ミュージアム開館一周年記念上映会
「シネマの風景フェスティバル2012」
「雪に願うこと」の根岸吉太郎監督と
プロデューサー田辺順子さんのトークレポート最終回。
司会進行の和田由美事務局長の鋭い質問と
根岸監督、田辺さんならではの魅力的なご回答を
どうぞお楽しみください。(以下、敬称略)
* * *
和田/ところで、小泉今日子さんは「風花」にも出演されています。私の感想では、あの作品では少女のような印象。一方、「雪に願うこと」は大人の女という印象で、「やっぱり根岸さんは女の人を撮ったらすごいんだな」と改めて思ったんですけれど・・・彼女は使いやすい俳優さんですか?
根岸/すごいと思いますよ。「雪に願うこと」は、ちょうど40になってちょっとの頃だったかな。「風花」はたぶん、30代の終わりだと思います。本来、女優さんは、年相応をあまり好みません。でも、彼女は怖がらないんですね。むしろ、積極的にその年をこなしていこうと、コンスタントにそういう生き方をしています。その意味で、役柄もそうでしたけれど、急に大人という感じが出たんじゃないでしょうか。
和田/さりげないけれど適役だったように思います。
根岸/独特の北海道弁でね・・・北海道弁なのかな?(笑)。でも、こういう風にしゃべる北海道の人いそうだなという、小泉節でしたね。
和田/そして、原作の「輓馬」というタイトルを「雪に願うこと」にしたのは?
田辺/監督です。
和田/これは、すごいですね。
根岸/どうですかね・・・「輓馬」も力強くていいタイトルなんですけれど。ただ、少しとっつきにくいというか。映画という、どうしても人を呼ばなきゃならない仕組みのときに、「輓馬」で来てもらえるかという自信がなかったんです。でも、そんなに悪いタイトルではないと思います。
和田/昔は、北海道にとって、雪は邪魔者だったんです。でも今は、雪が観光になる時代。そういう意味では、この作品はタイトルを含めて雪がないと成り立たない映画ですから、北海道をロケ舞台にした意義のある作品と思います。
根岸/あと、(上士幌町の)タウシュベツを撮りたいと思っていまして。
和田/素晴らしく効果的でしたね。
根岸/昔、写真でちらっと見た瞬間から「なんて素晴らしい所だろう」と思っていました。帯広に近いので、原作にないけれど、無理やりにでもシナリオに入れて撮りたかったんです。
和田/ずいぶんロケで寒冷地には慣れたようですが、また今度、何か北海道で・・・
根岸/寒冷地グッズすごいですよ!どんな寒いとこでも大丈夫、みたいな。自宅で場所をとっちゃってしょうがないんです(笑)。
和田/根岸さんはいま学長さんですから、違う意味で本を読む時間はとれるかもしれません。北海道を舞台にした原作を私たちが売り込んで、またぜひ、北海道で根岸さんに撮っていただきたいと思います・・・よね?(観客拍手)
根岸/学長を務めている東北芸術工科大学にきて4年目。そろそろ、作ったものが出来上がり始めていて、今度はその作品の上映会をシアターキノでやろうと言っています。ぜひ、皆さんに見に来ていただきたいです。
和田/最後に、田辺さんどうぞ。
田辺/そうですね・・・私、見た目優しそうなんですけれど、そんなことはないんです(笑)。けっこう強いものを持っています。根岸さんとはまた一緒に映画作りたいなと思っているので、学長さんもされていて忙しいようですけれど、いまちょこちょこと企画の話をしているんです。私が願うことは、やはり根岸さんに映画を撮ってほしい、ということなので、またぜひ一緒にやりたいと思っています。
和田/みなさん、最後に拍手でお二人をお送りください。(拍手)
* * *
さて、いかがだったでしょうか?
「雪に願うこと」ができるまでの秘話の数々。
知ると、もう一度、いえ何度でも観たくなるものです。
映画って、本当に奥が深いですね。
ミュージアムでは、こうした北海道ロケの映画秘話も
どんどん掘り起こしていきたいと思っています。