川本三郎さんの「『男はつらいよ』を旅する」が出版されました

「北の映像ミュージアム」の活動に力を貸してくれている、評論家の川本三郎さんの新しい本「『男はつらいよ』を旅する」が新潮社から出ました。タイトル通り、旅好きな川本さんが、渥美清演じる寅さんがシリーズ全48作で訪れた全国の町を歩きます。

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北海道では、寅さんが浅丘ルリ子のリリーと初めて出会う第11作「寅次郎忘れな草」の網走、三船敏郎と淡路恵子が貫禄を見せた第38作「知床慕情」の斜里町ウトロ、伊藤蘭主演の第26作「寅次郎かもめ歌」の奥尻島、リリーと再会する第15作「寅次郎相合い傘」の小樽、蒸気機関車が重要な役割で登場する第5作「望郷篇」の函館本線小沢駅などを訪れます。

網走では「寅が商売を始める場面で画面に映っていたレコード店はもうない」と寂しい情景を描写する一方、地元にできた東京農大の女子学生が実習で知り合った農家の息子と結婚するという話を聞き、「話半分にしても漁業や農業に活気があるのはいいことだ」と地方に温かい目を注ぎます。「知床慕情」では、同じ山田洋次監督の「遙かなる山の呼び声」と同様、離農という厳しい現実も描かれている、とあります。小樽では「寅次郎相合い傘」の船越英二のかつての恋人(演じるのは函館出身の岩崎加根子)が営む喫茶店を探し、「この喫茶店は現在はないが画面に映っていた歯科医院が健在で、それを手がかりに場所を探し出すことが出来た」と熱心な探訪の様子を記しています。
松竹による「男はつらいよ」ロケーション一覧はこちら

印象的なシーンの画像も掲載されています。

古い町並みや失われた鉄道が数多く登場する「男はつらいよ」シリーズについて、川本さんは「はじめから古い町を舞台にしているから何年経っても古くならない。繰返しに耐えられる。新しい風俗を描いた映画が、時間とともに古くなってしまうのに対し、『男はつらいよ』は新しさを求めないから長く、長く残ってゆく」と書きます。北海道南西沖地震で失われた奥尻島青苗の街並みが映し出される「寅次郎かもめ歌」では「日本各地でロケされた『男はつらいよ』はいまではその町の歴史になっている」と書かれています。

驚くのは、どこを訪れても、川本さんが「男はつらいよ」のことで、と地元の人に尋ねると、みんなが笑顔でロケ当時のことや、ロケ地(またはロケ地跡)のことを教えてくれること。また、小さな場面のロケ地にも案内板があることなどは、「男はつらいよ」シリーズや寅さんが、いかにたくさんのひとに愛されていたかを示しています。「ロケ地の人々にとって、『男はつらいよ』はいまも大事に記憶されている」と、川本さんは書いています。

出版を記念して6月29日に東京・神保町の三省堂書店で行われたトークイベントで川本さんは、ゲストで帝釈天の寺男の源公を演じた佐藤蛾次郎さんに「奥尻島で会ったタクシーの運転手さんは蛾次郎さんにそっくりで、雑誌連載ではそう書いたけど、運転手さんに悪いかなと思って本にするときは削りました」と話し、会場の笑いを誘いました。トークの会場には、川本さんが女優のインタビュー集「君美わしく」でインタビューした、元祖グラマー女優、前田通子さんが聴衆としていらっしゃいました。「女真珠王」のグラマー女優も、和服の似合う白髪の上品な老婦人になっていました。もちろん今もお綺麗でした。新東宝映画の本にサインしてもらうと、本人曰く「50年ぶりくらいだから」と、サインはちょっと震えていました。余計な話ですみません。

image1(理事・加藤敦)

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