には三浦監督と、佐藤泰志の小説を映画化した函館3部作の完結編「オーバー・フェンス」の山下敦弘監督のトークがありました。
「裏切りの街」は劇団ポツドールを主宰する三浦監督が自ら手がけた舞台の映画化作品で、ダメ男を演じたらぴったりの池松壮亮さんと、不倫する主婦役の寺島しのぶさんが主演しています。作品詳細は以下のとおり(新宿武蔵野館のホームページから)。

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同棲する彼女に小遣いをもらいながら怠慢な生活をおくっているフリーターの菅原裕一と、穏やかな夫と平穏な日々を過ごしている専業主婦の智子。お互いパートナーにはなんの不満もなく、日々を過ごしていた。はずだった。ただなんとなく、はっきりとした目的もないまま出会い系サイトを利用した二人は、偶然出会うことになる。なんとなく出会った二人は意味もなく、逢瀬を繰り返すことに。日々はすぎ、季節を、カラダを重ねた二人。二人の関係もすっかり惰性となったある日、とある出来事をきっかけに日常が揺らぎはじめる。それでも「選択」することを避け、現実に向き合いきれない二人。流れに身を任せ続ける二人のたどり着く先とは。
劇団ポツドールの主宰として演劇界に衝撃と共に現れた三浦大輔。『ボーイズ・オン・ザ・ラン』『愛の渦』『何者』と映画界にもフィールドを広げる三浦監督が、自身の舞台作品の中でも最も映像化したかったという本作。主演には『無伴奏』『セトウツミ』『永い言い訳』など出演作が相次ぎ、映画『愛の渦』と舞台「母に欲す」にて三浦大輔の盟友となった池松壮亮。その相手役にはこちらも舞台「禁断の裸体」で三浦作品に参加した寺島しのぶ。共演に『私たちのハァハァ』『愛の渦』の中村映里子、『アズミハルコは行方不明』『日々ロック』『東京難民』の落合モトキ。そして「母に欲す」で池松壮亮の兄を演じた銀杏ボーイズの峯田和伸が主題歌「ピンクローター」を提供している。
上映後のトークショーで山下監督が「池松さんの役は最低で見たくないのに、笑っちゃいました」と話したのに対し、三浦監督は「笑っていいかどうか迷う映画ですよね」。寺島しのぶさんは昨年8月に撮影した「裏切りの街」で不倫する人妻を演じた直後に、山下敦弘監督の「ぼくのおじさん」の撮影に入りました。その影響か、「ぼくのおじさん」で自らが演じた専業主婦について「ぶらぶらしていて一日中一つ屋根の下にいる松田龍平さんと何かあるんじゃないの」と疑問を呈して山下監督を困らせたそうです。山下監督は「寺島さんはそういう資質の人なんだな、と思った」と観客を笑わせました。トークショーではほかに、舞台での芝居と、ワンシーンワンカットの長回しが多い山下監督の映画のカット割りの違いなどについて話が盛り上がりました。

舞台と映画の演出法などについてトークを披露した山下敦弘監督(左)と三浦大輔監督
「オーバー・フェンス」で生活感たっぷりの函館を撮った山下監督。苫小牧出身の三浦監督にも、いつか北海道で映画を撮ってくれることを期待しましょう。余談ですが、「裏切りの街」は東京・東中野に住む青年と吉祥寺に住む主婦が中間の荻窪で逢瀬を重ねる内容で、加藤の住処の周辺がたくさんロケに使われています。スチール写真は毎日、映画の行き帰りに通る善福寺川の橋の上で、洋品店の看板が見えています。ロケ地めぐりの際はご案内します。(理事・加藤敦)