「小さな町の小さな映画館」&「旅する映写機」札幌上映会レポート!

ドキュメンタリー映画「小さな町の小さな映画館」(2011年)と

「旅する映写機」(2013年)の自主上映会が、5/24、開催されました。

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浦河町にある老舗劇場「大黒座」をはじめ、

全国各地の映画館や映写機にスポットを当てたこの2作。

映画好きなら、見逃すわけにはいきません!

ということで、当日の様子をご紹介します。

* * *

会場は、新さっぽろの「サンピアザ劇場」。

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入口にある手作りの看板が何ともイイ感じです。

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会場に入ると、懐かしい顔を発見!

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中央の男性が、この上映会を企画した

自主上映グループ「ノース・シアター」の木屋拓真さん。

学生時代には、ミュージアムのお手伝いもしてくれた筋金入りの映画好き。

現在は、小樽の映画館で働いており、それだけでは満足できず、

こうして上映会を企画することになったよう。

会場は、そんな彼や関係者の熱意が伝わるさまざまな資料がずらり。

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上映の合間には、森田惠子監督を迎えたトークも行われました。

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木屋/僕は旭川出身で、札幌の大学時代、シアターキノや蠍座、スガイディノスなど色々な映画館に通いました。その時、映画館という「場所」の良さを実感。昨年、蠍座が閉館してしまい、残念に思っていたところ、この「小さな町の小さな映画館」に映っていると知り、「ぜひ観たい」と監督に連絡したら、新作もあると聞いたので、「2本立てで上映しましょう!」ということになりました。実は、「2本立て」を経験したことがないので、あこがれもあったんです。昔のように、一度入ったらそのままずっと鑑賞できる仕組みにもしたくて…。ここまで多くの方に支えられて、この日を迎えることができました。ありがとうございます。ということで、森田監督をご紹介します。(会場、拍手)

監督/ありがとうございます。まんまと彼をだまして(笑)、2本立てを実現できて嬉しいです。まずは、映画館で映画を観ることを大切な体験として持っている木屋さんが、「蠍座が閉館して悲しい」という気持ちから、この上映会を企画して下さったことが、本当に光栄です。改めて、ありがとうございました。

木屋/実はDVDを購入して一人で観ることもできたんですが、僕のようにこの映画を観たい人がいるのではないか、と思いました。今日、こんなに多くの方に集まってもらって嬉しいです。

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監督/私は昨日まで(映画の舞台)浦河町にいました。大黒座館主の三上雅弘さんがよくおっしゃるのは、「映画館で映画を観てほしい」ということ。私自身、高校生の時に、仲良しの友達とよく映画館に行きました。…木屋さんは2本立てを未体験とのことですが、私の時代は「3本立て」(笑)。友達と相談して選んだ作品がつまらない時も、併映のB級映画が意外と面白かったりするんですね。あるいは、「あのシーン面白かったね」というと、「そんなシーンあった?」なんて反応があって、まるで違う映画を観ている錯覚を覚えたり(笑)。

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映画って、そういう風に見るのがいいな、と思うんです。自分はちっとも面白くないシーンで、なぜか笑う人がいて…違う反応を経験することが、非常に豊かなことではないでしょうか。人の価値観、ものさしはいろいろあるということを肌で感じておけば、たとえばその先、人生でうまくいかないことがあった時、追い詰められず、違う発想ができるのではないかと思うんです。だから私は、特に若い人が、映画館で色々な人と並んで、同じ方向を見て映画を観ることは、尊いことだと思います。

木屋/僕は学生時代、同年代で映画を観る人が周囲にいなくて、札幌には話せる人がいないな…なんて思っていたら、NPO法人「北の映像ミュージアム」などを知り、札幌にも映画好きの人がいることを知りました。…話は戻りますが(会場、笑)、「3本立て」ってすごいですね。

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監督/たとえば、大黒座の上映プログラムを見ると、三上さんらしい内容なんです。でも、そういう目利きの館主さんがいる映画館って、減りましたね。作品数は増えているので、宣伝の巧さに引っかかってしまいがちなんですけれど、目利きの館主さんがいれば、良質な映画の存在を教わることができる。ぜひとも、そういう映画館に残ってほしいです。…そういえば、大黒座がデジタル化して、私はひと安心していたんですけれど、そう甘くはないようですね。三上さんによると、デジタルはバージョンアップなどでランニングコストがかかるのだとか。映写機ならある程度は自分の裁量で修理できるけれど、そうもいかない。現実の厳しさを感じました。

木屋/監督は現在、最新作の映画も準備されているとか。

監督/はい。実は、「旅する映写機」を上映すると、元映写技師の方と知り合う機会が増えて、彼らのお話がすごく面白いんです! 昔の映写技師さんって、上映を演出する役割があるんですね。最後に映画を観客に届けるのは自分たちだ、というプライドもお持ちで。たとえば、最後にジーンとして泣いてしまう映画の場合、場内を明るくする時間を少し遅くして、余韻を残すんだそうです。映画の世界から現実世界に戻っていくことまで考えて、映写していた。そんなことを、記録として残したいんです。…もう、自分が面白いから撮っている状態になっていますけれど(笑)、私の大好きな映画館の3部作として完成させたいと思っています。

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(ここで場内から感想あり。また、今作を撮るきっかけについての質問あり)

監督/実は私は、「見せる」ことより、「記録すること」に関心が強かったんです。ところが、自主上映に熱心な方が、私の地味な作品を上映してくださった時に、「やっぱり作品は人に見せなきゃいけないんだなぁ」と感じました。「小さな町の小さな映画館」は助成金を基に作りましたが、条件が「劇場で上映すること」。まぁ、最低でも大黒座なら上映してくれるだろうと思って(笑)、申請したんですが、おかげさまで今年も全国3カ所で上映いただいています。自分たちの町に映画館がなくても、映画を観たくて活動している方はいるんですね。各地の自主上映の方々に出会い、細々とでも「映画は皆で観たいね」という人たちの存在を実感しています。

* * *

いかがだったでしょうか。

監督さんはもちろん、映画に登場する映画館主さんやお客さん、

映写技師さん、スタッフさん・・・

そして、この日の会場に集まった人たちみんなから

〝映画愛〟を感じる素敵なひとときでした。

ちなみに、もうひとつ感慨深かったのは、この「サンピアザ劇場」という会場。

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実は、ミュージアムにある映写機は、この劇場で2004年まで活躍していたもの。

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これも、映画のタイトル通り、

サンピアザ劇場からこのミュージアムへ、「旅」をしてきた映写機なのですね。

ミュージアムにはもうひとつ、士別の映画館から旅してきたカーボン式映写機もあります。

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ご興味ある方はぜひご覧ください。

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