さっぽろ市民シネマ上映会「阿莉芙」トークレポート前編

9/23(日)、札幌プラザ2・5で開催された
「さっぽろ市民シネマ上映会」。

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〝自分自身〟でありたいと願ったトランスジェンダーを主人公にした
台湾映画「阿莉芙【アリフ、ザ・プリン(セ)ス】」と、
フィリピン映画「ダイ・ビューティフル」を上映。

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また、上映の合間に、「阿莉芙」の王育麟(ワン・ユーリン)監督と、
イベントを共催するさっぽろレインボープライド実行委員会・委員長の
柳谷由美さんとアンジーさんによるトークが行われました。

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ポスターからも伝わるように、上映作品の力強さはハンパなく。
さらにトークでは、当事者による鋭い読み解きに頷くと共に、
すすきのの女装サロンBAR「7丁目のパウダールーム」の
満島てる子さんによる名司会ぶりもあり、
監督&会場が爆笑の渦に包まれた素敵な内容でした。
当日お手伝いスタッフをさせていただいた私・アラタメがレポートします。

* * *

司会(満島てる子さん、以下司会)/映画「阿莉芙」は、アリフという男性から女性になりたいトランスジェンダー「MTF」(注:Female To Male=女性から男性へ の略)の主人公を中心とした群像劇。台湾が舞台で、アリフは都会の台北でヘアメイクとして活躍つつ、アルバイトやバーでメイクアップアーティストとして働き、性別適合手術のためのお金を貯めています。出身が先住民族の出で、父親がその一族の長です。そんなある日、父親が突然、アリフに長を継がせたいと言い始めたり、バイト先のママであるシェリーさんが倒れたり、平穏な日常がどんどん崩れていく。恋があったり、別れがあったり、さまざまな人が色んな思いを抱えながら自分の問題と向き合っていく。そんな姿を描いた作品です。第20回台北電影獎発表受賞式で新人賞を獲得し、第30回東京国際映画祭にも出品されています。

アリフ、ザ・プリン(セ)ス

ゲストの王育麟(ワン・ユーリン)監督は1964年台北生まれ。ドキュメンタリーやドラマの製作をしつつ、父親の葬儀を巡るドタバタ劇を涙と笑いで描いた映画「父の初七日」が台湾でヒットし、日本でも一般公開されて話題になりました。新作「阿莉芙」も、家族をはじめとした人のつながり、男と女、故郷と都会、民族と個人といった、二つのものの狭間で揺れ動く人の生き様を細かく描いています。近年を代表するLGBT系映画の一つともいえると思います。

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実はわたくし、「7丁目のパウダールーム」というすすきのの外れにあるお店でひっそり働いている者なんでございますけれども、そういう飲み屋をやっているからか、途中に出てくるバーのママ・シェリーさんの生き様、恋の仕方に「あ~すごい分かる」と共感したり。実は出身が三重県、コンクリート会社の長男坊でございまして、アリフみたいにちょっと前まで「家を継げ」と言われていたんです。だから、この「家を継がなきゃいけないけれど、私って私だし…」という気持ち、すごい分かるなと思って観ていました。さっそくですが監督、(と、ここでおもむろに監督が上着を脱ぎ始める)…暑いのね(会場笑い)脱いでもいいのよ…OKね。話を元に戻しますと、この映画で何を一番伝えたかったか、ずばり教えていただけますか。

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王育麟監督(以下、監督)/(※注 通訳の方の言葉をそのまま記載しています)皆さんこんにちは。今てる子さんがお聞きになった質問ですが、この映画を撮る何年も前に、仏教のある経典を読む機会がありまして、その中にあったひとつの言葉にすごくショックを受けたんです。というのは、「姿形のあるものはすべて偽りである」というような意味。噛み砕いて言うと、「目に見えるものはすべて偽りである」。自分は異性愛者、いわゆるノンケですが、でありながら、共に芸術を学んだ人たちの中には同性愛者やLGBTQの人たちがいて、彼らの苦しい気持ちや辛い境遇を見て、そういうことが起きないようにしたい、という気持ちがありました。

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台湾には十数個の先住民族がいますが、そのうち3つがリーダーの地位を子どもに譲っていくという習慣があり、アリフの出身としたパイワン族という台湾原住民だけが、それが女であろうと男であろうと、一人目の子どもに譲ることができるという文化を持っていました。なので、アリフみたいに女性に性転換して、女性の姿で頭目のリーダーの地位を引き継ぐことができるストーリーは事実としてありえるのです。そこに、都会で生きる人の姿、アリフを取り巻く人の姿、辛さを同時に描きたいと思いました。きっと質問が沸いてくると思うので、まずはこれくらいにします。

司会/はい…えっと、まとめられちゃったわ、という感じなんですけれど(笑)。LGBTというのがマイノリティーだと思うんですけれども、先住民族も同じで、アリフは〝ダブルマイノリティー〟なわけですよね。出生を面白い描き方をされているな、と思いました。次は「さっぽろレインボープライド」の2人から、映画の感想や監督への質問を、自己紹介も兼ねつつ。まずは柳谷さんから。

柳谷由美さん(ですが、コメント内容より、以下「ゆみお」さんとします)/はい、皆さんこんにちは。私はさっぽろレインボープライドの実行委員長をさせていただいてます柳谷由美と申します。

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普段は「ゆみお」と呼ばれているので、今日もそれでお願いします。「さっぽろレインボープライド」については、皆さんに冊子をお渡ししており、後ほど告知をさせていただきたいと思います。

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今日の映画「阿莉芙」、都会と田舎、部族の問題だったり、レズビアンとMTF、トランスジェンダーの方が同居して最終的には恋、というストーリーが新鮮でした。私はレズビアンとして生活しているんですが、私にもすごく当てはまる、フィクションなんだけれど身近に感じられる内容でした。監督への質問は、レズビアンとトランスジェンダーが同居するといった状況は、台湾では一般的なんですか?

司会/札幌に住む我々からすると、すごい新鮮…!なんて思いますよね。

ゆみお/はい。別に仲が悪いわけではないんですけれど、住み分けられているイメージがあって。

司会/もし同居するとしても、やっぱりレズビアンはレズビアンだし、ゲイはゲイだし…という感じですよね。監督どうでしょう。

監督/映画を作るときに、大枠は私が作りましたが、シナリオを作る人が5人いて、その中にレズビアンやゲイの方がいました。ストーリーを作るうえで嘘は作らない、と考え、当事者がいたので、事実として絶対にあるかは分かりませんが、ありえるのだろうと思います。

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映画で、アリフとルームメイトのペイチェンが一緒に生活している。そうしなければいけなかったのは、親友でありながら、バイクでお父さんのいるところに行き、途中で泊まった旅館で特別な関係に発展することに重きを置いた、意図があったようです。

ゆみお/私もペイチェンと同じ立場だったら、もしかしたらアリフに恋をしていたかな、という気がしていて(司会者&アンジーさんが反応!)「好きになった人が男だろうと女だろうと関係ない」というセリフがあったんですけれど、すごくそれが響きました。

司会/そうですね。私もこんな感じで迫られたら落ちるかもしれない…と思って観ていました(笑)、格好良かったですよね。監督が意図しているか分かりませんけれど、ペイチェンがお風呂で裸を見せろ!とアリフに迫る場面で、アリフ目線のカットがあって、濡れているペイチェンの体の映し方が、何となく特別な感情を抱いているんじゃないかという感じがしました。すごく丁寧に描かれていて面白かったです。

ゆみお/そうですね。自分自身に重ね合わせて見るところが多かったです。

司会/どこに重ね合わせたかは後で聞かせていただきましょう(笑)。続きまして、アンジーさん。

アンジーさん(以下、アンジー)/はい。「さっぽろレインボープライド」という団体を、ゆみおと一緒に委員長をやらせていただいているアンジーです。よろしくお願いしまーす。

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皆さんお手元にある冊子の実行委員長挨拶で、私がすっぴん・本名で出ているので、ギャップに驚いていただければと思います(笑)。目の細さは切り傷並みです(笑)。で、私の感想ですね。えーっと、私はゲイであり、親にもカミングアウトしたんですけれども、アリフの場合はお父さんが来てしまってバレましたよね。その後、お父さんが草むらや空港などをゆったりゆったり歩くシーンが長かったと思うんです。当事者としてはカミングアウトする側にいる立場なので、カミングアウトされた側にあまり意識がいかないんですけれど。あのシーンは、カミングアウトされた側の気持ちを描くために歩き続けた、自分の子どもが当事者だったというのを飲み込むという気持ちの葛藤を、ああ演出したのかな、という…

司会/そうですね。ものすごく長い幅で、ひたすらオッサンが歩いていくという(笑)。私もカミングアウトは父親や母親に済んでいるんですが、(アンジーの発言を聞き、監督爆笑の姿を見て)…すごい笑ってるわ。けっこう親もショックだったみたいで、何となくこんな気持ちだったのかな、なんていう風に思いつつ、ね、ものすごく何かにツボッてる監督ですが…

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アンジー/ちゃんと訳してくださっているんでしょうかね、通訳の方は(笑)

司会/楽屋からずっと、アンジーちゃんを見ると爆笑するっていうか…

アンジー/そう! あの、映画に「アンジー」って女性が出てくるんですよね! 私呼ばれている、と思って。

司会/クリスの妻ね。

アンジー/それで、名前を調べたんです。そしたら意味が…「天使」でしたぁ!(会場笑い&拍手)

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司会/優しいわね、お客さん。

アンジー/良かったぁ。

司会/楽屋ではね、「天使なんだって」て言われて、「ふーん、そっかぁ」って反応だったんですけれど…監督ようやく笑いが収まったかな。長いカット、いかがでしょうか。…(通訳に耳打ちされ)あ、アンジーちゃんがどうしてこんなにかわいいのか、と聞いているそうです(笑)。

監督/(通訳の方)さっき、お父さんが帰っていくシーンが、長いなって思ったって感想を伝えたら、すっごいツボっちゃったんですけれど(笑)。たぶん、アンジーちゃんがカミングアウトした時、お父さんお母さんの帰る家は、そんなに遠くなかったんでしょう(アンジーさん爆笑)、でも、アリフのお父さんは台東というめっちゃ遠いところから台北まで来てたから…

アンジー/(笑)なるほどなるほど。じゃあ、私はシーンを深読みしたんですけれど、ただ家が遠かったというだけですか?

司会/すごいわねぇ(笑)

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アンジー/カミングアウトされて飲み込まれない親って少ないと知っていたので、私は真剣に「すごいな」と。そういう状況を調べてくださったのかと…(マイクが反響してキーンと鳴る)あら、黙れってこと?(会場笑い)。そう、私は素敵なシーンだなぁと思ってたんですけれど、まさかねぇ、家が遠いからとは…

司会/ねぇ、シンプルな理由でございました。でも、歩くシーンの後半で村の人が後ろから来て「頭目が歩く時代になったんですねぇ」なんて言うのを見ると、歩いているシーンも何か意図しているのかな…と思いますけれど、監督に言われると、ねぇ。

アンジー/本当、真実はいつもひとつですねぇ(笑)

司会/えー…監督はひたすら笑ってますけれど。アンジーちゃんありがとうございました。

* * *

(つづく)

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