『映画のデジタル化』シンポジウムレポート(後編)

「映画のデジタル化」シンポジウムレポートのつづきです。

中島 /上映のことは後で少し触れようと思いますが、実は東京ではもうこういう事が起きているんですね。岩波ホールというお年寄りの方が中心の劇場があるのですが、未だにフィルム上映が多い所なんですよ。でも新しいデジタル上映の映像に慣れてきている方もかなりいるからフィルム上映作品を観た時、帰り際に映写の方に「ちょっとピントが甘いと思うんですけど・・」なんて事を言った話があるそうで(笑)

要するに「少しボケて見える」と。ソフトでフィルム的な感触のものに対してそのような感覚をもたれてしまったと。これはちょっと残念だなぁと思いましたね。これは一つの例ですけどね。

そういえばこないだ何かの機会でお聞きしたんですが、最近は新しいデジタルの撮影カメラとかいろんな機材をそのまま使うというより、自分で工夫して改造してやっている人もいるという話を聞いたんですけど・・

早川 /機械自体の改造というのはなかなか難しいと思うんです。ただ組み合わせだったり、ワークフローみたいなものは自分たちの工夫の中でできるとは思います。

 

中島 /なるほど。上映の場合はそれとまた違って、例えばトラブルがあった時フィルムの映写機であれば映写技師も職人ですから、自分の体験値の中で予想がつくので、ココを直せばいいっていうのが分かるんですが、デジタルの場合はほとんどお手上げ状態になるんですね。デジタルではまだ体験値を蓄積できてないのもあるんですが、もうメーカーにすぐ来ていただくしかないと。

佐々木 /その期間は上映できなくなりますもんね。

中島 /そうです、もうそれは全国で現実に起きている事なんですよね。

シアターキノは、両館ともデジタルに変えていますが、35㎜の映写機はB館の方に残しています。細かいことを話すと時間が足りないんで、一言だけ言いたいんですけど(笑)映画館がデジタル上映をする際にはリース契約のようなものをしなければならなくて、3社があるんですが、そのうちの2社はフィルム映写機を撤去することがその契約の条件になっているんですね。全てデジタルに替えなければその契約はしないとだから多くのシネコンは99%、フィルムの映写機を全て廃棄処分にしました。ミニシアターの多くはまだ35㎜の映写機にこだわっているとこもありますからそれを残せるものは1社しかないのでそちらにしました。デジタルシネマクラブというものです。

これは決してシアターキノの宣伝とかではなくて、シアターキノのスタート自体が初期のころから8㎜、16㎜、35㎜すべての映画が上映できる形態、で初期のころからむしろビデオも上映できる形態を求めていました。それはなぜかというと多様な映画を上映したいから。その最低限のハードルは何とかしておきたいというところから始まっているんですね。

佐々木さんは北の映像ミュージアムで過去の作品をずっと蓄積していくという事をやってこられて、そういう観点から多様なモノを上映・残していくことに関してはどうですかね

佐々木 /北の映像ミュージアムでも、35㎜の映写機をシンボルとして映写はできないですけど、館内に置いているんですね。元映写技師だという人がけっこう来たり、映画館のなかでも映写というのは革命が来ているんだなと実感しますよね。『ニューシネマパラダイス』も『少年H』もなくなる時代なのかなあという気がしますけどね。

中島 /早川さんいかがですか

早川 /まあ、ある種の寂しさは感じます。でも、デジタルの歴史はまだ始まったばかりで、映画の中でルーカスが言っていた立場に僕も賛同するとすれば50年100年後に、きっとデジタルの映画に生まれ育ってそれなりの文化ができていて、きっと映写技師さんがフィルムの時代を懐かしむように「デジタルのこういう時はこうだったんだよ」みたいなことをきっとまたでてくるんだと思うんですよ。

ただ僕の希望としては、劇場というスタイルだけは何としてでも死守してもらいたいと思います。こうやっていろんな人間が集まる映画館ってコンサート会場とかとちょっと違って

変な一体感がないけど、みんな同じ場所に居て同じもの観ているというなんとも不思議な特殊な空間な気がして、そういうものだけはコンピューター上の世界とかソーシャルの世界とは違うところで残って欲しいと思いますね。

「きっとデジタルもこれからいろんな歴史を作っていくんだろうな」と前向きにとらえていこうかなと思っています。でも選択肢としては残してもらいたいですね。いつか自分もフィルムで撮ってみたいなと思っているうちにデジタル化になっちゃったんで。ぼく16㎜はやったけど35㎜はやってないんで。ラボも札幌に移転させられれば、身近に撮れたりするんじゃないかなと思いますね。

中島 /もう少し時間をとっておけば良かったなと思うんですが(笑)次の入れ替えの時間が来てしまったので、最後に一言ずつ、映画の感想でもよろしいのでお願いします。

佐々木 /北の映像ミュージアムでも、『大地の侍』という日本で1本しかない映画を持っていまして、これは国立のフィルムセンターにもないんですが、当然のことながら35mmしかかけられないんですね。今日も保存の問題がちょっと出てきていて、ルーカスは「必要になればデジタルの保存もどんどん進化していくだろう」と言っていましたけど、切羽詰ったことを言うと、どうやって貴重な北海道のフィルムとしてかけられるようにしていくかと現実の問題がありますね。

早川 /映画の中であるプロデューサーがいい事を言っていましたけど、

これから先の子供とか若者に大きな問題があるそれは何かと言うと、審美眼だっていう話をしていたと思うんですよ。それは心に刻んでおきたいなと。さっきの岩波ホールのフォーカスが甘いんじゃないかっていう話にも通じると思うんですけど、やっぱり僕らはいろんなものを見てないとダメですよね。例えばこれからデジタルが増えていくとしても、選択肢の中でフィルムというものがあるなら、フィルムというものを観に行って質感だったり感触っていうものを刻み込んだ上でその今のデジタルに接したりだとか。そういうことも一つの審美眼だと思うので

作り手としても客さんとしてもいろんな多様性のある映像に対して、ちゃんとした審美眼を鍛えるという立場でこれからもやっていきたし、伝えていきたいと思いますね。

中島 /本日はどうもありがとうございました。

 

「映画のデジタル化」と一口に言っても、それが指すものはとても幅広く

撮影や上映、配給、保存など

観客が映画を目にするまでのあらゆる段階がデジタルなものへと変わってきています。

 

実際はそのどれもが観客にはあまり実感のわかないものばかりで

わたしたちが気づかないうちに、

映写室からは大きなフィルム映写機が消えていき、

映写技師もいなくなり、無人の部屋となっていたのです。

 

専門的な話になりがちな問題ですが

「じゃあ観客は何を考えるべきなのか」

そんな問いに多くのヒントを与えてくれる

とても意義のあるシンポジウムだったと思います。

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