香川京子さんと北海道

東京・シネマヴェーラ渋谷で、新東宝70周年記念特集として2月25日から3月17日まで「新東宝のディープな世界」が上映されています。3月5日には、新東宝で女優人生をスタートさせた香川京子さんのトークショーが開かれるとともに、デビュー間もないころの出演作「君と行くアメリカ航路」(1950年)「東京のヒロイン」(50年)「若様侍捕物帖 呪いの人形師」(51年)が上映されました。

トークの中で香川さんは、田中絹代さんらが参加した「女の暦」(54年)の小豆島ロケでのできごととして、「同じ時期に『二十四の瞳』のロケが行われていて、高峰秀子さんが大石先生の衣装のまま、田中絹代さんに会いにいらしたんですよ」と、想像するだけでも豪華なエピソードを語ったほか、「当時は時代劇の日本髪はかつらではなく、自分の髪の毛。朝6時半に入って、コテで伸ばして、びんつけで9時の撮影開始に間に合うように結ってもらいました。そのころはお下げ髪にしていましたが、時代劇にそなえて切ることができませんでした」と、撮影の裏話 も披露してくれました。

さらに「昔の作品を上映していただき、お客様に来ていただいて幸せです。これからも映画の語り部としてお話をしていければ、と思います」と、満席の観客を前に語ってくれました。

トークの写真は撮れなかったので、最近出た「異端の映画史 新東宝の世界」に書いてもらったサインを代わりに

トークの写真は撮れなかったので、最近出た「異端の映画史 新東宝の世界」に書いてもらったサインを代わりに

香川京子さんは、近年はインディペンデント作品にも多く出演し、若手監督を応援してくれています。昨年秋、第1部の試写会が行われた室蘭映画「モルエラニの霧の中」(坪川拓史監督)もその一つ。謎めいた老婦人の役で出演しています。トーク終了後、「モルエラニに出ていただいて、ありがとうございます。映画はまだ全部完成していないようですが、北海道の映画ファンみんなが楽しみにしています」と伝え、北海道の映画好き代表としての任務を完了すると「(完成していないことについて)そうですね。ありがとうございます」と答えてくれました。

香川さんは、近年では「天国の本屋~恋火」(2004年、篠原哲雄監督)でも小樽ロケに参加しているほか、古くは、北の映像ミュージアムで上映会を開いた「森と湖のまつり」(1958年、内田吐夢監督)にも出演しています。「モルエラニの霧の中」についてはこちら

ところで、この日上映された「東京のヒロイン」には、当時の北海道新聞東京支社が出てきます。雑誌記者の森雅之が勤める「人間喜劇」社の窓から見えるビルがそれ。こうした室内撮影は通常、セットで行われ、風景は書き割りや写真が多いのですが、窓の下の隣のビルの屋上で動いている人がいて、列車の車窓風景などで使われるリアプロジェクションのような不自然さもないため、ロケのようです。香川京子さんは、森雅之の相手役、轟夕起子の妹役で出演しています。北海道新聞東京支社は、岡本喜八監督のデビュー作「結婚のすべて」(1958年)にも出てくるほか、娯楽映画研究家の佐藤利明さんが教えてくれたところでは、日活の撮影所に作られた銀座のパーマネントセットに北海道新聞東京支社の建物があり、「銀座の恋の物語」(1962年)のスチール写真に使われています。

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「銀座の恋の物語」のスチール写真。石原裕次郎と浅丘ルリ子の後ろに、北海道新聞の建物

香川京子さんにサインを書いてもらった、上の「異端の映画史 新東宝の世界」の香川さんインタビューには「当時、1日だけ舞台の仕事をしたことがあります。一つは北海道のアイヌの話で、アイヌの娘の役で出た記憶があります」というくだりがあります。香川京子さんと北海道、結構色々なつながりがあるものですね。(理事・加藤敦)

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