「きみの鳥はうたえる」三宅唱監督×中島洋さんトークレポート①

よいよ9/1(土)に全国公開が迫る

函館ロケ最新作「きみの鳥はうたえる」。

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©HAKODATE CINEMA IRIS

札幌出身の三宅唱監督を招き、

長編デビュー作「やくたたず」(2010年)上映&トークイベントが先日、

札幌・ICC(インタークロス・クリエイティブ・ センター)で行われました。

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その後行われた、「きみの鳥はうたえる」プロデューサー・

菅原和博さんとの取材会見と併せて、数回に分けてご紹介します。

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「やくたたず」に見る三宅作品の原点とは?

「きみの鳥はうたえる」との共通点は?

新作の見どころから、北海道ロケへの思いまで、たっぷりどうぞ!

* * *

シアターキノ代表・中島洋さん(以下、中島)/僕は久しぶりにこの「やくたたず」を見ましたが、圧倒的なリアリティなんですよね。登場人物がごろっと目の前に出された、みたいな。このリアリティはどこから来るのか…みたいな話をしたいと思います。

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三宅唱監督(以下、三宅)/ありがとうございます。

中島/撮影は12月。私たち札幌人にとっては、雪が降って積もる前という、精神的に暗くなる時期です。なぜこの時期に撮影しようと?

三宅/実はこの作品は、大阪市の若手映画製作者支援の助成金を活用しまして…なぜ大阪の助成金で札幌ロケ?と思われるでしょうが(笑)、当時は「ロケ地を問わない」条件でした。それで、2、3月には発表しなければならず、物理的な条件もあって12月の撮影になりました。

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もともと僕は、生まれ育った北海道札幌で映画を撮りたいと思っていたのですが、それまで北海道でロケされた映画をみると、雪とかロマンチックに撮り過ぎじゃないか…みたいな、そういうことじゃないだろう北海道は、札幌は、と思っていて。もっと茶色い雪、にごった雪を、もし北海道で撮るなら撮りたいなと思っていたので、ちょうど12月ならロマンチックでなく、当たり前にある〝生活の中にある雪〟を、そのまま素直に撮れる時期かなと考えたんです。

中島/当時はおいくつですか?

三宅/26の終わりごろですね。

中島/大学を卒業して、映画を目指されていた時期ですね。

三宅/まさにそうです。

中島/実際に映画を目指す上で、ほかの自主制作などは?

三宅/大学生のときに映画サークルに所属したり、東京に映画の専門学校時代に通いまして、小さな短編みたいなものは撮りました。

中島/すると、これが長編第1作なんですね。〝生活の中にある雪〟を第1作に選んだことが、僕にはすごく興味深いです。おっしゃったように、雪のキラキラ映画への憧れでなく、自分のすぐそばにあるリアルな雪をどう撮るか。ところで、当初はロケ地は郊外じゃなかったんですね。もうちょっと街中の予定だったとか?

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三宅/そうなんです。大都市で撮れる街中の雪って、世界中探しても意外と撮れないんですね。これだけビルがあって、人がいて、車も走っていて、でもちゃんと根雪があるという。〝試される大地〟はすでに多くが撮っているんですが、そうじゃない札幌を撮りたかったんです。ところが2009年の冬は、意外と暖冬で街中に雪が積もらなかった(笑)。それで、僕の育った東区や北区に、ロケ地をどんどん広げていきました。街中でいうと、完成したばかりの札駅のエスカレーターが写っています。

中島/街中で撮ろうとしたけれど郊外になってしまい、結果として〝生活の雪〟を撮ったことが、事情を知らない僕は、結果としてすごく良かったと思います。強運の持ち主ですね。

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三宅/(笑)。僕は札幌新道を少し外れた辺りに住んでいたんですが、小さいころは新道がなくて、それが出来たとき、新道の両サイドで、街とこっちみたいな〝壁〟が生まれた気がしました。その周辺の物語になり、そういう意味では自分の実生活が反映されたかなと思います。あの新道を撮りたかったんです。

中島/なるほど。その感覚は微妙に「やくたたず」から「きみの鳥はうたえる」につながっていますね。もちろん当時は、(「きみの鳥~」の原作者)佐藤泰志さんを知らないはずですが、でも、郊外の感覚を好んで描いていた。共通項を感じて、興味深いです。役者の皆さんのリアリティが強烈ですが、キャスティングは?

三宅/ほとんどが東京出身、東京で出会った役者志望の人間たちです。警察関係者の人だけ経験者かな。あとはオーディションで出会った方々。過酷なロケになりそうだなと思ったので、とにかく運動神経良さそうな、面構えが良さそうな方を選びました(笑)。

中島/いいですねぇ(笑)。冒頭のシーン、ファーストカットの長回しが、ちょっとこれは撮れないな、と思うくらい僕は大好きなんです。が、長回しといっても、見直すと意外と短いんですね。あれは、初めからそう撮ろうと?

三宅/これを明かすと、ただの失敗談になるんですが(笑)、実はシナリオでは、高校の授業が終わった3人組がバスに乗ろうとする。間に合わないから、バスに向かって走るんだけれど、結局間に合わない…というシーンを書いていたんです。で、適当にバス来る時間を見計らって撮ればいいかなと思ってロケ地に行ってみたら、全然バスが来なかった(笑)。というか、そもそもバスが走る場所でなくて…もう、素人じみた無計画だったんですが(笑)。

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それこそ、予算があれば、バスを一台借りて丁寧に撮ることができるシーンではありますが、そういうことでもなく、あれ撮れねえじゃん…となってしまい、そのとき、〝何を撮りたいのか〟を考え抜いたんです。すると、何かに遅れちゃう、失敗しちゃうところから、俺は映画を始めたいんだなと分かりました。それで、ものすごく抽象化して撮ったのが、あれです。普通にカメラに向かって3人が来る。カメラは遠ざかるけれど、彼らは追いつけない。なんかその、もどかしい高校生特有の青春の心情、言葉にならない気持ちを、これで表現できればと思いました。しかもこれなら、車一台があればお金をかけずに撮れる、と(笑)。

中島/これも怪我の功名ですね。これは、三宅監督が映画を撮り続けていく中でも、記念すべきカットになるとファンとしては思います。

(つづく)

映画「きみの鳥はうたえる」(公式サイトはこちら
◎劇場/函館・シネマアイリスで公開中。9月1日(土)~札幌・シアターキノで公開(※トークイベントあり!)。10月6日(土)~苫小牧・シネマ・トーラス、浦河・大黒座、10月26日(金)~シネプレックス旭川で公開予定。シネマ太陽帯広は公開日未定。

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