第5回「北のシネマ塾」レポート!前編

好天の札幌!

さて、本日は、5月19日に開催された「北のシネマ塾」レポート。

網走ロケ「男はつらいよ 寅次郎忘れな草」

(73年、山田洋次監督)をテーマに、

映画研究家の高村賢治理事が

マドンナ・リリーの生き方について語りました。

国民的映画の設定事情からマドンナ像まで、

映画を愛する高村さんならではの濃いトーク内容を

2回にわたってお伝えします。

* * *

まずは、この作品の生まれる背景をご説明します。

「男はつらいよ」初期の面白さの原点は、寅さんの「フーテン性」にありました。しかし、10作を重ねる過程で、マスコミからマンネリ・ワンパターンだと酷評されるようになったのです。そこで11作目の「忘れな草」を作るに当たって、作り手、つまり脚本担当の山田洋次さん、朝間義隆さん、宮崎晃さんが考えた結果、この「フーテン性」を違うカタチでもっと面白くさせるために生まれたキャラクターが、「リリー」です。

リリーは流れ者、ドサ回りの歌手という役どころ。つまり、寅さんと同じ目線に立つ女性なんですね。これまでの10作は、寅さんが、まるで高みにいるマドンナを見上げるような視線でドラマが展開されました。しかしこの11作目では、寅さんと同じフーテン性を持つキャラクター・リリーを作り、寅さんとうまく合わせることで、新しさを見せつけることに成功したのです。

これは自分なりの仮説なのですが、リリーというマドンナが生まれた背景にはもうひとつ考えられます。同じ松竹の木下惠介監督作品「カルメン故郷に帰る」 (51年)。高峰秀子さんがストリッパー役を演じていますが、これも、全国を回る仕事。そして、この役名が、なんと「リリィ」なんです。ひょっとしたらこのキャラクターを、山田さんたちが日本映画史の中で継承したかったのではないかと思うんです。

事実、高峰秀子さんは1974年に引退され、その前年73年にこの「忘れな草」が製作されています。製作時には、山田さんたちは高峰さんの引退宣言を知っていたはずです。74年のキネ旬ベストテンには、第5位に高峰さん主演の「恍惚の人」、第9位にこの「忘れな草」が入っています。まるで見えない糸で継承されたように感じるのです。ぜひいつか、この点を山田さんに聞いてみたいところですが、たぶんはぐらかされるでしょう(笑)。というわけで、このように、映画史的な流れから見ると、このマドンナは巧みに作られているといえるのです。

続いて、リリーと他のマドンナの背景についてです。以前、キネ旬は、評論家を対象に、シリーズ全48作を対象にした寅さんベスト10を企画、発表しました。参考までにご紹介しますと・・・

第10位 口笛を吹く寅次郎/紅の花

第9位 柴又慕情

第8位 ハイビスカスの花

第7位 知床慕情 ★

第6位 望郷篇 ★

第5位 続・男はつらいよ

第4位 忘れな草 ★

第3位 夕焼け小焼け

第2位 相合傘 ★

第1位 男はつらいよ(1作目)

ランキング入りした11作品中、北海道ロケがなんと4本も入っています。(スタッフ補足:★印が北海道ロケです)。ここから見えてくるのは、いかに北海道が、寅さんシリーズでロケ地として重要な位置を占めているか、ということです。

ちなみに、マドンナベスト10もあり、リリー(浅丘ルリ子さん)はダントツ1位!芸者を演じた松坂慶子さん、太地喜和子さんもランク入りしています。ここから言えるのは、寅さんと同じ流れ者、フーテン性を持つマドンナの出演作に傑作が多いということ。ちなみに、私は木の実ナナさんの「わが道を行く」が好き。いい作品だと思います。ということで、もし48作の中からレンタル作品を選ぶとき、寅さんと同じ境遇、職業のマドンナ、ということを指針のひとつにしてはいかがでしょうか。

(後編へつづく)

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