旭川出身で「彼女がその名を知らない鳥たち」が公開中の白石和彌監督の新作「孤狼の血」が来年5月に公開されます。東京・銀座の丸の内東映で17日、マスコミ向けの試写会と白石監督のトークが行われました。
「孤狼の血」はミステリー作家の柚月裕子さん原作で、広島県呉市をモデルにした呉原市を舞台に、はみ出し者の刑事が暴力団を相手に展開する破天荒な行動とその後の意外な顛末を描いた作品です。飛び交う広島弁やどちらが暴力団かわからない暴れっぷりが、東映作品「仁義なき戦い」や「県警対組織暴力」を彷彿させます。
はぐれ者の刑事に役所広司さん、上司の指示でペアを組まされる若い刑事に松阪桃李さんが扮するほか、北海道出身の音尾琢真さん、伊吹吾郎さんが重要な役で出ているのもうれしいことです。また、白石監督のほとんどの作品で録音を手がけているベテランの浦田和治さんも北海道出身とのこと。公式ホームページはこちら。
白石監督は若松孝二監督に師事、2010年公開の「ロストパラダイス・イン・トーキョー」で長編デビュー。その後は「凶悪」や、北海道警の腐敗を描いた「日本で一番悪い奴ら」など、鮮烈なバイオレンス描写で注目される映画を次々と送り出しています。
上映後のトークで白石監督は「『日本で一番悪い奴ら』で組んだ脚本の池上純哉さんと、いい意味でエネルギッシュと言える作品になるよう、日々ふたりで酒を飲みながら脚本を作った。また、約1か月にわたるオールロケが呉でできたのも大きかった。『仁義なき戦い』は呉では撮れなかったので、あのエネルギーを取り戻すには呉で撮ることが重要なファクターだった」と話しました。さらに、人によっては目を背けたくなるようなギリギリの描写の連続について「コンプライアンスを吹き飛ばすような映画を。コンプライアンス、規制というけれど実は作り手の僕らが規制を作っているのでは。テレビでは見られないことが映画の価値観につながっている。こういう映画がもっと日本にあっていいと思う」と胸を張りました。
トーク後にお会いした監督は、2時間6分という上映時間を「ちょっと長かったかも」と言いましたが、作品はまったく長さを感じさせない密度とスピード感にあふれています。公開は18年5月12日とやや先ですが、それまでに白石監督の映画は「サニー/32」が2月に公開予定と、作品さながら怒涛の勢いが続きます。さらに、未公表ながら、今月末からは、もう次の作品の撮影に入るそうです。その作品の脚本家のSさんに「バイオレンスですか」と尋ねると「おバカ系です」。内容は全くわかりませんが、楽しみにしましょう。(理事・加藤敦)