ミュージアムの月イチイベント「北のシネマ塾」。
3月17日には、「網走番外地 大雪原の対決」をテーマに、北海学園大教授の大石和久教授がトークを担当しました。

会場には、30名を超す大勢のお客様!

ありがとうございます。
実は、大石教授は研究のため、4月から一年間、フランスへ。
この日は、旅立つ前、最後のイベントとあって、一般参加者のほか、元教え子さんやミュージアムの理事たちも駆けつけました。


映画「網走番外地 大雪原の対決」は、1966年度興行収入がベスト1の当時大人気作! 「荒唐無稽で奇妙な和製ウエスタンにみえますが、そういう映画ならではの清々しさがあります」と大石教授。

そして、本作で描かれるバイオレンスは、北海道ロケ作品のひとつの傾向だと紹介し、「北海道は、どうしても〝辺境〟〝野蛮〟というイメージがあり、この映画の場合、文明の果てるところの原始の雪原、まさに番地すらない北の果てが、バイオレンスの舞台となりました。それは同時に、〝解放〟とも捉えることができます。実は、本当の暴力の主体は、権力側にあったのかも。それに対抗しうるのは、暴力しかなかったのでは…と考えることもできるのではないでしょうか」。

また、本作が西部に見立てられた点も、北海道ロケ作品の重要な傾向とも。「熊の出る開墾地」「大草原の渡り鳥」「幸福の黄色いハンカチ」など〝見立ての系譜〟を挙げ、「『許されざる者』など、今も新作が作られていることが面白い」と指摘。

「見立てとは想像力。北海道は、今ここにはない異国へと、見る者のイマジネーションを喚起してきたのでは」と持論を展開し、「私に〝見立て〟という発想を与えてくれた作品のひとつが、この『網走番外地 大雪原の対決』です」と、本作への思いを熱く語りました。

「網走番外地」シリーズという娯楽作品に、こんな深い読み解きが可能とは! わたしスタッフ・新目もびっくり。大学の講義をみっちり聞いたような、勉強になったひとときでした。

ちなみに、映画の主な舞台は、道北のまち・士別。
ミュージアムの入口近くにある古い35ミリ映写機は、士別にあった映画館「テアトル銀映」から寄贈を受けたものです。その寄贈者のご家族も、イベントにご参加下さいました。

というのも、実は劇中に、ゆかりの場所が登場していたそう! メイン舞台となる「クラブ『さいはて』」は、「テアトル銀映」の前身に当たる、移転前にあった映画館「国勢座」の外観が活用されたそう! 「3歳まで住んだ映画館で、僕にとっては非常に思い出深い映画なんです」と貴重な思い出をお話下さいました。

これはまた嬉しい驚き!「網走番外地 大雪原の対決」は、ここミュージアムとも不思議な縁のある映画なのでした。
ということで、この日のイベントはこれにて終了。ご参加くださった方々、どうもありがとうございました。
大石先生、どうぞお元気で。
フランスのお土産話と映画の研究成果を、ここミュージアムでも発表いただける日を、楽しみにしています。

