さっぽろ市民シネマ上映会「阿莉芙」トークレポート後編

9/23(日)、札幌プラザ2・5で開催された
「さっぽろ市民シネマ上映会」。

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台湾映画「阿莉芙【アリフ、ザ・プリン(セ)ス】」
の王育麟(ワン・ユーリン)監督と、
「さっぽろレインボープライド実行委員会」委員長の
柳谷由美さんとアンジーさんによるトークの続きをどうぞ。

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* * *

司会(満島てる子さん、以下司会)/映画「阿莉芙」は、台湾の先住民族、LGBT、それもさまざまなセクシャリティの当事者、しかも最後までそのセクシャリティ、ゲイだったのか劇中では明かされないアンジーの旦那など多彩なキャラクターが登場します。キャスティングに苦労されたのではと思うんですけれど、その決め手、重要視された点などを教えていただければ。

王育麟監督(以下、監督)/(※通訳の方の言葉をそのまま記載しています)さっきてる子さんがご紹介くださった前作「父の初七日」、あれにも(シェリーが思いを寄せる男性役)ウーさんが出ています。彼はあの作品で演技が認められて、今回も絶対彼を出したいというのがありました。また、このウーさんは台湾語、いま私たちが話しているのは北京語という大陸でも通じる標準語なんですけれど、台湾には台湾語があって、ウーさんはそれがすごく上手な方なんです。なので、相手役のシェリーを決めるとき、まず台湾語を流暢にできる人が第一条件でした。そして、演技のできる、舞台経験がある人。また、トランスジェンダーとして男から女になる役なので、女装したときにセクシーに見える人。ということで、ネットで探しました。

司会/ネット!?(会場驚き&笑い)

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監督/「舞台」「役者」みたいな検索をして、写真をばーっと出して…

司会/すごいですねぇ。インタビューしてみるもんねぇ。(通訳さん通じて直接監督と会話しつつ)…そんなに長く探してない。直感で決めた!? …はぁーそうなんですねぇ。まさかこういう展開になると思っていなかったので言葉が見つからないのですけれど(会場笑い)。シェリー役の俳優さんは、死に際に向かっていくと、どんどんセクシーになっていくところもいいキャスティングだな、と思いました。

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ここで、実行委員長の2人に「このキャラクター好き」というのを聞きたいと思います。私はやっぱりシェリーママと、クリスくん♡ すっごいセクシーじゃないですか、途中でシャワー浴びてるシーンなんか本当興奮しちゃって…。(監督の携帯画面を見て)…あぁ!! あ、ごめんなさいね。クリスくんの写真を見せてもらって(笑)。どうぞどうぞ。

アンジーさん(以下、アンジー)/私がまず気になったのは、アリフのお父さんなんですけれど。そうですね…セクシーなクリスくんは、誤解を解かずに家を出てってしまうんだなぁと思ったり。でもそこで、妻役の「アンジーさん」が、ケンカしたときに「何とか言って!」という姿は、本当に私と一緒でした(笑)。

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司会/楽屋でも、「あのケンカのシーンマジで自分だと思った」って、真剣に言ってましたよね。

アンジー/そう。(司会の)満島さん好きなシェリーママのアヒル鍋のシーン。あそこは、たぶん一緒に行きたいんだろうけど、行ったけど色々考え込んでいるから食欲がない、という。

司会/そうそう。体調悪いから帰れって言われたのに、シェリーママが「一緒にご飯行こうよ」ってデートに誘うシーン、すごい好き。

アンジー/心の落ち込みが食欲で表現されていて、食欲ないけど一緒に居たいんだな、って感じました。そのときの「ドーナツがドラ焼きになるよ」ってセリフが!

司会/あの、「ドーナツがドラ焼きに」ってセリフは、おしゃれでしたねぇ(笑)。

アンジー/私最初何かな?って思ったんですけれど。あ、あぁ~と思って。

司会/私腹抱えて笑いたかったんだけど、みんなすごい真剣に見てた(会場笑い)。

アンジー/これって、そういうことでいいんですよね、私たちが思っている。そういうことですよねぇ(笑)

司会/そう。性別適合手術を受けた方、特にMTFの方は、自分の作った性器が塞がらないように栓をしておく必要があるのは今でも変わらないんです。ですから、「ドーナツがドラ焼きに」は身に迫るものがあったわけでございますけれども。

アンジー/なんかそういうキャラクターの一面一面が好きなので、誰かっていうよりは…

司会/全体的にストーリーを楽しまれて…監督また笑っている(笑)

通訳の女性/私が見た時も、「ドーナツがドラ焼きに」のシーン、台湾の映画館ではどっかんどっかん笑ったんですよ。その話をしたらすごい喜んで、たぶん監督一番自信のあるシーン(司会&アンジーさん爆笑)

司会/こんなに笑顔が見れるなんて…。ゆみおさんは?

柳谷由美さん(以下、ゆみお)/私はもう、アリフですね。

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司会/ゆみおさん、もしかしてアリフ好みだったり…?

ゆみお/アリフ好みですね。私は女性が好きですけれど、わりとボーイッシュな女性がタイプです。アリフは後半髪が長くなって、その変化も素敵だなと思いました。個人的にはトランスジェンダーの方から好意を持たれた経験はないので、よく分からないんですけれども。

司会/民族衣装を着る姿、すごい格好良かったですもんねぇ。ありがとうございました。この映画はさまざまな場所で物語が展開しますが、私が珍しいなと思ったのは、ドラッグクイーンが出てくるシーン。実は札幌にもドラッグクイーンの店はあって、アンジーちゃんはそこで働いているんですが…

アンジー/はい。すすきのの、外れの

司会&アンジー/西7丁目。

アンジー/「7丁目のママ」というところにいます。

司会/はい、私がその2階の「7丁目のパウダールーム」というところにいるわけなんですけれど。「7丁目のママ」の店長は、ゲイなんです。日本では、ゲイの文化としてドラッグクイーンが存在すると考える人が多いんだけれど、そういう目線から見ると、店長がトランスジェンダーで、ドラッグクイーンが働いている場面設定が斬新に映りました。あれは実際は?

監督/結論から言うと、そういうのが台北に多いかは分かりません。でも、台北に西門町という〝台湾の原宿〟と言われているエリアがあって、そのすぐそばにゲイバーが集まるエリアがあって、オーナーがトランスジェンダーという店はあります。間違ってないと思います。

司会/なるほどね。台湾でも馴染みのシーンかもしれませんね。

監督/オーナーがゲイでもレズビアンでもトランスジェンダーでも、たぶんどうでもいいんです。あなたが男でも女でもどっちにしろあなたを愛している。これが、この映画で掲げているポリシー、スローガン。シェリーのバーを通じて、取り巻く人の人生が交差するのを描きたかったんです。

司会/なるほどですね。やっぱりまだまだ、日本だとゲイはゲイ。レズビアンはレズビアン。悪いわけではないんだけれども、住み分けがなされている場面があって、マイノリティの中でも協力できるかどうか、と考えたりもしました。

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台湾は、去年同性婚が認められ、来年には法制化するという国。LGBT活動として進んでいるように思えることから、今度は話を広げていきたいです。映画「阿莉芙」を見て衝撃だったのが、LGBTに理解がある、進んでいるといわれる台湾の実情です。アリフは都会に出て当事者として生きているけれど、田舎に戻ると自分のセクシャリティを打ち明けられない。日本からみてオープンに見える台湾のLGBT事情の、そうではない側面を描き出した映画でもあったわけです。実際、監督は台湾でのLGBTの扱いをどうお感じになっていますか?

監督/台湾のLGBTQ問題は、もう20年も30年もずっと戦い続いています。去年、私の大学時代のフランス語の先生が、ゲイの人でパートナーがいたんですけれど、そのパートナーが亡くなったんですね。すると彼には何の権利もなくって、パートナーの家族が財産とか全部持っていっちゃったということがあったんです。それで、何も無くしたフランス語の先生はその後自殺してしまいました。台湾でもまだすごく不公平なことがあって、そこは戦って勝ち取っていかなければならないなと感じています。日本でもそうだと思うんですけれど、法律には傲慢さとか差別があります。

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司会/台湾でも、当事者の方たちがさまざまなパレードをしたりして、監督のおっしゃったような権利を獲得することに意識高くされていると思います。札幌も同性パートナーシップ制度を結んでいるんだけれど、結局法的な権利がないのは同じです。ここで、パレードを開催する実行委員長に話を聞ききます。まず、映画「阿莉芙」で描かれる、台北を中心に、そこから田舎に帰っていくシーンは、北海道の有様に近いかなと思います。地理的にもよく似た札幌で、権利を獲得するためにパレードをすることについて、打ち出したいことがあれば。

ゆみお/台湾って、東京でいったら新宿2丁目みたいな(司会「すっごいわかる!」)、どこでも生きていけるイメージがあったんですけれど、監督のお話と映画から、実はそういうわけではないと感じました。もちろん賛成する人もいるけれど、反対する人もいて、札幌の境遇と似ています。

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「さっぽろレインボープライド」は、1996年から2013年まで続いたパレード「レインボーマーチ札幌」の後身団体として今年やらせていただくことになりました。調べてみると、台湾は2003年が初開催なんですね。札幌より後に台湾で始まったことを考えると、なんだか台湾はすごく早いスピードで進んでいるのかなと思います。もちろん背景には色々な事情があるんでしょうけれど。北海道全体、日本全体で考えると、差別や偏見はまだまだ根強くあると思うので、その解消のきっかけのひとつにパレードがなってほしいと思います。

司会/開催は10月7日(日)ですね。アンジーさんからは。

アンジー/北海道では、札幌や旭川、函館とか有名都市では発信されていると思うんです。でも、地方だとどうかと考えると、アリフはMTFですけれど、私の友達で「FTM」(注:Female to Male=女性から男性へ の略)の子がいて、地方だと「おとこおんな」といわれて辛い、みたいな話があります。パレードの目的のひとつには、地方に暮らす孤立した当事者にも情報を発信することもあるので、しっかり発信していきたいと思います。

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司会/そうですね。権利を主張する前に、つながりを作り集まる必要があるので、パレードはそういう場所としてひとつ機能しています。ここで残り5分になりました。…すごい。さっき爆笑していたのがもう1時間も前なのね(笑)。それでは最後に伝えたいことを。

監督/映画「阿莉芙」はシリアスな側面も、悲しい側面もあるんだけれど、ミックスした形で伝えたくて、笑える要素も入ってこういう映画になりました。いま話したようなことは、もしかしたら20年後には、考え方も進んで取るに足らないことになるんじゃないかな、と。そう願っています。

司会/この映画を、きっかけに考えが変わる方もいるでしょうし、きっかけのひとつになっているのではと思います。それではゆみおさん。

ゆみお/映画「阿莉芙」には後半葬儀のシーンが出てきて、この後上映される「ダイ・ビューティフル」も葬儀のシーンがありますけれど、私も歳をとってどういう風に死んでいくか考えるんです…

アンジー/そこまで考える!?

司会/分かります。すっごい考えます。

ゆみお/はい。私、クラブイベント葬みたいな感じで、明るく見送っていただきたいなと思っていますけれど。私からは「さっぽろレインボープライド」のことをご紹介したいです。当日まで関連イベントも色々あります(詳細は公式サイトをチェック)。年齢が制限されるものもありますけれど、盛りだくさんなのでぜひいらしてください。10月7日のメインイベントのパレードは大通西6丁目が会場です。当日は11時に開場し、午後2時に風船を持って、大通公園から札幌駅までを往復します。思い思いの格好で来てください。

司会/そうですね、過激過ぎない範囲なら大丈夫です(笑)。

ゆみお/例年たくさんの方に来ていただいています。ぜひお越しいただきたいです。

司会/すごく早い1時間でした。皆さんお付き合いいただき…(アンジーさんの存在に気付く)あ、アンジー忘れてたぁ。

アンジー/一番存在感あるよぉ!(会場笑い)…笑い過ぎじゃない、みんな。「さっぽろレインボープライド」の関連グッズも用意しています。パレードの募金になりますので、どうぞよろしくお願いします!

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司会/時間があれば質疑応答を設けたかったのですけれど、思いのほかアンジーで盛り上がっちゃって(笑)。あっという間の1時間でした。ご静聴いただきありがとうございます。

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さて、お楽しみいただけましたか。最後に集合写真をパチリ!

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映画はもちろん、トークも濃く&楽しく、意義のあるひとときでした。
ちなみに、ご興味ある方は、ぜひさっぽろレインボープライドの
公式サイト(こちら)をチェックしてみて下さい!

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