エカテリーナ2世女帝の憐憫―北のシネマ塾参加に感謝

昨日19日、北の映像ミュージアムで月例、北のシネマ塾を開催しました。不肖喜多義憲が担当、「おろしや国酔夢譚」(1992年、大映、佐藤純彌監督、緒形拳主演)を見ていただきながら、1991年の奥尻島ロケや、映画のハイライト、ロシアの帝都ペテルブルグ(現サンクトペテルブルグ)での女帝謁見エピソードなどを語らせていただきました。

映画「おろしや国酔夢譚」に見入る北の映像ミュージアム会員たち

映画では、フランスのロシア系女優マリナ・ブラディ演ずる女帝エカテリーナは大国屋光大夫の語る遭難漂流談にしばしば「可哀そうに」とつぶやくシーン。これは光大夫からの聞き取り録として残っている「北槎聞略」(ほくさぶんりゃく)に記述があります。これは18世紀の大国の絶対権力者が異国の漂流民への深い憐憫の情を示した史実です。

喜多の映画解説を熱心に聞いていただきました

また、江戸時代、列島を行き来する千石船は物流の積載性に優れている半面、舵が壊れやすく、甲板の水密性が悪いため荒天にもろい弱点があり、船の遭難、漂流が頻繁に起きていたことなどを紹介しました。当時厳しい鎖国政策が敷かれていたことも、造船技術の発展を妨げていたようです。

漂流民である光大夫一行の帰国支援ための女帝謁見実現には、知識人キリル・ラックスマンの献身的な友情がありました。国と国との交流は実は人と人との心の交流に他ならない、というのが、私のこの作品の見方であることもお話しました。

私は新聞記者上がりで、文字を書き連ねるのはそう不自由を感じませんが、おしゃべりが下手で、旨くまとまらないの歯がゆい。最後に一番大事なこと話そうと思っていて失念してしまいました。

それは、光大夫らが帰国したとき、「理由いかんにかかわらず、禁制の海外渡航から帰国した者は罪人」という扱いを受けたが、その一方で、上記北槎聞略ほか、光大夫のロシア情報を詳しく録取した成果はひそかに検討され、約半世紀後にペリーらの来航によって開国を迫られた時の対応に役立てられた、ということ。

これが思い出せなかった。ザンネン。

この日の北のシネマ塾には20人ほどの会員に来ていただきました。ありがとうございました。来月も第3土曜16日午後2時から開催されます。奮ってご参加を。

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