真剣で立ち回りをした月形龍之介

1本のチャンバラ映画の最初の字幕(今はエンディングですが)の中に「殺陣(たて) だれそれ」という表示があったのを憶えていますか。今もそう呼ぶのだろうか。剣の振り方、構え方、人の斬り方、倒れ方などの段取りを構成していく仕事ですね。殺陣師になるには大変な年期と修行と経験が必要でした。その殺陣のプロたちから見たチャンバラの上手い俳優が、時代劇全盛時代に7人いたというお話。殺陣師仲間は「七剣聖」と呼んでいました。

 長谷川一夫 常に舞踊的。藤間流の奥義を華麗なフォームの中に生かし立ち回りを見せる。殺陣師のつけた型をそのまま美化して自分の型にはめ込んでいく。

 片岡知恵蔵 殺陣師の大衆性と、本格的武道の型を取り入れて独創的な迫力を表現する第一人者。高野弘正という武道師範がいつもついているので、知恵蔵の型に嘘はない。

月形龍之介 剣聖中のリアリスト。剣戟(げき)にはいつも真刀をを使って、リアルさを表現。どんな猛チャンバラでもいつも真刀を振り回し、しかも斬られ役を傷つけたことは一度もない。映画界きっての剣の達人。

大河内傳次郎 余裕しゃくしゃくぶりを見せる剣聖。殺陣師の意見通りに立ち回りながらも、役柄の性格を表現していく貫禄。

阪東妻三郎 専属の殺陣師がいた。殺陣師通りに立ち回り、殺陣師も常に阪妻のために新しい型を創案した。阪妻映画のフォームの素晴らしさの陰に殺陣師あり。

市川右太衛門 剣聖中の技巧派。常に新しい型を創案するように殺陣師に命じるから、殺陣師も右太衛門映画には苦労した。

嵐寛寿郎 斬られ役が巧いことが殺陣の生命であるというのが持論。常に斬られ役を週十人専属にさせて、松竹に出演する時でも新東宝に出る時でも必ず、専属者を同行させる。

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映画世界社発行「映画ファン」1953年9月号

以上、映画世界社発行「映画ファン」1953年9月号より要約しました。北の映像ミュージアムは映画に関する単行本、雑誌など、大図書館にもない貴重な資料を所蔵しています。ワタクシ、案内役の当番のとき、忙しくなければ、蔵書の中から、オールドファンだけでなく若い人にも興味を持っていただけそうなエピソードを探し出して紹介してみようか、と思っています。お楽しみに。                                   (喜多)

それからもう一つ。明日10月15日は火曜日ですが、本日「体育の日」の振り替え休館になります。16日は通常通りの開館です。

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