「きみの鳥はうたえる」三宅唱監督×中島洋さんトークレポート②

いよいよ9/1に全国公開が迫る

函館ロケ最新作「きみの鳥はうたえる」(公式サイトはこちら)。

©HAKODATE CINEMA IRIS

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札幌出身の三宅唱監督を招いた

長編デビュー作「やくたたず」(2010年)上映&

トークイベントレポートin ICCの2回目をどうぞ。

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シアターキノ代表・中島洋さん(以下、中島)/「やくたたず」の上映前に、観客の皆さんに「少し話が分かりにくいかも」とおっしゃっていましたが、ごろっと出たものの方が映画の大事さかなぁと思いますけれど。

三宅唱監督(以下、三宅)/僕はハリウッドのサスペンスや犯罪映画が好きなので、実は脚本を書いている時点ではそんなのが撮りたかったんです。でも、撮れませんでした(笑)。だから正直、撮影が終わった後は落ち込んだんですけど、撮影素材を見ていたら「これはかけがえのないものなんだ」と思うようになりました。

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たとえば分かりやすい例で言うと、劇中に映る赤ちゃんの、あの瞬間は一瞬。もちろん、ほかの大人たちも同じだし、その〝かけがえのなさ・記録性〟は、天候、土地、建物、風景自体にも言えることで、映画とは、二度となくなってしまうものを撮ることでもあるんだなと、素材を見ながらようやく気付きまして(笑)。なので、それなら、かつて彼らがここにいたことを印象的に格好良く残すこと。それがひとまず自分の仕事なんだと思い…今おっしゃったゴロンゴロンとは、結果的にそう置いたんです。その方が、下手にうまく語るより目立つかなと思って。

中島/編集の段階で気付き、そうなっていったというわけですね。映画というのは、始めの撮影も含め全部出会って変化していく。そういうものですよね。シナリオのまま100%撮れることはありえなくて、そうした出会いの中でどうするか、なんですね。音楽は編集で後から付けたんですね。冒頭とラスト前、高校生3人組のシーンにだけ、同じ音が流れますね。あれは…三宅さん、あまり音楽とか効果音は好きじゃないでしょう?(笑)

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三宅/(笑)どうですかねぇ…あの時できることはあれが精一杯だったという気もしますけど。そうですね、印象的に映画の音が聞こえればいいかなと思いました。

中島/優しい音楽が流れたとき、この映画は結局、あの高校生3人に寄り添って撮っていった、語っていくんだなぁとピンときちゃう。そして最後にグッときました。そうした音の使い方のように、ぎりぎり制御されたものが、三宅作品のポイントではないかなぁと思います。ところで、先ほど映画の建物や空気、土地の瞬間を捉えておくという発想をお話されていましたが、ロケ地が持つ力について、どうお考えですか。ロケ地をどう選ぶかということについて。

三宅/そうですね…なんだろうなぁ。映画には色んな要素がある中で、「土地」は「俳優」と同じくらい大切。ロケ地を選ぶことは、キャスティングと同じくらい重要なことです。空間がなければ人は撮れません。まぁ、今やハリウッドなら空間ごとCGで作れますけれど(笑)、やっぱり人の手が創った空間を記録しておきたい気持ちはあります。

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あと、僕はまち歩きが好きで、見慣れた風景の中に「ここにこれがあったんだ!」と気付く瞬間が好きなんです。その延長線上で、なるべく生活観のあるまちで「絶対知っているはずなのにここだけ気付いてないよね」というところを探して撮るのは、僕のこだわりでもあります。

中島/いいですねぇ! 実は私も、まち歩き趣味なんです。

三宅/映画を作る前は、映画監督の頭の中にとんでもないイメージがあって、それを出している、というイメージでしたが、僕がやっていることって「すでにあるもの。でもみんなが気付いていないもの。気付いているけど気付いていないもの」を発見すること。自分の中に何かがあるわけではなく、発見する〝目〟があるのが仕事だと感じます。

中島/映画に限らず、芸術や文化の役割には、普段僕たちが生きている中で新しい視点を見つけることが、間違いなくあります。ちなみに、次に札幌で撮るとすれば、何に興味がありますか?

三宅/やっぱり街中の、「やくたたず」では撮れなかった中心部の雪ですね。あと、札幌の街中にヒグマが大量にきて倒す…というジャンル映画も考えたことがあるんですけれど(笑)。

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中島/半世紀以上前なら、黒澤明監督の「白痴」という札幌ロケの素晴らしい作品がありますけれど、時代は移り変わっています。〝試される大地〟の北海道が求められた時代は過ぎ、自然の捉え方も変化している。昔の日本映画に執着する必要はなく、三宅さんのような若い監督が新しい北海道をどういう視点で撮るかが、重要だと思います。

(次回は、「きみの鳥はうたえる」菅原和博プロデューサーとの記者会見を紹介します!)

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